ヤリーヴ・イェー「光エレクトロニクス」

初めて自分が主催した輪読会で読んだ専門書。かなり広範な内容を取り扱っており、そのどれもがそれなりに詳しく記述されているので、一回読んだことで、光エレクトロニクス分野の論文で知らない単語が出てくることがぐっと減った。物理的にわかりやすく言われているかというと疑問が残る点はあるが、その網羅している分野は広範である。後述のChuangの教科書に比べると、ファイバ光増幅器やモード同期レーザ、ファイバ中の非線形工学などファイバ光学やシステムなどに近い視点からの記述が多い。多くの現象をモード結合理論的に統一的に扱っており、その点では物理的な洞察が養われる。

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b293733.html

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b293847.html

J. D. Joannopoulos, R. D. Meade, and J. N. Winn 「Photonic Crystals ~ Moldering the Flow of Light」

二回目の輪読会で読んだ専門書。フォトニック結晶の本だが、集積光デバイスをやる人間なら、フォトニック結晶分野に限らず読んでおくべき本だと感じた。光のモードに関する理解がかなり深まった。上下のYarivやChuangの教科書に比べて網羅性は大きく劣るものの物理的な洞察が極めてわかりやすく書かれている。光界のお気持ち物理学シャンとしては必携の本といえる。

https://press.princeton.edu/books/hardcover/9780691124568/photonic-crystals

S. L. Chuang, 「Physics of Photonic Devices

3回目の輪読で読んだ専門書。網羅的な教科書という意味ではYarivに位置づけが近いが、よりデバイス寄りという感じだろうか。特に発光デバイスなどに関連した量子井戸の物理が極めて詳細に記述されている。その網羅性ゆえに、一通り読んでおくと、やはり光電子デバイスの論文でわからないことは大体なくなるという点で、ぜひおすすめしたい一冊。他方、記述がわかりやすいかという点では疑問が残るとともに、初学者におすすめできる本ではない。光エレクトロニクスの研究をしていてデバイスに近い研究をしている場合は手元においておきたい。

https://www.wiley.com/en-us/Physics+of+Photonic+Devices%2C+2nd+Edition-p-9780470293195

藪哲郎光導波路解析入門

ビーム伝搬法などを用いて基本的な導波路素子(方向性結合器など)を数値的に解析する方法について記述している本で、修士二年の終わりごろに一通りざっくりと読んだ。一昔前と異なり、現在ではほとんどの導波路素子は市販のソルバーを用いFDTD法や固有モード展開法によって解析するのが一般的かと思う。これは最も正確な手法であり、実際の研究・設計ではこの手法を採用すべきだが、一方で第一原理的すぎるために、FDTD法自体の勉強をしてもなかなか電磁波のお気持ちにはなりづらい。光導波路解析入門において記述されている計算手法は、計算資源が乏しい時代の手法であるために、いろいろな物理的洞察のもとに近似が組み込まれており、計算手法を理解する過程で電磁波のお気持ちを理解することができる。他方、屈折率コントラストの大きな現代的なナノフォトニクス素子やシリコン細線導波路においては適用できない近似も多分に含まれているので注意が必要でもある。

https://www.morikita.co.jp/books/mid/078441

上坂 吉則「MATLABプログラミング入門」

研究でMATLABを扱うにあたり、最初に一通り読んだ。基本的なプログラミング経験(授業レベル)があれば、これで大体わかる(あとは個別の関数は公式レファレンスを参照する、という感じで)。初めてMATLABを触ったときは、Cに比べてあまりに便利なので感動したという思いでがある。今でもほとんどの計算はMATLABで行っている。 

https://jp.mathworks.com/academia/books/book102335.html

小原照記・藤村祐爾「Fusion 360 マスターズガイド ベーシック編 改訂第2版」

3D CADを触ったことはほとんどなかったが、2日で大体マスターできた。解説が非常に丁寧なのでよかった。もちろん、メカエンジニアなどはもっと読む必要があるのかと思うが、図を作ったり簡単な治具の設計にはこれで十分だと感じた。これを読んでから、プロトラブズFusion360の組み合わせにより治具に悩まされることが激減したので、非常によかった。

http://www.sotechsha.jp/pc/html/1254.htm

J. H. デイヴィス(訳: 樺沢宇紀)低次元半導体の物理

大学院に入ってから半導体の勉強をしてなさすぎてやばいと思い、D2の夏にインターンに行った際に電車の時間(往復4時間を2週間・・・)を活用して読んだ。全面的に可能な限り平易に記述されておりかつ物理のお気持ちがよく書いてあって、とてもいい本だと感じた。特に有効質量近似などがわかりやすい。量子ホール効果とかランダウ準位は僕には難しくて正直よくわからなかったが。。半導体系の研究室なら修士で読む感じだろうか。安定の樺沢先生の訳によりかなり日本語も自然であるように思う(具体的に覚えてはいないが、半導体屋的に若干気になる表現もあった気もするが・・・)。

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=294576

真船文隆「量子化学 - 基礎からのアプローチ

私にとっての量子力学とのファーストコンタクト。大変すばらしい本。大学一年生の時の構造化学の講義の指定参考書で、講義には起きれず出ていなかったが、せっせとこの本を写経していた記憶がある。熱力学などもだが、化学に適用した時の物理は、非常に活き活きとしている気がしていて、この本を読んだ当時も非常にモチベーションが高まっていた。もっとも、私は化学実験がとにかく苦手だったので、化学系には進まなかったのだが。。(なぜデバイス系に?)

https://www.kagakudojin.co.jp/book/b50311.html

小出昭一郎量子力学(I)(II)

東大の電気系における量子力学の指定教科書。学部2年~3年にかけてひいひい言いながら読んでいた記憶がある(といっても、(II)はほとんど読んでないが。。)。不勉強なため、今でも理解してない内容が結構ある。。波動関数の計算が多く、結構伝統的な量子力学の教科書といえるのではないだろうか(私は詳しくないが)。波動関数の煩雑な計算は本質ではないという意見もあるかと思うが、電子デバイスを考える上では結構重要なので、意外と電子デバイスの人間にとってはその点でもおすすめできるかもしれない。

https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2132-1.htm