等流計算には、理論式として対数則、経験式としてマニングの式やジェシーの式があります。開水路の対数則は管水路の流速分布式を開水路に適応すれば求まります。管水路の対数則の詳しい内容は6.2 乱流の流速分布を参照して下さい。対数則の流速分布は次のようになります。
このとき、滑面領域、遷移領域、粗面領域のu/u*は管水路のときと同じものを使っています。また、解き方も同じですので、気になる方は6.2 乱流の流速分布を参照して下さい。ここでは、結果だけ示しておきます。
次に経験式について説明していきます。等流の場合、下図のように水に働く重力の流れ方向の力と水路壁面から受ける摩擦力が釣り合って水が加速されない状況です。このときの釣り合いの方程式を立てていきます。
このとき、等流であるからP1=P2となり、河床勾配をIb=I=tanθ≒sinθと置くとせん断応力は次式で表わされます。
水路を幅広の長方形水路とすると径深は次のように置き換えられます。また、実河川におけるせん断応力は次のように表されることが多いです。
管水路における摩擦損失水頭はダルシー・ワイズバッハの式で表わされましたが、開水路の摩擦損失水頭も同様の式で表すことができます。ただし、管径を径深に変える必要があります。
この開水路における摩擦損失水頭の式をせん断応力の式に代入していきます。
次に、せん断応力の式から速度を求めていきます。すると、ジェシーの公式が得られます。
その他の流速の公式としては、マニングの公式があります。一般的に、こちらの式がよく使われます。
勾配がずっと同じ状態で続いたときの水深は一定の値となり、このときの水深を等流水深と呼びます。また、等流水深はマニングの公式と連続の式から求められます。このとき、水路は幅広長方形水路とします。
ところで、現実の水路は長方形だけではなく、台形水路や円形水路も流れています。そこで、水路断面の形状要素を表にまとめてみました。必要なときに使って下さい。
下水管のような上部の閉じた開水路の水理量(流積や径深など)を計算するのは、上の表を見てもわかるように少しめんどくさいです。そこで、水深に対する流速、流量、潤辺、流積、径深をそれぞれ満水時の値で割って図示しておけば、水深を測定すると水理量が求められるようになります。図示したものが下図であり、図中の各水理量の曲線を水理特性曲線といいます。
それでは、例題を2問解いて終わりとしましょう。
例題1:等流で流れている水路幅が5.0 [m]、勾配が1/800の長方形水路に流量11.0 [m3/s] の水を流すときの水深はいくらか。また、このときの流れは常流か射流かを求めよ。ただし、粗度係数は0.014とする。
まずは、等流水深を求めていきましょう。等流水深の式はマニングの公式と連続の式から導きましたので、簡単に計算することができます。
この等流水深の式はあくまで幅広長方形水路と仮定した式です。なので、幅が広くない長方形水路の等流水深も求めてみたいと思います。
この式は、両辺に等流水深が入っています。このようなときは繰り返し計算を行う必要があります。繰り返し計算とは、何度も同じ計算を行うことで求めたい物理量の値を収束させる計算方法のことです。6.4 摩擦損失水頭の例題でも使っていますので参考にして下さい。ここでは、左辺の等流水深に代入する最初の値は、幅広長方形水路で求めた0.921 [m] とします。
求まった等流水深の値を左辺に代入し、再度計算を行います。この計算を繰り返すと等流水深は1.060 [m] の値で収束します。次に常流か射流かの判定を行います。通常、常流か射流かの判定にはフルード数を用います。
等流の場合は速度が一定であるため、水深のみで判定が行なえます。また、等流の場合は勾配が一定であるため、水深は等流水深になります。よって、等流水深と限界水深を比較すれば常流か射流かを判断することができます。フルード数が1より小さければ常流となりますので、等流水深が限界水深より大きければ常流となります。逆に、フルード数が1より大きければ射流となりますので、等流水深が限界水深より小さければ射流となります。では、限界水深を求めていきましょう。限界水深の式の導出は7.2 等流の常流と射流を参照して下さい。
以上より、h0>hcとなっていますので、例題の流れは常流といえます。
例題2:流積、勾配が決められた長方形水路がある。水深と幅を変化させて流量が最大となるような水路を求めよ。
マニングの公式と連続の式から流量の式は次のようになります。
このとき、流積、粗度係数、勾配は一定なので、径深が最大になれば流量は最大となります。径深は流積を潤辺で割れば求まる値なので、潤辺が最小となるような水路を考えていきます。
よって、水路幅が水深の2倍になる長方形水路のときに流量は最大となります。
まとめとして、等流の速度を求めるときは理論式と経験式の2種類があります。経験式はマニングの公式が一般的によく使われており、マニングの公式から等流水深が導けます。また、等流水深と限界水深を比べることで常流か射流かを判断することができます。