教科書:『租税政策論』
所得課税制度(第4章)
4.1 個人所得課税制度の変遷
● シャウプ勧告
シャウプ勧告の基本的理念は、「包括的所得税論」に基づく直接税中心主義である。(1949年9月公表)
包括的所得税論:給与所得、事業所得、株式・土地等の譲渡所得、利子・配当の資本所得など全ての所得が合算され、総合課税することが望ましいとされる。
総合課税を徹底し、資産所得を原則課税とするなど課税ベースを拡大 → 最高税率85%から55%への大幅な引き下げ、税率区分の14段階から8段階への削減
1953年の税制改正:利子所得の分離課税(税率10%)、最高税率65%まで引き上げ、税率区分11段階に増やされた
● 高度成長期
1950年代中頃から1970年代中頃にかけて、日本は高度成長期に入る。
高度成長期に伴う、名目所得、実質所得の急激な上昇により、所得税負担が急増するをこと防ぐために税率表の改正や人的控除の引き上げが実施されてきた。
ブラケット・クリープ:名目所得の上昇に伴い、より高い税率区分が適用される現象
● 抜本的税制改革
レーガン大統領によるアメリカの税制改革など世界の税制改革に触発された形で、1986年10月に政府税制調査会による「税制の抜本的見直しについて答申」が提出された。
→ 税率表を簡素化、最高税率の引き下げ(答申前後の所得税の変遷p86)、新型間接税の導入
中曽根税制改革案
→ 所得税・住民税の減税と法人税率の引き下げ、少額非課税制度の廃止とそれに伴う利子課税の一律分離課税、そして新型間接税としての「売上税」の導入が提案(廃案)
● 平成不況と所得税減税
1990年代中頃には、平成不況の対策として、所得税特別減税を行われた。
→ 1994年、本来納税すべき金額から一律20%を差し引く
→ 1995・96年、税率表の改正を伴う制度減税と一律15%の特別減税の組合
→ 1999年から所得税・住民税の恒久減税が実施された。(平年度ベースで4.1兆円の規模、最高税率50%から37%、住民税最高税率15%から13%)
→ 2002年以降経済回復、2009年に定率減税を完全廃止
● 個人住民税の変遷
個人住民税は、1963年までは市町村民税に5つの課税方式が存在した。
→ この5つの課税方式は、市町村間に税負担の不均衡を生じた(1974年まで改正されていなかった)
抜本的税制改革にあわせて1989年度より税率表が3段階にまで簡素化されることになった。
都道府県民税は、1962年より所得金額を課税標準とする2段階の累進税率表に置き換えられている。
→ 1994年には一律20%の特別減税、1995・96年には一律15%の特別減税(上限2万円)
→ 人的控除が31万円から33万円へ引き上げ、老人控除対象配偶者控除が36万円から38万円に etc.
● 三位一体改革と税源移譲
三位一体の改革とは、地方分権を目指した改革として、国庫補助負担金の削減、地方交付税の削減、国から地方への税源移譲をセットでおこなうものである。
→ これまで3段階であった個人所得税の税率表は、10%の一律税率となった
→ 税率表の改正
4.2 所得課税の仕組み
● 所得税(国税)の仕組み
所得は、その性質によって次の10種類に分かれ、それぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められている。
→ 利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得
山林所得と退職所得は、他の所得と分離して課税される
利子所得は1987年度の税制改正以降、一律分離課税が適用される
譲渡所得のうち土地・建物といった不動産に関するものは、分離課税
配当所得については、源泉分離課税制度を選択することができる
所得税の計算方法は以下のような手順にまとめられる
Step1 給与所得=給与収入-給与所得控除
Step2 課税所得=給与所得―所得控除
Step3 課税所得に累進税率表を適用
Step4 税額控除の適用
扶養控除の見直しについて(22年度改正)
「所得控除から手当へ」等の観点から、子ども手当の創設とあいまって、年少扶養親族(~15歳)に対する扶養控除(38万円)を廃止する。
高校の実質無償化に伴い、16~18歳までの特定扶養親族に対する扶養控除の上乗せ部分(25万円)を廃止する。
例えば、世代主のみが800万円を稼いでいる夫婦子供1人(高校生)の場合
給与所得控除金額
800*10%+110=190万円
最低控除額の55万円以上ので、給与所得は800-190=610万円となる
社会保険料控除=800*15%=120万円
基礎控除48万円+配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料控除120万円=244万円
課税所得=610-244=366万円
所得税額:195*5%+(330-195)*10%+(366-330)*20%=9.75+13.5+7.2=30.45万円
所得税の負担率 30.45/800=3.806025%
例えば、年収800万円の独身のサラーリマン場合
800*10%+110=190万円
最低控除額の55万円以上ので、給与所得は800-190=610万円となる
社会保険料控除=800*15%=120万円
基礎控除48万円+社会保険料控除120万円=168万円
課税所得=610-168=442万円
所得税額:195*5%+(330-195)*10%+(442-330)*20%=9.75+13.5+22.4=45.65万円
所得税の負担率 45.65/800=5.70625%
参考資料:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2012/taxanswer/shotoku/1410.htm