Rin Teruna - profile
性別:男
年齢(享年):21歳
身長:166cm
体重:52kg
誕生日:4/18
生得魔法:人形行使(マリオネット)
後天魔法;催眠術
・のんびりした性格の、システムエンジニアの青年。輝菜焼とは8歳年上の兄。その腕を買われ、19歳頃から駆除機構に勤務していたが、突如消息を断つ。数年後、弟の元に訃報が届いた。
・趣味はDIY。細かい作業や頭を使うことが好き。
・頭脳明晰で、小学校から中学校の成績はどれもトップだった。唯一評価が低かったのは高二の時の化学だが、この数字は、輪が遊び半分でやった自由研究で理科室を爆発させてしまった為である。
・毒を飲んでも大丈夫な特異体質。そのためか好奇心の湧いた毒物は秒で口に入れようとするので、周りからは危なっかしい奴と思われていたそうな。(事情を話したら誤解は解けた)
・好きなものはネギマシマシそうめん(麺類大好き)、嫌いなものはトマト。
【人形行使】
・自分で錬成(又は作製)した人形を操る。ただし、操れるのは半径80m範囲の人形だけ。
破壊された人形は、魔法や魔術でもかけていない限り塵となって消滅する。
・駆除機構にシステムエンジニアとして勤務した後、とある理由からサーフェスワールドの廻馬町に身を隠し、表向きにはなんでも屋の人形師として生活をしていた。元々機械やからくりに詳しかったおかげか、その腕は見事なものだった。
・22歳になる直前の4月、焼が13歳の時に、強盗に襲われて死んだ。輪のアトリエ内は戦闘した形跡(刀傷、ひっくり返った机)と、大量の本や資料が散乱していた。
そして不自然に、壁際の飾り棚の一部分が空いていた。それは人ひとり分が座れそうな幅の広さだったという。
【輪廻】
「はあぁ!? どういう状況ですかそれは!!」
「何かあった?」
ここ最近のお気に入りである果物ジュースをストローで吸っていた輪は、電話の向こうに大声を上げる同僚を見る。開発部の部屋の時計は昼過ぎを指していた。
「なるほど……すぐ向かいます。それでは。——門の核がキャパオーバーしたから来いって。これは何時間かかるか……」
「前代未聞だな。頑張れよー」
「他人事みたいに言いやがって。勿論お前もだからな、輝菜」
「うわ〜引っ張られていく〜」
「……ということで、魔力無効化装置に先ほどのプログラムを追加、ダストボックス兼警備用アーカイバーにして第四フローは終了。そうして完成したこの補助システムを核に組み込むのが最適解かと僕は思っています」
他に質問は、と壇上で広い会議室を見渡す輪を見て、数時間前にここへずるずると引き摺られて来たあの姿は何だったのだろうか、と同僚の青年は頬杖をつきながら思った。
「呑気に見えて意外と有能だよな、アイツ……」
そんな風にぼーっとしてると会議も終わり、急ぎ足で散り散りになる人間達の中から疲弊した輪が戻って来た。
「終わったー……」
「お疲れさまー。それにしても、魔力無効化装置だなんてどっから引っ張ってきたんだ?」
「あぁ、今回の案を室長に話したらさ、上が急いで開発室に譲ってくれたと聞いてる。数十年も倉庫で眠っていた代物だってさ」
「俺達はこれを使って、『イレイスシステム』を組み立てる」
イレイスシステム。——正式名称、「CoreAuxiliarySystem erase」。
人間の情報を無意識に溜め込む核を補助するためのデータ消去装置。しかしそのプログラムは、開発に関わった数人のエンジニアしか知らない。
こけこっこー、と鶏が鳴いたのは二時間くらい前だったか。
「突貫工事とか一夜城とか、よく言った例えだよな……」
朝の金色の光が、機械だらけの部屋を照らす。弟よごらん、これが謎のスイッチが入って徹夜でシステム一本作り上げた後の兄の姿だ。かっこいいんだか情けないんだか。恐らくは両方である。言い出しっぺだから、って一番動いていたせいもある。
とりあえず作動テストだけ終わらせたら寝よう。眠気の強さ的に、家に辿り着けるか怪しいが。
魔力無効化装置の電源をパソコンのモニターに接続する。澄み切ったブルーの画面に、白文字が現れる。それはまるで神降ろしの呪文のように、次々浮かんでは消えていく。
システム初期化中。魔力無効化装置、異常なし。
核運用システムに接続完了。全ワールドの最新地理データを読み込み中。
データロード完了。
——CAS erase起動。
次に俺が見たのは、一面澄み切った夏空のような何もないメイン画面だった。
「ありゃ、どっか書き間違えたか……?」
一度二度の失敗で折れたりするような心ではないので、頭をぽりぽり引っかきながらログを確認しようと手を伸ばした時だった。
青い画面の左上で、誰かが文字を綴り始めた。
「あなたは だれ」
「——!?」
「わたしは」
「私は、◼︎。そこの機械に移された分身」
得体の知れないものに対する拒絶。本能的な恐怖で、装置の電源を切ってしまった。
暗くなったパソコンのモニターに、彼女の綴った機械的な文字はもう現れない。
「……なんだ、今の」
数秒放心した後、俺はもう一度勇気を出して電源を入れた。
イレイス起動。特に異常なく現れた設計通りのシンプルな画面に、さっきの謎の存在はどこにもいなかったのだった。
きっと徹夜のせいの幻覚だ。現実逃避をした俺は、チームの奴に引き継ぎを済ませたあと体を引きずって入った仮眠室のベッドに突っ伏して、半ば気絶するように眠りに落ちた。
けれど、もしこれが現実なら。
彼女はどうして機械の中に居たんだ。彼女は一体、なんなんだ。
……なにか、伝えたそうな様子だったけど。
「という訳でチーム全員たっぷり寝た後も核との連携で色々やってたけど。……やっぱ幻覚だったかな」
実装は無事成功。門が使えなくなったことによる混乱も徐々に解消しつつある。
これで平和は続くはずだった。なのに。
いつものように、門を通ったある日の朝。向こうに潜り抜ける、一瞬にも満たないその刻の中で。
「逃げて」
と空耳のような声を一つだけこぼしたのは、彼女以外の誰でもなかった。
人知れず、陶器の瞳に赤い色彩が宿る。生前の彼の色と、似て似つかない真紅。
物が散乱したアトリエの床。自分の死体が作った血溜まり。
それが、輝菜輪の魂を宿した人形が最初に見た光景だった。
月日が過ぎ、真っ赤な紅葉の散る神社の一角。主に夕方の時間帯で、人形と火の神が茶を飲んで寛ぐ光景は日常になりつつあった。
「ふぅ。こうやって茶飲んでると、大人になったって感じする」
「ふぅ。そうじゃな、廻。わしも子供の頃に比べれば、随分と心が落ち着いてきた」
「ふーん。万年子供の緋暢にも幼少期とか存在するんだな」
「わしが本当に生まれたばかりの頃。右も左も分からない小さな炎を育ててくれたひとが、おった」
「じゃが、もうここには居ない。師匠の色は、わしの目の中にしかもういないのじゃ」
「名は、颯(はやて)」
——『私は、颯。そこの機械に移された分身』
「青い目の、風の神じゃ」
何の、巡り合わせだろうか。
俺はその一文字を、記憶の隅で埃を被っていた名を、輪廻の果てに思い出した。