せん断破壊はせん断補強鉄筋の疲労破壊によって生じます。従って、せん断疲労の安全性はせん断補強鉄筋によって行われます。せん断疲労の安全性は変動荷重によるせん断補強鉄筋の応力度と永久荷重によるせん断補強鉄筋の応力度の2種類によって検討します。スターラップを用いるときの応力度は次式によって表わされます。
このとき、σwrdは設計変動応力度 [N/mm2]、σwpdは設計永続応力度 [N/mm2]、Qpdは永久荷重による設計せん断力 [kN]、Qrdは変動荷重による設計せん断力 [kN]、Qcdは設計せん断耐力 [kN]、krは変動荷重によって変化する係数 [単位なし] です。
また、鉛直スターラップと折曲鉄筋を併用するときは次式で応力度を求めます。
このとき、σbrdは設計変動応力度 [N/mm2]、σbpdは設計永続応力度 [N/mm2] です。
では、例題を2問解いていきます。
例題1:幅1,000 [mm]、ウェブ幅250 [mm]、有効高さ400 [mm]、鉄筋5-D22 (22.2) のSD345の単鉄筋T形断面におけるせん断補強鉄筋のせん断疲労に関する安全性を照査せよ。ただし、永久荷重の設計せん断力は50 [kN]、変動荷重の設計せん断力は60 [kN]、繰返し回数は106、スターラップは鉛直のU型-D13 (12.7) のSD345を200 [mm] 間隔で設置、コンクリートの設計基準強度は24 [N/mm2]、コンクリートの材料係数は1.30、鉄筋の材料係数は1.05、構造物係数は1.10、変動荷重によって変化する係数は0.5とする。
まずは、設計せん断耐力を求めていきます。
次に、変動荷重と永久荷重のせん断補強鉄筋の応力度を計算します。
では、疲労強度を求め、安全性を照査していきます。鉄筋の組み立ては溶接によって行われるため、疲労強度は母材の50%の強度とすることに注意して下さい。
例題2:例題1の断面において、折曲鉄筋も併用している場合のせん断補強鉄筋の疲労の安全性について検討せよ。ただし、変動荷重の設計せん断力は100 [kN]、折曲鉄筋はD25 (25.4) のSD345を45°の角度に折曲げ、400 [mm] 間隔で設置したものとする。
まずは、鉛直スターラップの応力度を求めていきます。
次に、折曲鉄筋の応力度を求めていきます。
では、鉛直スターラップの疲労強度と安全性を照査します。
最後に、折曲鉄筋の疲労強度と安全性を照査します。
計算の結果、鉛直スターラップは安全、折曲鉄筋は危険であることが分かりました。そのため、鉄筋断面積を大きくしたり、本数を増やす処置をする必要があります。
まとめとして、せん断疲労の安全性はせん断補強鉄筋によって行われます。せん断補強鉄筋の応力度は変動荷重と永久荷重の2種類を求める必要があります。また、スターラップのみの場合と鉛直スターラップと折曲鉄筋を併用する場合で式が異なってきます。