7. Kyosuke Okuda, Akihiro Yoshikawa, & Tadashi Ishikawa, 2024: Pygolampis amamiko (Hemiptera:
Heteroptera: Reduviidae), a new assassin bug species from the Amami Islands, Japan. Acta Entomologica
Musei Nationalis Pragae 64 (1): 213–221.
解説:2013年に奄美諸島の請島で1個体が得られていたPygolampis属の不明種について,その後第二著者である奄美大島在住の吉川明宏氏によって,奄美大島から近似種との比較に足る十分な標本が得られたため,これらの標本を中心に検討しました.
その結果,一致する種が見つからなかったため未記載種と判断し,Pygolampis amamiko sp. nov. として新たに記載しました.本種は微翅型で腹部第三節以降の背面が露出すること,前胸腹面の棘が長く湾曲し,複眼の直径と同程度の長さになること,触角腹面に長毛列を持つことなどから近似種と区別されます.本種は夜行性であり,比較的湿潤な森林の林床付近で採集されています.
本論文では識別の難しいPygolampis属の日本産の検索表を合わせて提供しています.
この研究によって,日本産トビイロサシガメ亜科は9属20種となりました.
6. Kyosuke Okuda & Zhuo Chen, 2023: A new synonym of a species of Stachyotropha Stål, 1871, a genus of
Asian Stenopodainae (Hemiptera; Heteroptera; Reduviidae) Biodiversity Data Journal (11): e102977
解説:Stachyotropha Stål, 1871はアジアから2種が知られる小規模な属で,これまでS. punctifera Stål, 1871が中国,フィリピンから,S. miyamotoi Hidaka et Miller, 1959 が日本からそれぞれ知られていました.しかし,これら2種はいずれも少数のオスの標本のみから記載されており,両者の詳細な比較は行われてきませんでした.そこで,両種のタイプ標本の写真と,追加で得られた標本をもとに形態の比較を行いました.また,記載論文を精査し,何を根拠にS. miyamotoiが新種として記載されたのかについても検証しました.
その結果,Hidaka et Miller (1959)がS. miyamotoiを記載するにあたって挙げたS. punctiferaとの識別点のうち,「翅室の形状の違い」については同種間で大きな個体差があることがわかりました.また,それ以外の識別点は,両者が互いに持っている特徴であることから両者を識別する特徴とは言えませんでした.そのほか形態観察においても明瞭な差異が見つからないことから,S. miyamotoiはS. punctiferaと現状同種と考えられ,S. punctiferaのシノニムとすることを提案しました.
5. Kyosuke Okuda, 2022: A new micropterous species of the Assassin Bug Genus Sastrapada Amyot &
Serville, 1843 (Hemiptera, Heteroptera, Reduviidae) from Japan. Journal of Insect Biodiversity 35(2), 51–59.
解説:日本から未同定種として知られていたハラビロホソサシガメSastrapada sp. Ishikawa and Miyamoto, 2012 as undetermined speciesについて精査を行い,未記載種として新たにSastrapada lativentralis sp. nov. として記載しました.本種は類似する既知種と比較してやや小型であるほか,腹部の形状,前脚ふ節の節数などから識別が可能です.これまで本種は乾燥したチガヤ草地から得られることが知られてきましたが,今回林床のシフティングによって多数個体が得られました.これまで微翅型のトビイロサシガメ亜科はピットフォールトラップ,衝突板トラップで偶発的に得られた記録がありますが,シフティングはこれらの方法に加えて微翅型の種を採集するうえで非常に有効ではないかと考えられました.なお,この研究によって,日本産トビイロサシガメ亜科は9属19種となりました.
4. Ryo Nakamura and Kyosuke Okuda, 2021: First record of the assassin bug genus Neothodelmus Distant (Hemiptera: Heteroptera: Reduviidae) from Japan.Japanese Journal of Systematic Entomology 27(2): 321-323
解説:日本からこれまで知られていなかったサシガメを与那国島で採集しました.これをインドからのみ知られていたNeothodelmus typicus Distant, 1919と同定し,ムネナガホソサシガメとして日本から初めて記録しました.Neothodelmus属は本種を含めてアジアから3種が知られていますが,別属に本属に含めるべきと思われる種が複数存在することなど,分類学的な検討が必要であることについても提言しました.この研究によって,日本産トビイロサシガメ亜科は9属18種となりました.
3. Kyosuke Okuda, 2021: Re-description of the assassin bug species Pygolampis striata Miller, 1940 with new distributional records from Japan and Indonesia (Heteroptera, Reduviidae, Stenopodainae). Biodiversity Data Journal (9): e63695
解説:日本より長らく未同定のまま知られていたスケバホソサシガメ Pygolampis sp. Ishikawa and Miyamoto, 2012 as undetermined speciesについて,マレーシアから知られるPygolampis striata Miller, 1940と同定し,日本から初めて正式に記録しました.さらに本種はオス1個体で記載され,記述も外部形態のみの簡単なものだったため,新たに雌雄の交尾器,メスの外部形態も合わせて再記載しました.加えて現地調査で得られた生息環境の情報,効率の良い採集法についても言及しました.この研究によって,日本産トビイロサシガメ亜科は8属17種となりました.
2. Kyosuke Okuda & Zhuo Chen, 2021: Notes on the little-known assassin bug, Pygolampis breviptera Ren (Heteroptera, Reduviidae, Stenopodainae). Japanese Journal of Systematic Entomology 27 (1): 141-144.
解説:チベットから1オスの標本をもとに記載されていたPygolampis breviptera Ren, 1981について,国立科学博物館のコレクションを用いて新たにベトナムから記録するとともに,この標本をもとに雄交尾器の形態を記述しました.同時に中国農業大学のコレクションから見出されたメス2個体についても記載を行いました.本種をはじめとしたPygolampis属について,DNAバーコーディングを用いた包括的な研究の必要性についても提言しました.
1.奥田恭介, 2020: さいたま市緑区のカメムシ類(昆虫綱:カメムシ目). 埼玉県立自然の博物館研究報告 (14): 43-52.
解説:埼玉県さいたま市緑区のカメムシ亜目相を調査しました.調査地内には一級河川である芝川が流れ,流域にはヨシ原が広がっているほか,各地にイネ科,アブラナ科草地,耕作地,苗木畑などがみられるなど多様な環境がみられました.ここで任意採集,街灯を見回るなどの調査を行った結果,23科80属105種のカメムシ類が確認されました.確認種のうち,環境省レッドリストに記載されている種が1種,埼玉県レッドデータブックに記載されている種が6種の計7種が確認されました.そのうち6種は草地の地表で生活する種であったことから,調査地には地表性のカメムシ類にとって適した草地環境が多く残されていることが示唆されました.