ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって発見された天体の中でも、近年特に注目を集めているのが「little red dots(LRDs)」と呼ばれる天体です。LRDs は、可視光の波長域で赤い色を示し、非常にコンパクトに見える天体です。分光観測では幅の広い輝線が検出されており、これらの特徴から、LRDs は中心に巨大ブラックホールを持つ活動銀河核(AGN)の一種である可能性が高いと考えられています。
LRDs は初期宇宙において非常に多く存在している一方、現在の宇宙に近づくにつれてその数が急激に減少することが知られています。この性質からも、LRDs は形成直後のブラックホールが急速に成長している段階を捉えている可能性が指摘されています。
我々は既存の LRD 選択手法を改良することで、近傍に他の銀河などが存在する場合でも LRD を効率的に選び出す新しい手法を開発しました。この手法を JWST の広域撮像データに適用した結果、複数の LRD が互いに近接して存在する系(dual LRD)の候補天体を世界で初めて発見しました。この発見は、LRDs が AGN である可能性をさらに支持するとともに、銀河合体や銀河間相互作用が LRD における AGN 活動の発現を促している可能性を示唆しています。
さらに我々は、高赤方偏移 (z=4.91) において、多数の銀河が密集する環境の中に、LRD と類似した色を示す天体を発見しました。この天体は X 線観測でも検出されており、AGN 活動を示す確実な証拠が得られています。複数の銀河が合体していく過程において、AGN 活動が誘発されている可能性があります。また、複雑な銀河合体を通じて銀河自体も成長していくことから、LRDs のようにブラックホール質量と恒星質量の比が大きい天体が、合体を経て現在の宇宙で見られる銀河へと進化していく可能性も考えられます。
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さらに、JWST に搭載された複数の観測装置のデータを組み合わせることで、これまでで最遠方の LRD の探索を行いました。その結果、約133億年前の宇宙に存在する LRD を発見しました。これは現時点で、最も遠方、すなわち最も初期の宇宙で発見されたブラックホールの例となります。この結果は、宇宙誕生からわずか約4億年という短い時間の間に、太陽の約100万倍程度の質量を持つブラックホールが形成されていたことを示しています。今後は、この天体の詳細な観測を進めるとともに、さらに多くの同様の天体を発見することで、初期宇宙におけるブラックホール形成と成長のメカニズムの解明につながることが期待されます。