五度目のイギリス:Winchester, London
細切れの短期の滞在は何度かあったものの,記録に値する5回目の英国訪問は2013年の国際会議の時で,この時は家内と9歳になった娘が同行した.その2年後(2015年)に私が仙台でホストした隔年開催の国際会議 ICVS(International Colour Vision Society)の1つ前の回ということで,仙台の準備のための視察も兼ねた参加だった.会議が開かれた Winchester に主に滞在し,その後 London に立ち寄って見学や訪問をした後に帰国した.この学会は同伴者のための観光パッケージも用意する習慣があり,それに乗っかるつもりだったのだが,家内は自分が行きたいところに行くと言って同伴者プログラムには参加せず,娘と2人で観光していた.結局,学会会期中は日中に私と家族が別行動しただけだった.
Winchesterはイングランドの古都とも言うべき土地で,London から電車で1時間の南西部にある,小ぢんまりしたいい街だった.学会オススメのB&Bのうち1件にメールで予約を申し込んだところ,日本時間の午後6時頃,帰宅して車を停めたタイミングでその B&B から確認の電話が国際電話で掛かってきた.3人は泊まれるけど,2人の部屋と1人の部屋しかない,と言う.学会で別行動になることが多い私が1人部屋に泊まればいいか,という話になり,予約を確定した.Giffard house というところだった.
私にとってはいつも通りの海外出張だが,家内にとっては10年ぶりの外国旅行,娘には初めての海外旅行だった.まずパスポートを作りスーツケースを借りるところから始まって,家内は携帯電話を海外のローミング対応の端末に買い替え,私はiPhone用の海外SIMを用意し,何かと物入りな準備だった.
機内では3つ並びの席の通路側に座り,私はいつも通り,飲み物・機内食ときたら飲んで,BOSEのノイズキャンセリングヘッドホンをして寝る,というパターンだったが,家族はしばらく起きていたらしい.それもそのはず,2人とも席に個別スクリーンがついた飛行機に乗ったのは初めてで,ゲームや映画を楽しんでいたらしい.思えば家内が最後に国際線に乗った時は,ビジネスクラスでようやく肘掛けにモニターが付いていた時代だった.長い飛行が終わってHeathrowに無事到着し,入国審査を通過したところで,娘が耳が痛いと言う.どうやら降下中の機内での気圧変化に対処するのに失敗したようだ.飴を舐めたり水を飲ませたりして何とか落ち着いた.
Heathrowから学会会場のあるWinchesterへの学会お勧めの移動手段が coach だった.その出発を待つロビーで続々と日本人出席者がやってきて出会うのもいつもの学会の通りだが,家族は初めての経験で面食らっていた.師匠のU先生もご家族が一緒にいらしていた.Coach が到着したのはWinchesterの市街地の端の方だったが,我々の泊まった B&B があったのは町の反対側だったうえ,大きいスーツケースもあったためタクシーで移動.無事に明るいうちにチェックインできた.
Giffard House の前で.
ある日の朝食.Baked beans!
このB&Bは学会会場から徒歩で15-20分ほどの場所で,学会関係者も一杯滞在していたが,日本人は我々家族ともう1人(結局最後まで面識を得られず)だけだった.B&Bだったが食堂ホール(写真の1階の出窓の部屋)があり,食堂には大テーブルと4人がけのテーブルが2つか3つあり,朝食はほぼ毎回4人がけのテーブルで家族と頂いた.いわゆるトーストと,卵とソーセージ/ベーコンとビーンズという英国式朝食で,大変美味だった.机には,Marmiteのポーション(ここでしか見たことがない)も置いてあった.
たまたま同じ時間に朝食をとっていた,各地を飛び回っているというセールスマンは,Winchesterでは必ずここに宿を取る,朝食が最高だから!と言っていた.我々も,もし再訪が叶うなら,ぜひここに泊まりたい.
