3年目のご挨拶
近年、国内外では戦争や紛争に加え、地震や豪雨災害などのニュースに接する機会が増え、社会全体が大きな変化の時代を迎えていることを実感しています。そのような状況の中、私たち島根大学医学部附属病院心臓血管外科は、地域の皆さまに安心して医療を受けていただける体制を築くため、日々診療に取り組んでいます。
本年度は、残念ながら新たな医局員の加入はありませんでしたが、代わりに限られた人的資源を最大限に活用しながら、地域心臓血管外科医療のさらなる発展に向けて新たな挑戦を続けています。
その一つが、同じ出雲市内にある島根県立中央病院との連携強化です。これまで両施設は島根大学同門の関係にありながらも、十分な交流や協力体制が構築されていたとは言えませんでした。しかし、双方が抱える課題を共有する中で、診療のみならず、人材育成や教育を含めた協力体制の構築に向けた取り組みが始まっています。地域の限られた医療資源を有効に活用し、島根県の心臓血管外科医療を持続的に支えていくことが私たちの目標です。
また、当院では昨年より「血管総合診療センター」が本格的に稼働しています。放射線科、循環器内科、形成外科、皮膚科など多職種と連携し、大動脈疾患から末梢動脈疾患まで包括的な診療を行っています。その結果、大動脈疾患に対する血管内治療は質・量ともに向上し、末梢動脈疾患に対する診療の幅も大きく広がりました。診療を進める中で、重症下肢虚血の患者さんが想像以上に多く存在することを改めて認識しています。適切な治療機会に恵まれず症状が進行してしまう患者さんも少なくありません。こうした現状を改善するためには、地域医療機関とのさらなる連携や疾患啓発活動が重要であると考えています。
さらに循環器内科との協力のもと、新たな診療拠点の整備も進めています。
一つは構造的心疾患を対象とした「心疾患イノベーションセンター」です。TAVIなどカテーテル治療と外科治療を適切に比較検討し患者さん一人ひとりに最適な治療を提供できる体制づくりを進めています。
もう一つは「不整脈治療センター」です。循環器内科のみならず脳神経内科、脳神経外科とも連携し、診療・教育・研究の拠点形成を目指しています。心臓血管外科としても、メイズ手術や左心耳閉鎖術に積極的に取り組むとともに、胸腔鏡下不整脈手術の導入に向けた準備を進めています。
島根県は人口や地理的条件の面で決して恵まれた環境とは言えません。しかし、そのような地域だからこそ、大学病院のみならず地域の医療機関、多職種の医療従事者が力を合わせることが重要であると考えています。「島根県だからできない」のではなく、「島根県だからこそできる医療」があると私たちは考えています。
私たちは、患者さんに安心して医療を受けていただける環境を整えるとともに、学生や研修医、若手医師にとっても魅力ある学びと成長の場を提供できるよう努力を続けてまいります。
今後とも島根大学医学部附属病院心臓血管外科へのご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2026年9月
着任2年のご挨拶
島根大学医学部 循環器外科学講座の教授に就任して、早くも2年が経過いたしました。着任当時の思いからは、まだまだ足りないところばかりで忸怩たる思いですが、まずは基本に立ち返り大学における使命は「臨床」「教育」「研究」の三本柱にありと考え、現在は特に「臨床」と「教育」に力を注いでおります。
臨床面では、年間約150例の心臓血管外科手術を行っております。残念ながら最新の低侵襲手術やロボット支援手術にはまだ対応できておりません。しかしながら、私たちは一例一例の手術に対して、患者さんの安全・安心と術後の生活の質を最優先に考え、丁寧な治療を心がけています。このような姿勢は、患者さんの安全のみならず若手医師や医学生にとっても重要な教育の機会となっており、実践を通じて確かな技術と判断力を養う場となっているものと自負しております。
教育面では、若手医師に対しては手術手技ならびに周術期管理を中心とした実践的な指導を行い、医学生に対しては心臓血管外科という専門領域に少しでも興味を持ってもらえるよう、日々工夫を重ねています。幸いなことに、医局員の数は年々増加しており、「人は力なり」という信念のもと、今後もより一層、臨床と教育の充実を図り、島根県における心臓血管外科育成を進めてまいります。
また、研究活動についても、若手医師のキャリア形成において欠かせない要素であると考えており、研究体制の整備と支援にも力を入れていきたいと考えております。
今後とも地域医療への貢献と次世代の育成に努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年8月