荒木派とは、三世荒木古童の芸風を継承した流派を指します。三世荒木古童は、先の琴古流尺八人間国宝であった二世青木鈴慕や、ノヴェンバー・ステップスの演奏で世界的に有名な横山勝也から、不世出の名人、三曲合奏の理想形、と云われています。
荒木派の特徴は、外連味を排した構成感のある格調高い演奏、厳密な音程(ハはリと同律、ウのメリはレと同律、三のウはメリヒと同律、ロの大メリはリと同律、等々当然のことなのですが、それが曖昧になっていることもままあります)、そして繊細な擦り手が作り出すアーティキュレーションによって生み出されるメロディラインの陰翳や躍動感にあると云われています。その特徴は、竹仙会において、三世古童から木村士童、北山士童、そしてその門下へと受け継がれています。
指法は口伝でなければ正確に伝えることは困難です。例えば、甲のロからメリツに移行する際に一、二、四孔をスルという技法がありますが、どのような音程でどのような音の大きさで入れるべきかは実際の演奏を聴かないと理解できないと思います。しかし、一方で、口伝だけでは継承される過程で様々な変容が生じる危険性もあります。竹仙会には木村友斎が三世古童の指法摺手法を記した「尺八指法擦手法」が遺されており、口伝に合わせて適宜参照することで、現在まで正確な形を継承しています。もちろん過去の名手の手法を再考しより良い形に改編することは演奏の質をさらに高めるために必要なことですが、基本を押さえ型を習得してから行ことが好ましいと考えています。二代青木鈴慕によれば、三世古童の手さばきの素晴らしさは演奏の理想形とされます。そのような意味でも、基本の型の継承は竹仙会の重要な役割の一つだと考えています。
竹仙会は、木村士童(後に友斎)が設立した琴古流尺八の会派です。
木村士童は三世荒木古童の直門として芸を研鑽し竹仙会を設立、荒木古童門下筆頭として活躍しましたが、肺病により片肺を切除、以後は友斎と名乗りました。演奏活動の他「竹心調」「月想譜」「海辺の月」などの尺八曲の作曲、「秋田菅垣」「虚空鈴慕」等の本曲二部合調の作譜なども行っています。また、日本三曲協会相談役、琴古流協会相談役としても、邦楽の発展に尽力しました。
三世古童亡き後四世古童を支え、四世夭逝後は、五世古童には師として荒木派の芸を伝える役目を果たしています。
なお、友斎に改名後、北山士童に雅号を譲り、以後、北山士童が会をまとめ、荒木派の芸の継承、後進の指導に当たっています。
荒木派の手法を駆使した演奏です。
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三世荒木古童「残月」、三世、四世古童「乱」本手・替手合奏
木村友斎「四季の遊」「茶の湯音頭」
(参考)五世荒木古童-古童会会主-演奏「残月」「秋田菅垣」
北山友斎「一二三鉢返之調」「秋田菅垣」
牧原士童「宇治巡」「吼噦 こんかい」 (ライブ録音のため雑音等入ります)