青山 毅(あおやま たけし)

1940-1994。千葉県市川市。書誌学専攻。日本近代文学研究。日本近代文学館、日外アソシエーツ。
島尾敏雄、高見順、平野謙、小熊秀雄、吉行淳之介などが専門。編著に『島尾敏雄研究『島尾敏雄の本』『古書彷徨』『総てが蒐書に始まる』『青山毅現代文学コレクション目録』など。

「私はかつて青山氏に私に関する書誌を作ってもらったことがあるが、当時住んでいた薩南の指宿にわざわざ足を運んでもらっての仕事振りを、二日に亘って直接に拝見する機会があった。その際に私は日頃温厚な彼の中に鬼気迫る業相の潜在する有様を垣間見る思いをした。それは甚だしく緊張の持続が要求される事態なのだが、たとえ充分に緊張を守り得たにしても、対象の資料自体は、頗る現実的な気儘さを内包していて、潔癖な確かさですっきりと統一することは望めないのである。いつも逸脱した細部の突きつけで襲撃してくる。しかしどのような形であれ、資料として記録する以上は、その根の所に確かな基準が置かれていなければなるまいし、又対象事態の頼りなさもあるために、記録者は底知れぬいらだちに陥ることになる。いらだちが重なると、たぶん彼は甚だしく孤独となり、一層より機械的なそして禁欲的な作業へと自分を追い込んで行くのではなかろうか。更に彼は、むしろ副次的な分野、たとえば大方は顧みられること少なく破棄されてしまう資料の、しかも細目の、より正確な復元へと気持ちが傾いて行くように思えてならないのである」
島尾敏雄「本の果て」(青山毅総てが蒐書に始まる』カバー裏)

【国立国会図書館デジタルコレクション】
総てが蒐書に始まる』青英舎、1985年11月
https://dl.ndl.go.jp/pid/12236672

『昭和期文学・思想文献資料集成』五月書房
https://dl.ndl.go.jp/pid/12749324