原始星が誕生する時に、角運動量保存によって周りに円盤が形成されることが言われています。時間が経つにつれ惑星を作る原始惑星系円盤へと進化すると考えられていますが、非常に若い原始星円盤でもリングのような構造が形成されることが理論計算と輻射輸送計算によって明らかになりました (Ohashi et al. 2021)。惑星形成は非常に早い段階から始まっているのかもしれません。一方で、構造形成が行われておらず、惑星形成直前の天体の発見や、そこでのダスト成長の様子も明らかになってきました(Ohashi et al. 2023)。
Ohashi et al. 2021
惑星を形成する原始惑星系円盤では複雑な構造を持っていることが近年のALMA望遠鏡の観測で明らかになってきています。このような構造と惑星形成にどのような関わりがあるのでしょうか。私はダストの熱放射が何らかのメカニズムによって数バーセントほど偏光していることに着目し、そのメカニズムを調べました。その結果、ダストがリングのような明るい場所では100ミクロンにまで成長し、散乱による偏光が、暗い場所ではまだダストが小さく磁場による偏光が生成されていることを突き止めました (Ohashi et al. 2018b, 2019, 2020)。明るいところではダストが大きくなっているので惑星へと形成していくのかもしれません。
Ohashi and Kataoka 2019, ApJ
星は分子雲コアが何らかの方法で重力的に不安定となり重力崩壊によって形成されると考えられています。そのため生まれる星の質量やそれに伴う原始惑星系円盤の形成は星形成直前の分子雲コアの物理状態(初期条件)が非常に重要である。しかし分子雲コアがいつ、どのようにして星形成を開始するのかはわかりません。そこで私たちは分子雲コアの時間進化を測るために、分子組成の変化に着目し、時間が経つにつれ分子雲コアに存在する分子の組成が変化することを示しました(Ohashi et al. 2014, 2016a)。さらに星形成直前と考えられる分子雲コアをALMAで詳細に観測したところ、ジーンズ不安定性で分子雲コアが分裂し、内部でいくつかの塊を発見しました。この塊たちが将来、星を作り連星系を形成していく様子を明らかにしました (Ohashi et al. 2018a)。
Ohashi et al. 2018a