鉄筋コンクリートの塩害による被害は耐久性の低下は招きます。そのため、塩化物イオンの侵入に伴う鉄筋腐食の照査を行う必要があります。
このとき、Cdは塩化物イオンの設計濃度 [kg/m3]、climは鋼材腐食発生限界濃度 [kg/m3]、C0はコンクリート表面の塩化物イオン濃度 [kg/m3]、Ciは初期塩化物イオン濃度 [kg/m3]、γclは塩化物イオンのばらつきを考慮した安全係数、cdはかぶりの設計値 [mm]、Ddは塩化物イオンの設計拡散係数 [cm2/year] です。
塩化物イオン濃度の式中に含まれるerfは誤差関数です。偶然による誤差は正規分布に従うと考えられており、誤差関数は正規分布を違うかたちで表したものです。また、かぶりの設計値は次式によって算出します。
このとき、cはかぶり厚さ [mm]、⊿ceは施工誤差 [mm] です。
さらに、塩化物イオンの設計拡散係数は次式から求めることができます。
このとき、Dkは塩化物イオンの設計拡散の特性値 [cm2/year]、D0はひび割れの影響を表す定数 [cm2/year]、λはひび割れの影響を表す係数です。
ちなみに、ひび割れ幅とひび割れ間隔の比は次式から求められます。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:飛来塩分量が少ない地域に矩形柱張出式橋脚を建設する。この橋脚梁の上面かぶり厚さを100 [mm]、側面かぶり厚さを60 [mm] としたときの塩害に対する耐久性を照査せよ。ただし、耐用年数は100年、セメントは高炉セメント、水セメント比は50%、鉄筋の弾性係数は200 [kN/mm2]、σseは120 [N/mm2]、コンクリート表面の塩化物イオン濃度は2.5 [kg/m3]、構造物係数は1.0とする。
まずは、計算に必要な諸量を求めていきます。
では、はり上面の安全性を照査していきます。
続いて、はり側面の安全性を照査していきます。
計算の結果、はり上面は安全、はり側面は危険であることが分かりました。塩化物イオンの侵入に対して所要の耐用年数を満足しない場合は、かぶり厚さを大きくする、水セメント比を小さくするなどの対策が必要となります。
まとめとして、塩害に対する照査は塩化物イオン濃度の設計値と鋼材腐食発生限界濃度から行われます。塩化物イオン濃度の設計値には誤差関数を含んでおり、この式をフィックの拡散方程式といいます。