管水路が直線で管径が変化しない場合、摩擦損失水頭のみを考えれば良いのですが、実際の管水路はそんなに簡単ではありません。途中で管径が変化したり曲がっていたり、流量調整用の弁がついていたりします。これらの局所的な変形部分によりエネルギーはどんどん消耗されていきます。ここでは、5つの形状損失水頭を述べておきます。
①流入による損失水頭
水槽や貯水池から管水路に流入する際に起こる損失のことです。
このとき、heは流入による損失水頭 [m]、feは流入損失係数 [単位なし] です。
流入損失係数はワイズバッハの実験結果よりある程度の値がわかっています。
②断面変化による損失水頭
管水路の断面変化には、急拡、急縮、漸拡、漸縮の4つの形があります。
[1]急拡による損失水頭
断面積が急に拡大すると、流れは急には広がらず拡大部に渦が生じエネルギー損失が起こります。急拡による損失水頭はボルタの式とも呼ばれ、実測値と十分な精度で一致することが知られています。
このとき、hseは急拡による損失水頭 [m]、fseは急拡損失係数 [単位なし] です。
[2]急縮による損失水頭
断面積が急に縮まると流れはいったん収縮し始め、その後拡大して流れていきます。急縮は圧力水頭が速度水頭に変化するので、エネルギー損失は無視できるほどに小さいです。
このとき、hscは急縮による損失水頭 [m]、fscは急縮損失係数 [単位なし] です。
急縮損失係数は以下の表から求めることができます。
[3]漸拡による損失水頭
漸拡は徐々に管径が広がっている様を表しています。漸拡による損失係数は拡がり角θと管径比D2/D1によって決まる係数であり、拡がり角が5°〜6°のときに最小となります。この角度を超えると流れが管壁から剥離し、周辺の管壁と流れの間に渦を生じ、値が急増します。
このとき、hgeは漸拡による損失水頭 [m]、fgeは漸拡損失係数 [単位なし] です。
漸拡損失係数はギブソンの実験値から求まります。
[4]漸縮による損失水頭
一般に断面が流れ方向に収縮していく場合は、渦が発生しにくく流れは安定しています。従って、断面が収縮することに起因するエネルギー損失は極めて少ないです。そのため、漸縮が緩やかなときは漸縮損失水頭を無視する場合もあります。
このとき、hgcは漸縮損失水頭 [m]、fgcは漸縮損失係数 [単位なし] です。
漸縮損失係数は下図から求められます。
③曲がりによる損失水頭
管水路の変化部は、次第に方向を変えるものを曲がり、急に折れ曲がるものを屈折と定義されています。
[1]曲がりによる損失水頭
曲がりによる損失水頭は、曲率半径ρと管径D、曲がりの中心角θが関係しています。曲がりによる損失水頭は曲がりの内側で流れが剥離し、向心力の影響で渦が発生します。曲がりは複雑な様相を示し、数多くの実験がなされた後に、アンダーソンとストラウブによって曲がりによる損失水頭が求められるようになりました。
このとき、hbは曲がりによる損失水頭 [m]、fb1は曲がり損失係数 [単位なし]、fb2は中心角が90°でないときの補正係数 [単位なし] です。
それぞれの係数は下図によって求めることができます。
[2]屈折による損失水頭
屈折による損失水頭は屈折部で流れが剥離するために生じます。ワイズバッハの実験式から次のように表わされます。
このとき、hbeは屈折による損失水頭 [m]、fbeは屈折損失係数 [単位なし] です。
④弁類などによる損失水頭
管水路の途中に挿入された弁類は、スルース弁、バタフライ弁、コックなどがあります。弁類による損失係数は、バルブ自体の構造や開度によって異なってきますので、ここでは省略しておきます。
このとき、hvは弁類などによる損失水頭 [m]、fvは弁類などによる損失係数 [単位なし] です。
⑤流出による損失水頭
管水路の末端において、水が下流側水槽や大気に放出される場合、流れの持つ速度水頭が全て失われます。従って、流出による損失水頭は次式で表わされ、流出損失係数は特別な場合を除き1.0と考えて大丈夫です。
このとき、h0は流出による損失水頭 [m]、f0は流出損失係数 [単位なし] です。
まとめとして、損失水頭は摩擦損失水頭と形状損失水頭に分けられます。主となる形状損失水頭は、流入による損失水頭、断面変化による損失水頭、曲がりによる損失水頭、弁類などによる損失水頭、流出による損失水頭の5つがあります。