Yuihi Mimura - profile
性別:女
身長:159cm
体重:53kg
年齢:16歳
誕生日:6/3
生得魔法:結光(けっこう)
後天魔法:透明化
・魔物駆除機構 サーフェス支部所属の少女。性格はサバサバしており、若干姉御肌な一面がある。
・元は魔界生まれで、幼い頃にサーフェスワールドに越してきた。
・特技は料理とスケボー。後者に至っては日々の電車通学でも、時短面で大活躍している。
・好物はチーズケーキ、嫌いな物は餅。小さい時喉に詰まりかけた。
・休日はオカルト本を読んでいる。ここで得た知識が友人の創作に活きるとは、本人も予想外の事だったそう。
【結光】
例えば松明と松明、ランプと街灯等、光源同士を繋ぎ合わせて綱のような道を作る。視野内であれば綱の本数は無制限。光源が動く場合は綱も動く。(太陽など範囲が広すぎるものはほぼ使用不可)
【back story】
8歳頃、両親との家族旅行の最中列車の横転事故に巻き込まれ、かなりの重傷を負った結灯は最寄りの病院へ搬送された。
生死の境を彷徨うこと数時間、病院地下の薄暗い個室で目覚めた彼女の傍に座っていたのは、16歳頃と見える少年だった。誰かと結灯が問うと、少年はこう答えた。
「初めまして、僕は音藺。君に伝えたい事があってね」
「そうだ。自分の名前は分かる?」
「三村…結灯」
「体の調子は……その様子を見ると大丈夫そうかな」
医者とも思えない格好の少年がここに居る事、そして大怪我を負ったはずなのに傷が一つも無い事に困惑している結灯を余所に、少年 ——音藺は結灯を部屋の外へと連れ出した。
3階に上昇するエレベーターの中は2人以外誰も居らず、彼の陽気な鼻歌がずっと流れていた。未だ状況が理解できていない結灯にとってこの鼻歌の真意は不明だった。
「あの、医者じゃないですよね…?」
「白衣着てないと分からないかぁ……一応国家資格も取っている至って普通の医者なんだけどね!」
怪しい。怪しすぎる。何故『普通』を強調したと、結灯は心の中でツッコまずには居られなかった。
「あなたへの疑いが更に増えました」
「あーーちょっとそっぽ向かないで…?」
「……」
そのまま結灯は黙り込んでしまったが、数秒間の沈黙を断つようにチン、とエレベーターの扉が開き、よくある入院病棟の廊下が視界に映る。
廊下の壁にある院内の地図を確認してから、2人は沢山ある病室の外を通り過ぎていった。
「30…さんまるはち……………ここだ」
308号室。3階エリアの病室は比較的重症の患者が集められている。
病室を前にしてもしや、と結灯はずっと気がかりだった事を彼に訊いた。
「…私のお父さんとお母さんは、どこですか。どこに居ますか」
「死んでるよ」
「…!」
「で、あの事故の中で唯一助かった君は——」
音藺は病室の扉を引き、少女にその光景をゆっくりと見せるように中へ誘導した。
伽藍堂の室内に唯一生命維持機械の音が響いているベッドに向かう。カーテンの向こう側では、痛々しい姿の白髪の少女が横たわっていた。
「——君の本体はここで眠っている。僕らの組織の臨床実験の成功例として」
「これ、私……?」
頭部の包帯の隙間から覗くまつ毛、生まれつきある掌のほくろ。何から何まで自分と同じ人間が、今、目の前のベッドに居る。
全身に包帯と治療の痕があり、とても直ぐ回復するとは思えない様子だ。
「魂のデータから複製品を作る、だったかな」「今、魂の代替機械で動き、見、聴き、喋っている複製品……つまり寿命の縛りがない君の体は死ななくなっている」
どうして急に成功したのかなぁ……と独り言を呑気に呟くその姿が、結灯には急に憎く思えてきた。
何故それを教えたのか。知ったところでどうなる?彼の内に数ミリだけ残った優しさが働いたのだろうが、果て、それは優しさと言うには余りにも酷い。
「君らみたいな平凡な人間は知らないだろうけど、病院って結構実験体の宝庫なんだよね」
ガタリと彼が丸椅子に座る音が病室に響く。
「重傷でもう助からなさそうだったり、血統者諸共全滅していたり」
「そういう人達を偶ーーに使う事があるんだ。君はどっちかというと後者」
「あのさ、複製品の体の感覚ってどんな感じ?教えて欲しいなぁ」
ニヤニヤと笑みを浮かべ、あからさまに挑発してくる音藺。
地獄の釜が煮えたぎる程の怒りと永遠に暗闇に閉じ込められたような悲しみを、結灯は生まれてこの方初めて覚えた。
「そのベラベラとうるさい口を閉じろ!!」
「うわ…ぐっ」
「返して!!あの人達を返してよ!!」
相手の腹の上で馬乗りになりながら少女は叫んでいる。ぽたぽたと雫が音藺の頬に垂れている。
「そっちは…僕じゃ、ないって」
まだ弱い子供の精一杯の力で、自分より大きい少年の首を絞めようとする。別に効く筈も無いが、今の彼女は憎しみで一杯一杯だった。
今動いているこの体は、死ねなくなっている。どこへも行けなくなっている。あのまま、いっそぐちゃぐちゃの肉塊になって向こうへ行った方がマシだったかもしれない。今頃両親はどうしているだろうか。どこに居る?私の事は見てる?
