わしら神々には、忘れてはいけない出来事が幾らかある。今日はその内のひとつふたつを話すとしよう。
__200年前、まだわしが生まれたばかりの事じゃった。
その頃の星々は一つの宇宙に集っており、夜空には無数の美しい宝石が散りばめられておった。じゃが、互いを観測しあう者は知らぬ間にひかれあってしまう。何、恋と同じじゃ。
星同士の引力は急激に増して行き、遂には衝突寸前の所まで来ておったのを、科学者達がバックサイドワールド/BSワールドという複製宇宙空間を幾つも作り、そこに星を隔てる事で何とか衝突を免れたのじゃ。
地球や魔界もそのBSワールドに移され、現在はフラクルェアと謂う星が人々の生活中心になっておる。この星が存在する宇宙はサーフェスワールド、じゃな。
ワールド同士の行き来はゲートを必要とし、そこを通って初めて、人々は他のワールドへ足を踏み入れる事ができるのじゃよ。
ゲートが完成して間もなく、何処かのBSワールドから異形の怪物、魔物が全世界中に溢れ出してしまった。大戦の始まりじゃ。
神々と結託した人間達はそれを全力で止めて、屠って、遂には命と引き換えにサーフェスワールドを守った者まで居った。その後の事は重々しくて簡単には語れぬ。じゃから、また日が空いたら改めて話そう。
…ほれ、しんみりしそうな話はここまでにして、そろそろバスが来そうな気配じゃ。
魔界やらフラクルェアやら神界やら色々あるが、お主の旅路を止める者はおらぬ。存分に楽しんで来い。
あなた方が守った世界は、今こんなにも美しい景色に満たされておるよ。
今際の約束を、ここに居ない貴方は覚えているだろうか。
____のう?颯。
teller:緋暢
二見 あめ - アクティブとインドアを兼ね備えた二面性を持つ、魔法使い見習いの高校生。自身が漫画家だということは周囲の親しい人間にしか明かしていない。
三村 結灯 - 駆除機構所属の少女。性格はサバサバしており若干姉御肌な一面がある。とある事故の一連の流れのせいで、大切なものを失っている。
緋暢 - 廻馬町近くの山にある神社で、偶に姿を現す子供。見かけに似合わぬ古い口調で喋るが、彼のお茶目な振る舞いはやはり少年の姿をしている。
櫻木 廻 - とある人形師の作品の一つであり、願いを託した先。『じいちゃん』と敬愛する、育ての親の診療所を恩返し代わりに継いでいる。
輝菜 焼 - 結灯と同じ機構所属の高校生。若干戦闘狂だが根は優しく、仲間を庇って怪我する事もしばしば。兄の死の謎を追う最中、廻と出会った。
輝菜 輪 - のんびりした性格の青年。頭が良く、19歳頃からシステムエンジニアとして駆除機構に勤務していたが、突如消息を絶つ。数年後焼の元に訃報が届いた。
両面世界
魔法・魔術
魔物
魔物駆除機構
スフィアレコード・心盤族
その他のBSワールドの星
・フラクルェアという星を中心にして、無数の複製宇宙空間が広がっている世界。人々は「門」を通って互いの世界を行き来する。
サーフェスワールド:フラクルェア星のある宇宙。この星が門のメインターミナルの役割を担っている。
バックサイドワールド:略してBSワールド。元は全ての星がサーフェスワールドに属していたが、徐々に引力が増し、星同士が衝突する危険性が高まったため、科学者達が頭を捻って「複製宇宙空間」——後にBSワールドと呼ばれるものを作り出し、そこに星を隔離した。魔界はBSワールドの一つ。
・文字通り、それぞれの世界を繋ぐ門。フラクルェアに全ての星の門が揃っており、そこを中継地点にする者が殆どだが、BSワールドからBSワールドへ行き来することも可能。
・門の中には核という物が存在し、それを通してワールドを転移している。核が壊れたor門の枠組みが壊れた場合、前者は永遠に、後者は核の自己修復期間、ワールドを行き来出来なくなる。
・核の補助として、イレイスシステムというものが存在する。これは輝菜輪が同僚達と開発した物の一つ。
(正式名称はCoreAuxiliarySystem イレイス)
・魔界生まれの者は先天的に持っている。生まれつき魂に刻まれている魔法(生得魔法)と、後天的に身につけた魔法(後天魔法)がある。
稀に突然変異で親のものと全く違う生得魔法が生まれてしまう。
効果の強い順に
魔力<魔法<魔術<呪い(まじないと読む)
呪いは一度かけたら場合によっては死ぬまで解けないので注意。
後天魔法の種類:火、水、氷、草、召雷、催眠術、透明化、音
これら8つから選んで身につけることができるが、後天魔法の複数持ちは大抵無理。(習得した後天魔法の維持のため、そこそこの量の魔力を常時消費するからです)
