6月21日から、関西大学での新型コロナウイルスワクチンの職域接種が始まった。接種開始の時間は、近畿圏だけでなく、全国の大学でも相当早かった。しかし、NHKのニュース「関西大学 ワクチン接種済みの学生に500円分の商品券配布」は、「大学によると、学生およそ3万人に接種を希望するかアンケートを行ったところ、これまでに回答した学生のうち9割が接種を希望すると答えたが、まだ、半数の学生が回答していないということである」と述べている。
同様に、日本経済新聞「近大生4割、ワクチン接種せず 副作用に不安も」という記事によれば、「6月21日から7月9日まで1回目の接種を実施したが、東大阪と奈良キャンパスの在学生・合計2万7901人のうち39%が接種を見送った」ということがわかった。副反応への不安などから接種しない学生は、数多く存在している。近年、行動経済学という人間が実際の社会でどんな行動しているのかを研究する学問が注目されており、こんな状況を行動経済学の角度からの議論も有用であると考えられる。
関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構は、一般の人々を対象として、新型コロナワクチン接種意向に関するインターネット調査を実施した。その結果、ワクチン接種を希望する人々の割合は、ワクチンに関する説明の仕方によってかなり異なることがわかった。例えば、「ある町で、100人の新型コロナ患者が出たとする。もし、この100人があるワクチンを打っていたら、95人は発病を防げたことがわかっている」と表現されると、「打ちたい」を選んだ人の割合は76.0%になる。一方、「ある町で、100人の新型コロナ患者が出たとする。もし、この100人があるワクチンを打っていたとしても、5人は発病を防げなかったことがわかっている」と表現されると、「打ちたい」を選んだ人の割合は65.9%になる。
文章の意味は同じであっても、表現の仕方を変わるだけで約10%の差が生じた。現実に戻ると、7月7日の厚生労働省「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」は453例の死亡事例が報告されている。しかし、この中「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」は451件であったから、ほとんどの死亡事例はワクチン接種との関係がないことがわかった。また、ワクチンの累計接種回数は7月11日の時点で6,025万回となった。死亡事例と膨大な数値を比較すると、0.0000075になり、統計的には極めて小さい確率である。
上述のことを振り返ると、「1つの数字を過大視すると現実的な解決策に目が向かなくなる」、我々人間はもっと冷静な判断を下すことが必要である。ワクチンは、以前よりも多くの命を救えるようになっており、それは紛れもない事実である。また、接種後に500円分の商品券を配るようなナッジ(nudge)の考え方をもっと公共政策に応用できれば、少しでもコロナショックを和らげることに貢献できるだろう。
(SHAO YUZHAO)
参考資料:
NHK「関西大学 ワクチン接種済みの学生に500円分の商品券配布」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210622/k10013098191000.html
日本経済新聞「近大生4割、ワクチン接種せず 副作用に不安も」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1237N0S1A710C2000000/
関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構「わずかな説明の差が人々の接種意向を左右」
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2020/No57.pdf