使用性における鉄筋コンクリートの応力度は許容応力度設計法のときと同じ計算式で求めることができます。詳細な内容については2.2 単鉄筋の中立軸〜2.12 腹鉄筋(折曲鉄筋)を参照して下さい。ただし、許容応力度設計法と異なる点が1つあります。それはヤング係数比を15と置かず、次式から求めるところです。
コンクリートの弾性係数は下の表のように、コンクリートの設計基準強度から求めることができます。また、鉄筋の弾性係数は200 [kN/mm2] とするのが一般的です。
鉄筋コンクリートに曲げモーメントが作用すると、コンクリート下縁には引張応力が生じます。コンクリートは引張に弱いため、当然のようにひび割れが発生します。曲げひび割れで問題となるのは、ひび割れ幅です。ひび割れ幅が大きければ、外的要因(水や塩化物など)の侵入により、鉄筋腐食に伴う耐久性の低下が起こります。そのため、ひび割れ幅について使用性を照査する必要があります。曲げひび割れの間隔、曲げひび割れ幅は次式によって求めることができます。
このとき、lcは曲げひび割れ間隔 [mm]、wは曲げひび割れ幅 [mm]、cはかぶり厚 [mm]、csは鉄筋の中心間隔 [mm]、σseは鋼材位置のコンクリートの応力度が0の状態からの鉄筋応力度の増加量 [N/mm2]、εcsdはコンクリートの収縮およびクリープなどによるひび割れ幅の増加を考慮した数値、k1は鉄筋表面に関する係数、k2はコンクリートの品質に関する係数、k3は引張鉄筋の段数に関する係数、mは鉄筋の段数です。
また、許容曲げひび割れ幅は以下の条件によって求められ、上限は0.5 [mm] としています。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:下図において、σseが130 [N/mm2] のときの曲げひび割れ幅に対する使用性を照査せよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は30 [N/mm2]、鉄筋は異形棒鋼、鋼材の環境条件は一般環境とする。
まずは、曲げひび割れ幅の計算に必要な諸量と曲げひび割れ間隔を求めていきます。
次に、許容曲げひび割れ幅と曲げひび割れ幅を求め、使用性を検討します。
従って、曲げひび割れ幅に対して安全であることが分かりました。危険な場合は鉄筋間隔を密にする、主鉄筋径を大きくするなどが対策として挙げられます。
まとめとして、使用性に対する応力度はヤング係数比を求めれば、許容応力度設計法と同じように求めることができます。また、曲げひび割れ幅に対する使用性も照査する必要があります。