単鉄筋に曲げモーメントが作用したときの引張応力度と圧縮応力度を求めていきます。これらの応力度が許容応力度以下のとき、この断面は危険とみなされます。また、単鉄筋の引張応力度と圧縮応力度は3種類の方法によって求めることができます。
まずは、単鉄筋長方形断面における引張力と圧縮力の距離(アーム長)を求めていきます。コンクリートの圧縮力の作用点は三角形の分布図から x/3 = kd/3 であることが分かります。その結果、アーム長および係数が求まります。
このとき、zはアーム長 [mm]、jは係数 [単位なし] です。
次に、釣り合いの条件式から引張応力度と圧縮応力度を求めていきます。
また、引張応力度と圧縮応力度は中立軸比の式からも求めることができます。
さらに、断面2次モーメントからも引張応力度と圧縮応力度を求めることができます。
単鉄筋T形断面におけるアーム長の係数、引張応力度、圧縮応力度は次式によって表わされます。このとき、中立軸の位置がフランジにあるときは単鉄筋長方形断面として計算しなければいけません。
では、例題を2問解いていきます。
例題1:スパン4.4 [m]、有効高さ220 [mm]、幅1,000 [mm]、鉄筋8-D16 (15.9) の単鉄筋長方形ばりの安全性を照査せよ。ただし、自重を含めた等分布荷重18 [kN/m] が作用し、引張許容応力度は196 [N/mm2]、圧縮許容応力度は9 [N/mm2] とする。
まずは、最大曲げモーメントを求めていきます。このとき、曲げモーメントが最大となるのはC点です。また、支点反力は対称性よりVA=VB=pl/2となります。
次に、引張鉄筋の断面積、引張鉄筋比、中立軸比、アーム長の係数を求めていきます
では、これら諸量を使って引張応力度と圧縮応力度を求めていきます。
計算の結果、両方とも許容応力度を超えていなかったので安全であることが分かりました。
例題2:フランジ幅1,100 [mm]、フランジ厚さ200 [mm]、有効高さ800 [mm]、鉄筋10-D32 (31.8) の単鉄筋T形ばりの応力度を求めよ。ただし、曲げモーメント700 [kN/m] が作用しているとする。
T形断面のときは中立軸の位置がフランジかウェブかを確認していきます。
計算の結果、中立軸の位置がウェブにあることが分かったので、アーム長の係数はT形断面の式を使っていきます。
まとめとして、単鉄筋の応力度を求めるためには曲げモーメント、引張鉄筋の断面積、中立軸比、アーム長の係数、有効高さが必要となります。また、単鉄筋T形断面のアーム長の係数を求めるときは中立軸の位置を確認する必要があります。