寂しい。寂しい。寂しい。
寂しいよ。
「——私を、お父さんとお母さんのところに行かせてよ!!!!」
鈍い音が静寂な病室の隅まで響き渡る。
子供の拳の感覚がはっきりと音藺の頬に伝わり、ジンジンと鬱陶しい痛みが残った。
血で血を洗うような争いに慣れている彼とて、やはりこの感触は不快だろう。
「…………痛いなぁ、」
彼がそう言ったのとほぼ同時、コンマ数秒の事だった。
音藺が下になっている形勢から逆転し、今度は結灯が、いつの間にか地面に倒される形になっていた。しっかり首と右腕を固定されて身動きが取りにくくなっている。
何が起こったのか分からないという顔で、目の前の者を見上げる結灯を、音藺もまた冷たい目で見下ろしていた。
「暴れても無駄だよ」
「〜〜!〜〜〜!!」
「どうしても死にたいって言うなら、僕らの長期計画に協力してくれれば君の本体と魂を返す」
この上なく美味しい話を持ちかけてもなお拒絶の意を消さない少女に、追い討ちをかけるように音藺は伝えた。
「一生上層部の実験マウスになるか、僕らと動いて君の望みを叶えるか……」
「…………本当に、私を返してくれるんだよね?」
「ああ」
「…このまま行くと、君は永遠に人間以下の扱いをされる。僕もそれは避けたいし、何より君の持つ魔法が勿体ない」
音藺なりの理由を聞いて少し納得した後。数秒躊躇って結灯は結論を出した。
「……物凄く嫌だし、反吐が出そうだけど…協力、する。」
その言葉で、音藺の表情が柔らかになった気がした。
ふっ、と張り詰めていた空気が消え、結灯の体を抑える力が緩んだ。
「約束破ったら殺すから」
そう吐き捨てて彼女は起きあがろうとしたのだが、視線の上の彼は再び彼女を押さえ付けた。特に手足を固定されている訳でもなく、額に少し手が触れているだけなのに、その猟奇的な笑みを浮かべる目が、結灯の動きを縛り付けていた。
額に口付けをした後、悪魔はゆっくりと囁いた。
「——君は、これからどんな表情を見せてくれるかな」
音藺が立ち上がった後、全身の力が抜けたように結灯は意識を失った。
*
〜8年後〜
ガヤガヤとした教室から離れた屋上で、白髪の少女は一人景色を眺めていた。少女と言い表すには少し大人びている姿の彼女は、つい先日16歳の誕生日を迎えたばかりだった。この高校の隠れ絶景スポットとも言えるこの場所を、毎日独り占めにできるなどなんと贅沢なことか。そう思いつつも少女は梅雨の合間の青天を堪能していた。
そんな所で、ポケットの携帯端末の通知音が鳴った。少々丸っこい音を立てたそれを取り出し、グループチャットの画面を開くと、丁度友人からのメッセージが送られてきていた。
『おはよう〜』
『急だけど、もし時間があるなら今度の日曜にカラオケかファミレスで作業会しない?』
連絡は漫画家の友人からだった。まだ休憩時間は残っている事を、画面上部の時刻を見て確認した後すかさずメッセージを返した。
「また げんこう つま った?……と」
『うん』
『またか、俺は参加確定かな』
『焼は強制参加でしょ』
最早レギュラーとなっている彼、その彼を巻き込もうとする張本人とのやり取りに、クスリと結灯は笑った。
「てつだう よ。わたし も がっこうの かだいとか もっていく けど」
『ありがとう!!具体的な時間は後で決めるね』
「…ふぅ……」
連絡を一通り終えた後、彼女は小さくため息をついた。
輝菜家というごく普通の家に生まれた兄弟。それが今回の監視対象だ。
何、少し裏側を知り過ぎただけの事だ。兄の輪は数年前音藺が排除し、表向きには不慮の事故として真実を揉み消している。
その数年後駆除機構に入った弟の焼に、何らかの情報を残している可能性が高い。よって、持っている情報を全て聞き出した後、場合によっては弟とその家族も始末する事になるだろう。
この手の仕事は今までも手慣らし程度に何度かやってきたが、気を抜くことは許されない。じっくりと時間を掛けて動向を探っていくつもりだ。
そこまで考えたところで、再び彼女は空を見上げた。
数十秒経った頃だろうか。屋上のドアの開閉音がして、そこから彼女がよく知っている人物が現れた。
「みーつけた」
「…音藺。その服どうしたの」
「変装だよ、変装。やっぱ学校といえばこれだよね」
「私より似合ってるのがなんか悔しい」
「あははは」
「……それで、約束は覚えてる?」
「勿論。ずっと待ってたもんね」
「うん。今も昔も、目的は変わっていない」
「——私は、死ぬために生きている」