折曲鉄筋は引張鉄筋の一部を折り曲げることで、斜め引張応力に抵抗する腹鉄筋です。折曲鉄筋の計算は、何本の引張鉄筋をどの位置で折り曲げればよいかを決定するために行います。折曲鉄筋が受け持つ距離は次式によって求めることができます。
このとき、vは折曲鉄筋が受け持つせん断応力度の距離 [mm]、τcはコンクリートが受け持つせん断応力度 [N/mm2] です。
また、折曲鉄筋が受け持つせん断力、折曲鉄筋に必要な総断面積は次式で表わされます。
折曲鉄筋の本数は折曲鉄筋に必要な総断面積から求めていくのですが、以下の規定にも適合する必要があります。
①折曲鉄筋の本数は引張鉄筋の総数の2/3未満とすること。
②スターラップと折曲鉄筋を併用する場合は引張鉄筋の総周長を次式以上とすること。
引張鉄筋を折り曲げることで鉄筋断面積は減少するので、断面の抵抗モーメントも低下します。そこで、折曲げ後の各断面の抵抗モーメントを次式で計算しなければいけません。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:下図のような単鉄筋T形断面におけるスターラップの配置区間およびせん断応力度を求めよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は24 [N/mm2]、鉄筋の許容引張応力度は196 [N/mm2] とする。
前回の問題の続きとなります。必要な諸量の数値、スターラップの計算については2.11 腹鉄筋(スターラップ)の例題1を参照して下さい。まずは、折曲鉄筋の位置、折曲鉄筋の受け持つせん断力、折曲鉄筋に必要な断面積を求めていきます。
主鉄筋1本の断面積は794.2 [mm2] なので、1本だけ折り曲げれば大丈夫なのですが、ここでは4本を折曲鉄筋として使用します。また、鉄筋の総周長から安全性を照査します。
4本折り曲げても安全であることが分かりました。では、折曲鉄筋を作図していきます。
①せん断応力図に折曲鉄筋が受け持つ距離を書き込みます。
②半円を描き、直径を折曲鉄筋の数だけ等分していきます。今回は4等分となります。
③直径から下方に垂線を引き、OAと同じ距離を直径上に落としていきます。その点をA'点、B'点、C'点とします。
④A'点、B'点、C'点から上方に垂線を引きます。すると、三角形と台形ができます。この三角形と台形の図心位置を求めます。
⑤図心位置から鉄筋コンクリート側面図の中立軸まで垂線を引きます。中立軸と垂線の交点から斜め45°に線を描いたものが折曲鉄筋となります。
ちなみに、直角三角形と台形の図心位置は以下の式から求まります。
次に、x点の曲げモーメントを求めていきます。
さらに、抵抗モーメントを求めていきます。引張鉄筋が10本、9本、8本、7本、6本のときの抵抗モーメントをMr10、Mr9、Mr8、Mr7、Mr6とします。
曲げモーメントと抵抗モーメントの関係を図に描いていきます。
以上の結果から、どの断面も曲げモーメントより抵抗モーメントが大きいので安全であることが分かりました。
まとめとして、折曲鉄筋を設計する際は折曲鉄筋の本数と曲げモーメントについて照査する必要があります。