第1回 西早稲田 幾何・表現論セミナー
日時:2023年4月6日(木)16:30-18:00
場所:早稲田大学西早稲田キャンパス内 51号館 17階 08 セミナー室
題目:Rogers-Ramanujan 型恒等式と A^{(2)}_{odd} 型レベル 2 の標準加群の関係性について
講演者:伊藤歌那(東京工業大学 情報理工学院)
概要: Rogers-Ramanujan 型恒等式とは Pochhammer 記号を用いて Rogers-Ramanujan 恒等式のような形の (無限和)=(無限積) で表される恒等式の総称である。Lepowsky-Wilson による研究以来、アフィン・リー 代数の標準加群から RR 型恒等式や整数の分割定理が得られるという期待がある。標準加群の主指標が RR 型恒等式の無限積に相当するのに対し、無限和に関しては一定の求め方は明らかになっていないが、頂点作用素を用いて導出されると考えられている。それに関連して本セミナーでは A^{(2)}_{odd} 型レベル 2 の標準加群に焦点を当て、主ハイゼンベルグ部分代数の真空空間について、その生成系の Z-作用素と呼ばれる頂点作用素を用いた表示について述べる。また A^{(2)}_9 型レベル 2 の場合について、Kanade-Russell による整数分割の条件の予想に沿った真空空間の基底の表示についても述べる。
第2回 西早稲田 幾何・表現論セミナー
日時:2023年5月19日(金) 17:00-18:30
場所:早稲田大学西早稲田キャンパス内 51号館 17階 06 セミナー室
題目:多重特異点と数え上げ幾何(Multi-singularities and enumerative geometry)
講演者:大本亨(早稲田大学理工学術院)
概要: 古典から現代に至る《数え上げ幾何学》の中心課題の一つとして《写像の多重特異点の数え上げ問題》があるが,これは未開拓のまま今に至るまで残されていた.その問題の本質は,点配置空間のコンパクト化上の交叉理論にある.この課題解決に向けた私のアプローチについてお話したい.これは,形式的トム・マザー理論(写像の特異点論の代数幾何版),ヒルベルト・スキーム,代数的コボルディズム,代数的コホモロジー作用素を駆使する野心的なものであって,この観点による《21 世紀のヒルベルト第 15 問題》の核心は,モティヴィックコホモロジーにおける幾何学的表現論へと向かうだろう.
2023年度 第3回 西早稲田 幾何・表現論セミナー
日時:2023年7月14日(金) 17:00-18:30
場所:早稲田大学西早稲田キャンパス内 51号館 17階 08 セミナー室
題目:Soergel両側加群について
講演者:阿部紀行(東京大学大学院数理科学研究科)
概要:Lusztigは標数 p > 0 の体上における簡約代数群の代数的な表現の指標はアフィンKazhdan-Lusztig多項式により記述できるということを予想しましたが,これはWilliamsonにより反例が与えられました.その後WilliamsonはRicheらとの共同研究を通じて,指標は適当な条件下でアフィンp-Kazhdan-Lusztig多項式で記述されるということを明らかにしました.アフィンKazhdan-Lusztig多項式はHecke環を通じて定義されますが,アフィンp-Kazhdan-Lusztig多項式はHecke環の圏化であるHecke圏を使い定義されるものです.Hecke圏はいくつかの実現がありますが,今回はSoergel両側加群による実現について紹介します.これは主に標数が0の体上でSoergelにより考えられていたものですが,今回はそれを正標数の体上でも機能するように修正したものを紹介します.
2023年度 第4回 西早稲田 幾何・表現論セミナー
日時:2023年10月6日(金) 17:00-18:30
場所:早稲田大学西早稲田キャンパス内 51号館 17階 08 セミナー室
講演者:根上春(千葉大学)
題目:組紐群の表現の構成法とその一般化
概要:Long-Moody構成は組紐群の表現を構成する手法の一つであり,Burau表現やGassner表現などもこの方法で構成される.廣惠一希氏との共同研究によりKZ型方程式のmultiplicative middle convolutionなどを背景としてこのLong-Moody構成の一般化を行った.また、KZ型方程式との関連付けによって、この表現の構成法がユニタリ性を保つことを明らかにした.本講演では、更に最近の結果についても触れる予定である.
2023年度 第5回 西早稲田 幾何・表現論セミナー
日時:2023年11月10日(金)17:00-18:30
場所:早稲田大学西早稲田キャンパス内 51号館17階06セミナー室
題目:正規部分群と台$\tau$傾加群
講演者:小境雄太(東京理科大学)
概要:$\tau$傾理論とは,Adachi-Iyama-Reitenにより導入された理論で,傾理論の一般化である。傾理論は,群多元環を含む多元環のクラスである対称多元環についてはほとんど意味をなさないものであった。しかし,$\tau$傾理論が導入されてからは,多くの対称多元環に対する$\tau$傾理論の研究が行われてきた。特に,この理論の主役である台$\tau$傾加群は研究がされ続けている。その理由の1つに,この加群はさまざまな表現論的に重要な対象と良い一対一対応があるからである。本講演では,$G$を有限群,$N$を$G$の正規部分群,$k$を正標数$p$の代数的閉体としたとき,群多元環$kG$および$kN$上の台$\tau$-傾加群全体を比較し,それぞれのある部分集合が半順序集合として同型となることを説明する。本講演は主に小塩遼太郎氏(東京理科大学)との共同研究に基づく。