使用性の限界状態の一つに車両走行の快適性があり、変位や変形について検討をする必要があります。ここでは代表的なものとして、はりのたわみを例に述べていきます。
曲げによるはりのたわみ量は弾性理論を用いて計算します。通常、曲げ剛性はEIで表されるのですが、鉄筋コンクリートはりの場合はEcIeとなります。このIeを換算断面2次モーメントと呼び、次式で求めることができます。
このとき、Ieは換算断面2次モーメント [mm4]、Igは全断面の断面2次モーメント [mm4]、Icrは引張側コンクリートを無視したときの断面2次モーメント [mm4]、Mcrdは断面にひび割れが発生する限界の曲げモーメント [kN・m] です。
また、全断面有効としたときの中立軸の位置と断面2次モーメントは次式によって表わされます。
一方、引張側コンクリートを無視したときの中立軸の位置と断面2次モーメントは次式によって表わされます。
さらに、断面にひび割れが発生する限界の曲げモーメントはコンクリートの設計引張強度から求められます。
このとき、ftdはコンクリートの設計引張強度 [N/mm2]、ftkはコンクリートの引張強度 [N/mm2]、k1は断面形状による係数です。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:下図のような単鉄筋長方形ばりに等分布荷重(自重)が作用したとき、支間中央のたわみ量を求めよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は21 [N/mm2]、コンクリートの材料係数は1.3とする。
まずは、計算に必要な諸量と全断面有効としたときの断面2次モーメントを求めていきます。
次に、引張側コンクリートを無視したときの断面2次モーメントを求めていきます。
また、断面にひび割れが発生する限界の曲げモーメントを計算しておきます。このとき、中立軸比と中立軸の位置は全断面有効としたときのものを使用することに注意して下さい。
では、換算断面2次モーメントとたわみ量を求めていきます。
まとめとして、構造物の変位・変形の検討は、使用性・耐久性・美観を損なわないために行います。たわみ量を計算するためには換算断面2次モーメントを求める必要があります。