鉄筋コンクリートばりの最も基本的な断面系としては長方形断面とT形断面があります。また、引張側だけに鉄筋を入れたはりを単鉄筋、引張側と圧縮側に鉄筋を入れたはりを複鉄筋といいます。ここでは、単鉄筋長方形断面と単鉄筋T形断面について考えていきます。
単鉄筋長方形ばりに曲げモーメントが作用すると、はり内部に曲げ応力が作用します。木材や鋼材などの等質な長方形断面の中立軸は高さの1/2を通るのですが、鉄筋コンクリートの中立軸は高さ1/2のところにありません。そのため、計算で求めていく必要があります。
中立軸の計算には引張鉄筋比と中立軸比を求める必要があり、単鉄筋長方形断面の場合は以下の式で表わされます。
このとき、pは引張鉄筋比 [単位なし]、bは鉄筋コンクリートの幅 [mm]、dは有効高さ [mm]、kは中立軸比 [単位なし]、nはヤング係数比 [単位なし] です。
また、単鉄筋T形断面の場合は以下の式で表わされます。
このとき、tはフランジの厚さ [mm] です。
では、例題を2問解いていきます。
例題1:下図のような長方形断面の中立軸の位置を求めよ。ただし、異形鉄筋の面積を算出するときは表を使用すること。
まずは、鉄筋の断面積と引張鉄筋比を求めていきます。次に、得られた値を使って中立軸比と中立軸の位置を算出します。
例題2:下図のようなT形断面の中立軸の位置を求めよ。ただし、異形鉄筋の面積を算出するときは表を使用すること。
例題1のときと同様に中立軸の位置を算出していきます。このとき、中立軸比の式が違うことに注意して下さい。
ちなみに、単鉄筋T形断面の中立軸の式はコンクリートの圧縮抵抗を無視して計算しています。一般的に圧縮抵抗は無視するのですが、ウェブ幅がフランジ幅より比較的大きいときはかなりの誤差を生ずるので、圧縮抵抗を無視せずに計算をする必要があります。そのときの計算式は次のようになります。
このとき、bwはウェブ幅 [mm] です。
まとめとして、単鉄筋長方形断面と単鉄筋T形断面の中立軸の位置を求めるときは引張鉄筋の断面積、引張鉄筋比、中立軸比が必要となります。