【OPUフォーラム2025】社会言語学的アプローチによる看護学の学際的探究:親のストレスが小児発達に与える影響
関根紳太郎(保健福祉学部看護学科);尾﨑優美(順天堂医院);平山美空(倉敷成人病センター)
【令和7年度期・看護学科3年生のみなさんへ】
以下の卒研ゼミ紹介をお読みいただき、令和8年度の入ゼミ(令和7年7月ごろに希望調査予定;入ゼミは3年後期から)をご検討ください。心理的、体力的に何か不安な点がある学生は、別途ご相談ください。内容に応じて配慮させていただきます。その他、何でも相談や説明をさせていただきます。宜しくお願いします。なお、受け入れ人数の上限は4名です。
連絡先:sekine★fhw.oka-pu.ac.jp ※★をアットマークにかえて送信してください。
※令和5年度生の募集は終了しました・・・入ゼミ生3名が確定しました!
※令和6年度生の募集は終了しました・・・入ゼミ生4名が確定しました!
※令和7年度生の募集は終了しました・・・入ゼミ生3名が確定しました!
※令和8年度生の募集中です!
フレンドリーで対話的なゼミ授業
【関根ゼミってどんなところ?】
関根ゼミでは、「言葉が紡ぐ、社会と看護」をテーマに、学際知で支えるコミュニケーションについて考えながら、言葉を通して看護の世界を探究します。看護は、医学だけでなく、心理学・社会学・言語学など、さまざまな学問と関係する学際的な分野です。関根ゼミではその中でも、社会言語学という学問をベースに、言葉の使い方や表現から、社会と看護のつながりを読み解いていきます。
さらに、ゼミでは研究を深めるために、次のような理論も活用しています:
本ゼミナールでは、看護におけるケアの言語的側面や、対人関係の形成過程を探究するにあたり、学際的な理論的視座を重視しています。特に以下のような理論を参照し、研究の枠組みとして応用しています。
バンデューラの社会的学習理論(Social Learning Theory)
アルバート・バンデューラは、人は他者を観察し、模倣することで学習し、行動に影響を受けるとする理論を提唱しました。本ゼミでは、看護師や教員の言葉の使い方・態度・ふるまいが、学生や周囲にどのように模倣・内面化されるかを考察する視点として、この理論を活用しています。特に、言語による影響力やケアの「見せ方」「伝え方」に注目します。
エントマンのフレーミング理論(Framing Theory)
ロバート・エントマンは、言葉やメディアの表現が「何を強調し、何を隠すか」によって、人々の認識や価値判断が大きく左右されることを示しました。本ゼミでは、看護師がどのようにメディアで描かれているか、また患者に対してどんな語り方がされているかを分析する際に、フレーミング理論の視点を導入します。言葉が意味を「かたどる(frame)」力に注目し、社会的イメージの構築過程を読み解きます。
ロジャースの共感的コミュニケーション理論
心理学者カール・R・ロジャースは、対人援助関係において「共感的理解(empathic understanding)」を中核とした3つの条件(無条件の肯定的配慮、一致性、共感)を提唱しました。本ゼミでは、看護師や患者の語り・やり取りにおいて、相手の立場に立ち、感情や価値観に配慮した言語的ふるまいを分析する際、この理論を中心的な枠組みとして活用しています。
ポライトネス理論(Politeness Theory)
ブラウンとレヴィンソンが提唱したポライトネス理論は、対人関係における言語的配慮や丁寧さ、相手の“フェイス(face)”への尊重を説明する枠組みです。本ゼミでは、看護師と患者との会話において、どのように言葉が選ばれ、気遣いや敬意が表現されているのかを分析する際に、この理論を活用しています。ことばのやりとりに潜む社会的関係や力のバランスに注目し、ケアとしての言語実践を読み解くための理論的基盤としています。
【どんなことをするの?】
コーパス(言語データベース)を使って、実際に使われている看護(研究)の言葉を分析します
会話や文章に含まれる意味や価値観を、ディスコース分析で読み解きます
論文などのテキストを整理して分析する「コーディング」も行います
大学院の授業「国際コミュニケーション特論」の内容をわかりやすく学びます
必要に応じて、学内外の先生から専門的アドバイスを受けられる「ゼミ学術ネットワーク」も活用します
【過去の卒研テーマの一例】
新人看護師の困難感(コロナ禍)
メディアに描かれる看護師像(日本と海外の比較)
実習中のストレスとその言語的特徴
NICUでの父親の心理的変化
育児困難と自己効力感の関係
終末期ケアにおける意思決定支援のジレンマ
親のストレスと小児の発達に関する学際的研究
日米の医療メディアにおける看護師像の分析と印象評価
【こんな人におすすめ!】
看護を、社会や言葉の視点から考えてみたい学生
メディアの表現、言葉の選び方、文化のちがいに興味がある学生
自分の気づきや疑問を、テーマとしてじっくり深めたい学生
言葉を手がかりに、看護の“あたりまえ”を少し違う角度から見てみたい学生
みなさんの視点が、新しい看護の世界をひらくかもしれません!
