主鉄筋(引張鉄筋、圧縮鉄筋)だけを配置した単純ばりの中央に荷重をかけると斜めにひび割れが生じます。これは曲げ応力とせん断応力が合成され、斜め方向に応力が発生したのが原因であり、この応力を斜め引張応力度と呼びます。斜め引張応力度の性質としては3つ挙げられます。
①はりの支点付近でひび割れが大きくなり、中央に近づくと小さくなる。
②コンクリート下縁では真っ直ぐなひび割れだが、中立軸に近づくと45°の斜めになる。
③各断面の斜め引張応力度の最大値は中立軸上のせん断応力度に等しいと考える。
コンクリートは引張応力には抵抗できないと考えているので、鉄筋を用いて補強する必要があります。この鉄筋を腹鉄筋と呼びます。腹鉄筋が必要かどうかはせん断応力度により判定します。
腹鉄筋にはスターラップと折曲鉄筋があります。スターラップはU形またはW形の鉄筋を主鉄筋を囲むように配置したものであり、引張鉄筋や圧縮鉄筋の位置を保持する役目もあります。このページでは、スターラップを中心に話を進めていきます。
スターラップを配置する場所はせん断応力度が許容せん断応力度を超える区間であり、次式によって求めることができます。また、安全を考慮して、超過区間に有効高さを加えた範囲がスターラップを配置する区間となります。
このとき、v1はスターラップの配置区間 [mm] です。
スターラップを配置するときの留意事項は2つあります。
①v1区間:スターラップの配置間隔を有効高さの1/2以下かつ300 [mm] 以下とすること。
②v2区間:スターラップの配置間隔を有効高さの3/4以下かつ400 [mm] 以下とすること。
さらに、スターラップが受け持つせん断応力度は次式によって表わされます。
このとき、τvはスターラップのせん断応力度 [N/mm2]、aは1組のスターラップの断面積 [mm2]、sはスターラップの配置間隔 [mm] です。
T形断面のときはbの代わりにbwを使用します。では、例題を1問解いていきます。
例題1:下図のような単鉄筋T形断面におけるスターラップの配置区間およびせん断応力度を求めよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は24 [N/mm2]、鉄筋の許容引張応力度は196 [N/mm2]、スターラップの配置間隔は300 [mm] とする。
まずは、中立軸の位置とアーム長の係数を求めていきます。
次に、最大せん断応力度と最小せん断応力度を影響線から求めていきます。
コンクリートの設計基準強度からτa1=0.45 [N/mm2]、τa2=0.75 [N/mm2] となるので腹鉄筋は配置しないといけません。許容せん断応力度については2.1 許容応力度を参照して下さい。では、スターラップの配置区間を求めていきます。
続いて、スターラップの断面積を決定していきます。
計算の結果より、スターラップはD13のU形 a=253 [mm2] とします。では、スターラップのせん断応力度を求めていきます。
まとめとして、斜め引張応力に抵抗する鉄筋を腹鉄筋といい、腹鉄筋にはスターラップと折曲鉄筋の2種類があります。腹鉄筋が必要かどうかは最大せん断応力度により判定します。