学会の期間中,家内と娘は独自に方々へ出かけて日中に観光をしていた.例えば,世界的に有名な環状列石のストーンヘンジがあるSailsburyは,Winchesterからバスで1時間ほど西へ行ったところにある.家内はインターネットで観光情報を調べ,娘と日帰りでこうした場所へせっせと観光に出かけ,可能な日は夕方に合流してWinchester市内で夕飯を一緒に取って宿に帰る,というパターンの活動をしていた.ストーンヘンジは私も最初の英国滞在の時に家族で訪れた懐かしい場所である.巨石のすぐそばまで行き,縄跳びをしていた写真が実家に残っている.いまは保存のために接近が制限され,そんなに近くで子供が遊んだりできないようだ.
この学会(ICVS)は毎回,家族のための観光や手工芸への案内をしてくれる同伴者プログラムが充実している.このプログラムに参加する家族を連れてくる研究者も少なくない.私自身は次の回(2015年)に仙台でこの学会を開く際の現地責任者であり,こうした同伴者プログラムの段取りや,お薦め宿の手配などもしなければならず,色々な意味で情報収集に緊張しながら,しかし楽しく参加できた学会だった.
この学会は150名程度の規模で参加者全員の顔がほぼ見渡せる上,学会のセッションは1つしかない.私自身は2011年のノルウェーの回から参加し始めたが,遠足やバンケットなどのソーシャルなプログラムも充実し,この学会のアットホームな雰囲気には非常に強く魅了された.学会の名称の一部にある Colour のスペルからも分かる通り,学会の本拠地は英国である.なんとなく,この学会を私が仙台でホストするのは運命づけられていたような気がしていた.2015年に仙台でこの学会をホストした甲斐あって,同業の高名な研究者と多数知己を得ることができた.
Royal Hollowayの校舎(中庭).日本の大学とは大いに違う佇まいである.
学会の後 Londonに移動し,もう2−3日,知人たちを訪問しながら滞在した.そのうちの1つは Royal Holloway での Andy T. Smith 教授の訪問だった.Andy は2011年3月に京都大学の蘆田先生の招きで日本に滞在し,仙台の東北大にも来訪の予定だった.たまたまその直前に理研の脳科学総合研究センター(RIKEN BSI)を訪れていた際に,東日本大震災に遭遇.仙台はもちろん大ダメージを受けたが,首都圏でも停電などの影響が出た.予定していた Andy の仙台訪問は当然キャンセルになり,帰国便を早めて帰国した経緯があった.今回,たまたま私が英国に訪問する機会を得たので連絡を取り,ご多忙のなか訪問させていただいた.彼の専門である運動視の fMRI 研究について助言を頂いた.2017年にAndyも仙台を改めて訪問してくれた.
この次にイギリスを訪問したのは,2015年の仙台での ICVS 開催の答礼に訪れた,Liverpool での学会 ECVP (European Conference on Visual Perception) だった.それについてはまた稿を改め,時間がある時にでも筆を執りたい.
以下,ICVS2013での写真を掲載しておく.
Winchester city hall の壁に飾られた「円卓」.街のシンボルでもある.5日に及ぶ学会は,ここでのレセプションから始まった.
学会の会場だった Winchester 大学.
ここと宿の間の最短ルートは墓地だった.
シェークスピアの野外劇の鑑賞.これも学会イベントの一部.私には全てが仙台(2015)の準備のための学びだった.
遠足はひたすら歩くタイプで,文字通りの遠足.ゴールの地点でバンケット.
遠足のゴールは自動車博物館(National Motor Museum, Beaulieu)だった.
テーブルについて頂くタイプのバンケット.
宿泊したB&B "Giffad House" の看板犬 Jelly.
滞在中のある日の晩,家族はこの子の目の前でフライドチキンを食べる羽目になり,涎が出るほど羨ましがらせてしまった.
いつの世も子供たちを魅了するアイスクリームボックス.Winchester 駅にて.