日本の海岸線35,000 [km] のうち、砂浜海岸は8,000 [km] で、全体の23%を占めています。年間1.6×106 [m2] または160 [ha] の貴重な国土が失われており、これは東京ディズニーランド3個分に匹敵する面積です。このまま推移すると15年後には2,400 [ha]、30年後には4,800 [ha] もの面積が失われる計算になります。
海や流れによって底質(海浜の水底を構成している堆積物や岩石)が移動する現象を漂砂といいます。また、風により底質が移動する現象を飛砂といいます。海浜の底質はその場所にとどまっているのではなく、波や流れの作用によって常に移動し入れ替わっており、河川からの供給量と海岸からの流出量のバランスが崩れることにより海岸侵食が生じます。
今日ではダム建設によって河川からの供給量が減少しており、その結果海岸侵食を生じていることが多いです。また、海食崖の崩落防止対策による供給量の減少も関係しています。
このように海浜地形の変形に関係する様々な過程を総合して海浜過程と呼んでいます。下図は海浜過程に含まれる要因の関係性を示したものであり、要因は相互に影響しあっており非常に複雑なことが分かります。
漂砂減少と海浜地形の変化の過程を調べるために、漂砂移動を便宜的に海岸に対して直角方向と平行方向の2成分に分けて取り扱われます。このとき、直角方向の漂砂を岸沖漂砂、平行方向の漂砂を沿岸漂砂と呼んでいます。
漂砂に関する底質の特性は粒径、粒度分布、比重、空隙率、沈降速度があります。粒度分布は一般に粒径加積曲線によって表され、平均粒径、ふるい分け係数、偏歪度がよく用いられています。平均粒径は通過質量百分率を50%通過するときの粒径であり、詳しい内容については土質力学 1.5 粒径と粒度分布を参照して下さい。
ふるい分け係数は底質の均一性を示す値であり、値が1に近づくほど均一性が高くなります。また、ふるい分け作用が良好の場合は1.25程度となります。偏歪度は粒径加積曲線が左右対称でないこと、すなわち歪みの程度を表しています。偏歪度が1より大きければ粒径加積曲線が平均粒径より右側(大きい方)に偏り、1より小さければ粒径加積曲線が平均粒径より左側(小さい方)に偏ります。
このとき、S0はふるい分け係数、Skは偏歪度、d50は平均粒径 [mm] です。
漂砂の比重は石英が主成分のときは2.65となるのですが、鉱物成分によっては3.0を超えることもあります。また、サンゴが含まれる場合の比重は小さくなります。空隙率は平均粒径が小さくなるほど大きくなることが知られており、平均粒径が1 [mm] のときは40%、0.1 [mm] のときは50%程度となります。沈降速度は球として扱えばストークスの式またはルビーの式から求めることができます。ストークスの式とルビーの式については河川工学 5.3 土砂の流送(浮遊砂)を参照して下さい。
まとめとして、海や流れによって底質が移動する現象を漂砂といい、海岸に対して直角方向の漂砂を岸沖漂砂、平行方向の漂砂を沿岸漂砂と呼んでいます。また、漂砂に関する底質特性は粒径、粒度分布、比重、空隙率、沈降速度によって表されます。