面白い研究を紹介します

紹介しない研究が面白くないわけではありません。番号も面白さとは一切関係ありません。徐々に増やそうと思っています。

  1. Watching novice action degrades expert motor performance: Causation between action production and outcome prediction of observed actions by humans. Tsuyoshi Ikegami, Gowrishankar Ganesh, Sci Rep. 2014, 4:6989. doi: 10.1038/srep06989.
    https://www.nature.com/articles/srep06989
    とにかく切り口や結果が面白いです。ダーツのエキスパートが、素人の(下手な)ダーツ動作を見ていると、エキスパート自身のダーツ成績が悪くなるようです。したがって、エキスパートは下手な人の動作をあまり見ない方がいいかもしれないとのことでした。また、他者の動作を予測する時と自分の動作を行う時には共通の神経基盤が存在することを示唆しています。 この研究は、実験条件も非常に緻密に練られており、考察も示唆に富んでいます。専門分野ではない方でも勉強になる論文だと思います。フリーで読めますので、是非読んでみてください。


  1. Nonlinear neuroplasticity corresponding to sports experience: A voxel-based morphometry and resting-state functional connectivity study.
    Chih-Yen Chang, Yin-Hua Chen, Nai-Shing Yen, Hum Brain Mapp. 2018, 39(11):4393-4403. doi: 10.1002/hbm.24280.
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/hbm.24280
    運動学習によって運動課題と関連する脳領域の容量が増大することが報告されていますが(Draganski et al., 2004, Nature: 3か月ジャグリングを練習)、この研究では、野球未経験(経験年数0年)、中級者(経験年数平均4.4年)、上級者(経験年数平均9.3年)の3グループで各脳領域の容量を比較したところ、上級者になるにつれて徐々に大きくなっていたというわけではなく、中級者では未経験者よりも大きかったが、上級者では中級者よりも小さくて未経験者と同程度となる非線形の変化を示す領域(逆U字の変化)が見つかったことを報告しています。また、中級者では未経験者や上級者よりも小さい、というようなU字の変化も観察されました。これはMRIによって非侵襲的に計測可能になった脳構造変化が運動パフォーマンス向上のどのような側面を反映しているか、さらには、長期間(数年)のトレーニングによってどのような脳機能再編が生じているのかを改めて考えさせられる論文です。近年は、このようなRenormalizationが注目されていると思います(Wenger et al., 2017, Trends Cogn Sci.) 。