・魔法単体ならそのまま「魔法」、複数の魔法を混ぜたなら「魔術」と呼ぶ。
生得魔法と後天魔法を合わせてできた魔術を合成魔術という。
魔法単体で使うより複数を掛け合わせた方が強いかつ便利なので、戦闘の時はこの合成魔術で戦うのがほとんど。
・見た目は様々だが、共通して言えるのは生き物が腐ったような外見をしているということ。全ワールドの各地に存在する。
・どこかのBSワールドから来ている。魔物が居るワールドと他のワールドを繋ぐ門の場所は不明である。
・発生源のワールドで発生した時はまだ弱いが、転移した先の生物の負の念を吸収し徐々にパワーアップしている、という事が最近の研究で明らかになっている。
・魔物の駆逐、その発生源を突き止めることなどを仕事にしている民間の組織。全体の人員数は1000人ぐらい。
・各ワールドに支部が1つずつ設置されており、本部は魔物の出没件数に比例してデータが集まりやすい魔界にある。食堂のご飯が美味しいと評判。
【部署一覧】
駆逐部:魔物の駆逐が仕事。大変な任務の時は2~5人単位でグループを組んで行動し、ベテランや戦闘慣れしている人がリーダーに置かれる。輝菜焼、三村結灯が所属。
総合管理部:事後処理及び、任務のデータ書類作成など。人事や広報もここで行なっている。
開発部:魔物のデータ集め、任務の補助具開発。門や魔界の基盤となるシステムの管理もしている。
機械に詳しい者が集まっている。輝菜輪が過去に所属していた。
魔物駆除機構提携の中学、高校、大学が各地にあり、仕事に軸を置きたい者はそこへ入学するケースが多い。
・BS・サーフェス全体の歴史の魔術的保存・記録を担っている組織。千年前、魔界の政府が有志を集めて発足、世界の分離があってからはフラクルェアに本部を置いて活動している。
・スフィアレコードに所属する人はレコーダー(記録員)と呼ばれる。二見あめの師匠、標浦コハクもここに居る。
腕のある魔法使いや技術者だけがこの組織に入る事を許されるため、ここに所属しているということが一種の肩書きになっているそうな。
・魔物も保存の対象なので、駆除機構で解剖済みの魔物はこちらに送られて保管される。しかし完全に処分しないといけない超危険な魔物も、一部の人間が「保存対象だ」と言い張るので何回か駆除機構と揉めた過去がある。中立的な人達の苦労の甲斐あって現在は穏便な関係を築いている。
・とあるBSワールドの星に住んでいた長命の種族。星の消滅と時代の変化により、人口が減っている。
・人の構成要素は肉体と魂の2つであるとされているが、この種族は魂ではなく「心盤」と呼ばれる特別なレコードを体内に宿している。
・「心盤」は、その者の人生全てを記録するものであり、死後には物質として永遠に残り続ける(元々は魔法と同じように、触れることができない)
専用のレコーダーを通さないと読み取りが不可能。
・全ての心盤族の記憶(レコード)を集めれば、星一つ分の歴史になると言われている。そういった性質上、心盤は重要な歴史の照らし合わせに使われることが多い。
・多くの人生を記録した円盤を、大切に保存し、活用するための施設。それが「スフィアレコード」の原形。
・太陽と月の複製品が、決められた軌道に沿って人工地球の周りを回っている星。限られた人しか入れないBSワールドに存在する。両面世界ではこういった人工の星が幾つかあるが、ここは世界会議に使われることが多い。
・地球の周囲に浮かぶ軌道保持装置は、内部が宇宙ステーションのようになっており、行き交う船の管制塔の役割を果たしている。
地球・太陽・月を模したAEシリーズは現在001~15番まで存在。しかし、AE001以外の殆どは、実際に人が暮らす惑星ではリスクが高い、加えて規模の大きい科学実験のために使われている実験場となっている。(類似品でアーティフィシャル・ムーン、マーズ、ネプチューンなども造られている)
・何らかの理由によって創造が失敗したAEには404ナンバーとアルファベット順の文字をつけられ、管理される。404-Aは太陽を規定値以上に膨張させ過ぎたせいで赤色巨星になってしまい、人工地球や月ごと灼きつくしてしまう事故が起こった。本来はAE004として完成する予定だったが、この事故の後004はロストナンバーとされている。
現在は消滅傾向にあるが、超新星爆発を起こす可能性も否めないことから一部の関係者しかこの星の存在するBSワールドに入ることを許されていない。(必ず宇宙船の中から星を観測しなければならない)