透析治療の選択肢と、それぞれの特徴
腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなった場合、腎臓の働きを代行する治療が必要になります(腎代替療法)。腎代替療法にはいくつかの種類があり、患者さんのライフスタイルや体の状態に合わせて選択することができます。
ここでは、代表的な3つの治療法をご紹介します。ご自身やご家族にとって、どの方法が最も適しているかを知るための参考にしてください。
1. 血液透析(HD)
血液透析は、日本で最も多くの患者さんが行っている治療法です。
- 治療の仕組み
腕の血管に作った「シャント」という特別な血管から血液を取り出し、透析器(ダイアライザー)という特殊なフィルターに通します。
フィルターで老廃物や余分な水分を取り除き、きれいになった血液を再び体内に戻します。
- メリット
治療は基本的に週に3回、医療施設に通院して行います。自己管理が難しくても、専門のスタッフが治療のほとんどを行うので安心です。
体内に治療器具を埋め込む必要がないため、腹膜炎などの感染症リスクが少ないです。
クリニック内には同じ治療を受けている仲間がいることが多く、交流の機会が持てます。
- デメリット
通院のための時間的な拘束があります。
食事や水分摂取の制限が比較的厳しくなります。
透析治療による急激な血圧の変化などで、だるさや吐き気、頭痛などを感じることがあります。
血液を取り出し、戻すためには。多くの場合毎回の透析で、血管に針を刺すことになります。
2. 腹膜透析(PD)
腹膜透析は、ご自宅でご自身やご家族が行うことのできる治療法です。
- 治療の仕組み
お腹の中に埋め込んだ「カテーテル」を通して、透析液を注入します。
患者さんのお腹の中にある「腹膜」がフィルターの役割を果たし、透析液と血液の間で老廃物や水分が交換されます。
数時間後、老廃物を含んだ透析液を体外に排出します。
- メリット
ご自宅や職場など、好きな場所で透析ができます。通院は月に1〜2回程度で、時間的な自由度が高いです。
自分のペースで治療ができるため、社会生活や趣味活動との両立がしやすいです。
体に優しい緩やかな透析のため、血圧の変動が少なく、体への負担が比較的少ないと言われています。
- デメリット
透析を毎日、ご自身で行う必要があります。
カテーテルを埋め込む手術が必要です。
カテーテルが体外に出ている部分の管理が不十分だと、感染症(腹膜炎)のリスクがあります。
腹膜にも寿命があり、5~10年で腹膜透析ができなくなる場合が多いです。
3. 腎移植
腎移植は、機能しなくなった腎臓の代わりに、健康な腎臓を移植する治療法です。
- 治療の仕組み
亡くなった方から提供された腎臓(献腎移植)や、ご家族などから提供された腎臓(生体腎移植)を患者さんに移植します。
- メリット
健康な腎臓が機能するため、透析から解放され、食事や水分の制限が大幅に緩和されます。
透析のための時間的な拘束がなくなります。
慢性腎不全に伴う合併症の改善が期待できます。
- デメリット
移植手術を受ける必要があります。
拒絶反応を防ぐため、免疫抑制剤を生涯にわたって服用する必要があります。
提供者が見つかるまで待機する必要がある場合があります。
移植された腎臓の機能が落ち、使えなくなる場合があります。その場合は透析再導入となります。
どの治療法を選べばいいの?
それぞれの治療法には、良い点もそうでない点もあります。大切なのは、ご自身のライフスタイルや価値観に合った治療法を見つけることです。
当クリニックは、外来血液透析専門の医療施設です。
参考文献・関連リンク
日本腎臓学会
日本腎臓学会が作成した、腎臓病に関する一般の方向けの情報サイトです。
日本透析医学会
透析治療に関する専門的な情報が掲載されています。
日本腹膜透析研究会
腹膜透析に特化した情報や、患者さん向けの情報が充実しています。
日本移植学会
腎移植を含めた臓器移植全般に関する情報を提供しています。