加速度は単位時間当たりの速度の変化率によって決まると1.2 加速度で述べました。そこでは述べませんでしたが、速度の変化率は物体の質量に大きく依存します。物体の質量が小さいとすぐに勢いは増し、質量が大きいとなかなかスピードは出ません。加速度は質量に反比例するのです。
天才物理学者アイザック・ニュートンは、物体に力が働くとき、加速度が生じることに目をつけました。
アイザック・ニュートンとは、リンゴが木から落ちる姿を見て、万有引力の法則という素晴らしい法則を思いついたイギリスの物理学者です。その他にも、微積分法やニュートン力学の確立といった業績が挙げられます。ニュートン力学とは、物体を質点(物体の重心に全質量が集中し大きさをもたない点)とみなし、その質点の運動に関する性質を法則化したものです。皆さんが学んでいる物理学もニュートン力学の一つといえます。
話を戻すと、加速度の大きさは力に比例し、物体の質量に反比例することを発見しました。式で表すと次のようになります。
このとき、kは比例定数と呼びます。比例定数は比例∝を等号=に変えるためにつけた定数なのですが、k=1以外はありえませんので気にしなくて大丈夫です。上式を力が求められるよう式変形します。
このとき、Fは力 [N] です。
力の単位は [kg・m/s2] になるのですが、毎回書くのが面倒なのでまとめて [N] と書きます。つまり、質量1 [kg] の物体に加速度1 [m/s2] が生じるとき、力は1 [N] となります。上式は運動方程式と呼ばれ、物理学において最重要な式の一つです。嫌でも覚えることとなります。また、アイザック・ニュートンは運動法則を3つにまとめました。これらをニュートンの運動法則と呼びます。
①慣性の法則(第一法則)
「すべての物体は外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。」
つまるところ、静止している物体は力が加わらないと勝手に動いたりはしないし、動いている物体は止まるまで動き続けようとします。では、動いている物体は何故止まってしまうのかという問題が発生するのですが、これは物体に対して摩擦力や空気抵抗力といった物体を止めようとする力(抵抗力)が働いているからなのです。よって、抵抗力が働かない宇宙空間では物体は常に等速で動き続けることになります。詳しいことは1.6 摩擦力、1.7 粘性力を参照して下さい。
②運動の法則(第二法則)
「物体に力が働くとき、物体には力と同じ向きの加速度が生じ、その加速度の大きさは力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。」
これは上で述べた運動方程式が全ての物体において成り立つことを述べています。
③作用・反作用の法則(第三法則)
「物体Aから物体Bに力を加えると、物体Aは物体Bから大きさが同じで逆向きの力(反作用)を同一作用線上で働き返す。」
机の上にリンゴを置いたとします。すると、机にはリンゴの重さ分だけ力が加わってきます。しかし、それと同時に机も同等の力でリンゴを押しているのです。この力を反作用と言います。少しにややこしいのですが、非常に重要なので覚えておいて下さい。図にすると次のような感じです。分かりやすくするためにリンゴは浮かしています。
このときの力は重力または重量と呼ばれます。リンゴは重力と垂直抗力により釣り合っているといえます。よく、作用反作用の法則と釣り合い式を混同してしまう人がいるのですが、作用反作用は2つの物体に着目しているのに対し、釣り合い式は1つの物体にしか着目しません。今回で言えば、リンゴにのみ着目しています。間違えやすいので注意して下さい。ちなみに、重力の反作用は万有引力です。万有引力については、1.10 万有引力を参照して下さい。