【研究スケジュール(予定)】
第0期(3年後期):研究課題の検討、予備的調査(臨地実習を考慮)
第1期(4月~5月):ガイダンス、コーパスおよびディスコース分析について・・ゼミ形式によるディスカッション(臨地実習を考慮)
※ご要望に応じて、就職用各種書類の作成サポート、模擬面接対応、他大学院進学指導等あり
第2期(6月~7月):研究フレームワークの作成、コーパスの構築・・・・・各自の研究および教員との研究ゼミ(臨地実習を考慮)
第3期(8月~9月):コーパスに基づくディスコース分析・・・・・各自の研究と分析(適宜教員との研究ゼミ)※卒研中間発表(基礎看護学領域)
第4期(10月~11月):まとめと考察・・・・・卒業研究論文の作成(12月下旬論文完成予定)
※コロナ禍においては、適宜Teams、zoomによるリモート演習を実施予定
ゼミ開講日時(予定):月曜、火曜、(木曜)の午後~夕方のいずれか(ゼミ生と相談の上、決定)※変更等は柔軟に対応します。
進路状況:
令和3年度ゼミ生の入職先:倉敷成人病センター、大阪医科歯科大学病院
令和4年度ゼミ生の入職先:岡山大学病院、川崎医科大学総合医療センター、兵庫県立こども病院
令和5年度ゼミ生の入職先:しげい病院、(岡山大学病院(内定辞退)→大学院進学)
令和5年度ゼミ生の進学先:岡山大学大学院(合格;進学)、香川大学大学院(合格;辞退)、宮崎大学大学院(合格;進学)
令和6年度ゼミ生の入職先:聖路加国際病院、国立国際医療センター病院、順天堂大学医学部附属医院、倉敷成人病センター
【研究関連活動】※現在活動の一部を自粛 段階的に活動を再開
・茶道有資格者(裏千家)のゼミ担当教員による作法講習(本学茶室での茶道体験)・・・おもてなし(日本的ホスピタリティ)の精神を深め、心を整えます
・池田理恵ゼミ(和歌山県立医科大学)との合同研究会・・・お互いの研究内容について意見交換をし、ランチやカフェをしながら交流を深めます
・堀智子ゼミ(順天堂大学スポーツ健康科学部)との学術交流会・・・zoom等のオンライン会議システムを活用しながら学術交流を行います
・香港理工大学看護学科との国際交流・・・本学と提携大学である香港理工大学看護学科生と病院施設等を一緒に見学し、交流を深めます(中止の場合あり)
・岡山アウトリーチプログラム(地域観光推進事業)へのサポート活動・・・関根研究室と岡山県産業労働部観光課との協働プロジェクトを通じて、地域創生に資するグローバル活動に参加する機会があります(但し、看護実習等を最優先します)
社会的文脈依存性とは?
1. 社会的文脈とは何か?
