管水路に水を流すと2点間には必ず圧力差が発生します。これは、水が管内を流れているときに摩擦によってエネルギーが消耗されているからです。そこで、摩擦による損失水頭を考えていく必要があります。下図の動水勾配線はエネルギー線より速度水頭分だけ低い位置にあり、管径が変化せず流速の等しい区間ではエネルギー線と動水勾配線は平行となります。また、管水路の途中で水柱を立てると、水柱は動水勾配線まで上がります。
図を見ると断面②に摩擦損失水頭が加わっているのが分かります。また、管水路は流速分布のある流れなのに対し、ベルヌーイの式には平均流速が用いられています。そのため、速度水頭の前にエネルギー係数αをつける必要があります。エネルギー係数の実用的な値としては1.0または1.1程度が妥当といわれています。では、ベルヌーイの式を立てていきましょう。
このとき、αはエネルギー係数 [単位なし]、hlは摩擦損失水頭 [m] です。
摩擦損失水頭は速度水頭と管長に比例し、管径Dに反比例することが分かっています。そのため、摩擦損失水頭は次式で定義されています。
このとき、lは管長 [m]、Dは管径 [m] です。
この式はダルシー・ワイズバッハの式と呼ばれており、ヘンリー・ダルシーによって開発され、ユリウス・ワイズバッハによって修正されました。ヘンリー・ダルシーは19世紀フランスの技術者であり、地下水の流れに関するダルシーの法則も発見しています。ダルシー・ワイズバッハの式中にある摩擦損失係数は層流、乱流の滑面領域、乱流の遷移領域、乱流の粗面領域に対し次式で表わされます。
しかし、これらの式を使って摩擦損失係数をいちいち計算するのはとても面倒です。そこで、摩擦損失係数の値を与える実用的なものとして、ムーディ線図があります。ムーディ線図は層流及び乱流についての摩擦損失係数の値をReとk/Dを用いて表したものです。各種管の標準的なkの値は下表で与えられます。参考程度に見ておいて下さい。
ムーディ線図
それでは、例題を一つ解いて摩擦損失水頭は終わりとしましょう。
例題:直径0.1 [m]、長さ50 [m] の滑面円菅に水を流量0.002 [m3/s] で流すと、摩擦損失水頭はいくらになるか。ただし、動粘度は1.139×10-6とする。
まずは、円管内の流れが層流なのか乱流なのかを確かめる必要があります。レイノルズ数を求めるためには平均速度が必要ですので、連続から平均速度を求めていきます。
速度が求まったので、レイノルズ数を計算します。
レイノルズ数の値が4000より大きいので乱流であることが分かりました。また、円菅は滑面なので摩擦損失係数の式は乱流の滑面領域を使います。
このとき、上式は両辺に摩擦損失係数が入っているので繰り返し計算をする必要があります。まずは右辺のfに0.02を代入します。すると、左辺のfは0.0251になります。この0.0251の値を再度右辺に代入します。この計算を繰り返すとfの値は0.0245に収束します。この値をダルシー・ワイズバッハの式に代入します。
別解として、繰り返し計算が面倒な人はムーディ線図から摩擦損失係数fを求めて下さい。図より、f=0.025と読み取ることができ、ダルシー・ワイズバッハの式からhl=0.041が得られます。
まとめとして、管水路では摩擦によって損失水頭が発生します。この摩擦損失水頭はダルシー・ワイズバッハの式から求めることができます。また、ダルシー・ワイズバッハの式で使われている摩擦損失係数の値はムーディ線図から読み取ります。層流における摩擦損失係数はハーゲン・ポアズイユの式から求めることができますので、時間のある方は誘導してみて下さい。