堤防や護岸の天端が打ち上げ高より低いと、打ち上げられた海水は天端を超えて堤内地に流入します。この現象を越波といいます。来襲した波群の最大波に対して天端高を決定できればいいのですが、最大波を予測するのが不可能に近く、また予測できたとしてもコストが高くなります。そのため、不規則波のいくつかは断続的に越波してきます。この不規則波による越波量は次式によって求めることができます。
このとき、qは単位幅かつ単位時間当たりの平均越波量 [m3/(m・s)]、A0は越流係数に対する定数、H*は無次元波高、hcは静水面から天端までの高さ [m]、p(H*)はH*の確率密度関数、a〜cは護岸の種類による定数です。
a〜cの値は直立護岸のときはa=1.0、b=0.8、c=10となり、消波護岸のときはa=0.5、b=0、c=5となります。また、合田らは波形勾配(H0'/L0)が0.012、0.017、0.036における越波量の算定図を作成しました。下図は波形勾配が0.036のときの算定図を示しています。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:直立護岸を海底勾配1/30、水深3 [m] 地点に設置する。潮位2.0 [m] のときに換算沖波波高5.5 [m]、周期10 [s] の波が入射するとき、越波量を0.005 [m3/(m・s)] 以下にするためには護岸の天端高をどのくらいにすればよいか求めよ。また、消波護岸のときも算定せよ。
まずは、波形勾配を求めていきます。
計算の結果、0.036の値に近いため、合田らの算定図を使って天端高を求めていきます。そのために必要な諸量を計算しておきます。
では、算定図から天端高を求めていきます。
同様に、消波護岸のときも求めていきます。
従って、消波護岸は直立護岸より2.0 [m] ほど低くできることが分かりました。
まとめとして、天端を超えてくる波を越波といい、越波量は確率を使って求めることができます。また、合田らは波形勾配が0.012、0.017、0.036における越波量の算定図を作成しており、その図からも求めることができます。