「社会的文脈」は、以下のような複数の要素から構成されます:
文化的背景:民族、宗教、価値観、慣習など
歴史的背景:過去の出来事、社会変動、政治状況など
社会的状況:家族関係、職場環境、教育制度、地域コミュニティなど
コミュニケーション状況:誰が、誰に対して、どこで、どんな手段で話すか(対面、メール、SNSなど)
→ これらが複雑に絡み合い、人の行動や言葉の意味を決定づける社会的な“場”をつくり出します。
2. 社会的文脈依存性の具体例
領域 例 解説
言語 「空気を読む」 日本語では「場の雰囲気」を察する意味があるが、他言語には直訳が難しいこともある。
行動 同調行動 一人ではやらないことでも、集団の中だと無意識に合わせてしまう。
意思決定 流行の影響 自分の判断だと思っていても、社会的流行や他者の意見に影響されていることがある。
感情表現 文化差 日本では感情を抑えることが美徳とされる一方、欧米では感情を率直に表すことが重視される文化も多い。
3. 関連する学問分野
分野 内容
社会学 社会構造・役割・集団行動の分析
文化人類学 異文化の比較、文化と行動の関係性
社会心理学 社会的状況が人の認知や行動に与える影響
社会言語学 言語が社会文脈にどう依存し、使い分けられているか
4. 社会的文脈依存性を理解する意義
異文化理解の促進:異なる文化の価値観や表現スタイルを尊重できる
社会課題の理解と解決:社会的背景を理解することで、課題の根本にアプローチできる
自己理解の深化:自分の行動や思考が、どのような文脈に影響されているかを客観的に見直せる
5. 注意点
個人差がある:同じ文脈にいても、すべての人が同じように反応するとは限らない
文脈は変化する:グローバル化やデジタル化により、社会文脈は常に流動的になっている
固定化しないことが大切:文脈依存性を理解しつつも、「文脈がすべて」と決めつけることなく、柔軟に捉える姿勢が重要
【まとめ】
社会的文脈依存性を理解することは、現代社会を生きるための基礎的リテラシーであり、対人関係・異文化交流・医療福祉・教育など幅広い分野で応用できる知見と言える!
社会的文脈依存性 × 社会言語学 × 看護学:卒業研究への展開可能性
1. 社会的文脈依存性とは?
社会的文脈依存性とは、言葉や行動の意味が、その人が置かれている社会的な状況(人間関係・文化・場面など)、すなわち“場”によって変化することを指します。つまり、「誰が・どこで・誰に・何を・どう言うか」によって、その意味や効果が変わるということです。
2. なぜ看護にとって重要なのか?
看護の現場では、患者さんや家族とのことばのやりとりが日常的に行われます。
その言葉には、安心を与えるものもあれば、無意識に傷つけてしまうものもあります。
→そこで、「そのことばが、どのような社会的文脈で使われたか」を丁寧に読み解くことが大切になります。
3. 社会言語学とのつながり(学際的な融合≒学際知)
社会言語学は、「ことばがどのように社会で使われ、意味を持つか」を研究する学問です。
看護学と社会言語学を融合することで、次のような卒業研究の切り口が生まれます。
●今後の卒業研究への展開例
【テーマ例1】
「看護場面における共感表現の分析:患者とのやりとりにおける「寄り添うことば」を探る」
社会的文脈:終末期/外来診療/訪問看護など
方法:
文献検討(共感的ケアに関する先行研究)
コーディング(患者・看護師の語りの共感的パターンの分類)
ディスコース分析(語りの中で共感がどう展開されるかを読む)
ロジャース理論の活用(共感的理解)
【テーマ例2】
「看護記録におけるケアのことばのコーパス分析:語彙と文脈の特徴を可視化する」
社会的文脈:記録の対象者(高齢者/認知症患者/小児など)
方法:
コーパス作成(記録文からことばを収集)
量的研究(頻度・共起語などを分析)
ポライトネス理論で考察(敬意・配慮の言語形式)
【テーマ例3】
「看護学生の言語的成長に関する調査研究:ことばへの意識と現場での使用のギャップ」
社会的文脈:実習前/実習中/実習後
方法:
質問紙調査(調査研究)
学生のレポート・記録を使ったコーディング分析
ディスコース的な比較(言語的配慮や成長の軌跡を読む)
【テーマ例4】
医療ドラマにおける看護師の(ことばの)イメージ分析:メディアと言語の影響
社会的文脈:テレビ・ネット動画・SNS上の発信
方法:
文献検討(フレーミング理論やメディア表象の研究)
ディスコース分析(ドラマのセリフや看護師像の分析)
コーパス分析(特定語彙の使用頻度や共起語の傾向)
【活用可能な研究手法の一覧】
手法 内容 活用場面
文献検討 先行研究や理論を整理して研究の土台をつくる 全テーマの基礎として活用*理論研究
質的研究 語りや発話内容を深く読み取って分析 ディスコース分析、コーディングに活用
量的研究 頻度・傾向を数値で把握 コーパス分析、アンケート集計など
調査研究 質問紙などでデータを収集・分析 学生や現場の看護師への実態調査など
【まとめ】
看護師が使う「ことば」には、社会的背景、関係性、状況が深く影響しています。
社会言語学的手法(コーパス・ディスコース・コーディングなど)を使って、その文脈に依存した意味や働きを丁寧に読み解くことは、看護の本質である“ケア”を深く理解することにもつながります。
コーパスとは、言葉のデータベースと言えます。私たちは、さまざまな言葉や言葉と同じような働きをもつものを用いて生活しています。そうした連続する言葉や言葉らしきもののやりとりがコミュニケーションです。そして、無数のコミュニケーションがこの社会を形成しているとも言えます。看護ケアにおいても、そうした(社会的)コミュニケーションなくして、(例えば)採血による患者さんの血液の物質的、科学的検査はきわめて困難と言えるでしょう。すなわち、私たちは、日々の社会的営みを言葉や言葉らしきものに置き換え、それを活用しながら生活していると考えられます。したがって、言葉をできる限りたくさん集めてできたデータベースであるコーパスは、言葉に置き換えられた私たちのコミュニケーションの集積であり、社会(や後述する<世界>)の一端と言えます。
ディスコースとは、単に辞書的ではなく、社会文化的な意味をもった言葉のまとまりと言えます。私たちが日々の生活で用いるコミュニケーションの手段には言葉だけではなく、記号、数字、色、音、匂いなどもあります。これらすべてを含めてテクスト(text)と呼びます。そして、テクストが用いられる状況や社会的背景にあるものがコンテクスト(context)となります。こうしたコンテクストに影響されながら、その場に特有の意味が生み出されたテクストのまとまりがディスコースと言えます。したがって、ある特定の場面(例えば、病院の診察室や待合室など)でテクストとしての言葉のコミュニケーション(やりとり)はディスコースであり、そのディスコースを捉えることは、ある場面に特有の(コミュニケーションの)意味を明らかにすることと言えます。
<世界>とは、私たちを取り巻くさまざまな物理的現象や社会的事象から成る(途方もなく大きく、無限とも言える)現実の「世界」が、言葉、記号、数字などに置き換えられたものと言えます。現実の「世界」を<世界>とすることで、情報として伝達したり、分析対象として、調査・検証などをしたりすることができます。本ゼミでは、そうした言葉、記号、数字などに置き換えられた現実の「世界」を研究対象の<世界>として扱います。したがって、言葉のデータベースであるコーパスも<世界>として見立てることができます。このように考えると、関心のあるテーマの論文や記事、興味のあるコミュニケーション場面、アンケートの自由記述などを集めてコーパスを作成し、それを分析することで、言葉に置き換えられた看護の<世界>を明らかにすることができると言えます。
★第35回日本医学看護学教育学会(於・岡山国際交流センター)におきまして、関根ゼミ学部4年生2名と共同研究発表をしました!
★第31回日本医学看護学教育学会学術学会(ウェブ開催)におきまして、大学院看護学専攻2名と共同でオンデマンド発表いたしました。
こちらよりご視聴ください。
看護学の基盤を形成する科目は、生理学・解剖学・薬学といった医学系科目にとどまりません。看護とは、人間の健康と疾患に関する知識や技術を統合し、「人間のケア」を実践する学問であるため、心理学、社会学、社会言語学、倫理学、統計学、コミュニケーション学、公衆衛生学など、実に多様な学問領域の知見が必要とされます。
このように、複数の異なる専門領域を統合しながら展開される学問の性質を「学際性(interdisciplinarity)」と呼び、看護学はそうした学問分野であると言えます。たとえば、生理学や解剖学は、人間の身体構造や機能に関する基本的理解を提供します。一方で、本ゼミで扱う社会言語学は、言語行動が社会的にどのような意味を持ち、どのように人間関係や文化と関係するかを明らかにする学問です。これは、患者と家族、看護師や医師とのコミュニケーション、あるいは看護師や看護学生自身の「ことばにならない心の揺れ」や、ケアの背景にある社会的・文化的要因を理解するための貴重な視点を提供します。
「看護学の学際性」という特性を踏まえ、社会言語学と看護学を架橋する新しい研究のかたちを探究していきましょう!
※本ゼミにおける研究操作上の「ケア」の定義:
ケアとは、医学的な処置に限らず、相手の立場に立って考え寄り添い、その人の尊厳や感情に配慮した関係性を築く営みと捉えます。「寄り添う」とは、ただ一緒にいるのではなく、ことばや沈黙、表情、ふるまいを通して、相手が安心し、尊重されていると感じられるように配慮することを意味します。
たまにお昼も一緒に食べます!
卒研中間発表のあとは、みんなでランチ!
3年4年合同でのクリスマス会もあります!