● 2023年 最優秀作品・三松賞
▶︎ 作品名
廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」
▶︎ チーム名
まとらぼ(福岡大学)
▶︎ メンバー
八木湧大(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻1年)
新留裕太(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻1年)
伊達剛平(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻1年)
吉田成志(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻1年)
堂園千香子(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻1年)
沓形花見(福岡大学工学部機械工学科4年)
堂領さくら(福岡大学工学部機械工学科4年)
米安哲史(福岡大学工学部機械工学科4年)
二嶋岳大(福岡大学工学部機械工学科4年)
山口颯太(福岡大学工学部機械工学科4年)
白根光樹(福岡大学工学部機械工学科4年)
笹原大河(福岡大学工学部機械工学科4年)
篠原大和(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻2年)
中津留旭(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻2年)
後藤隆継(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻2年)
進藤祐希(福岡大学大学院工学研究科機械工学専攻2年)
● 二次審査講評
▶︎ 審査委員長
筬島 修(一般社団法人九州経済連合会 産業振興部長)
「廃用症候群」という初めて聞く病気の予防につながる電動リクライニング車椅子の提案でした。 プレゼンではモックアップ、データの分析・検証がすばらしく、かなり実現性の高いアイデアではないかと思わせるものでした。 例年の柔らかめのプレゼンではなく、違う角度で攻めてきた感もあり、高い評価を得たと思います。
▶︎ 審査委員
田中 久生(福岡市科学館 サイエンスコミュニケーター)
現状分析と課題設定、その課題を解決するための必要な項目をしっかりと調査・考察されていると感じました。 また、細かな実験とその結果の考察がプレゼンテーションされており、問題を解決したいという『夢』にむかって、しっかりと解決できるロボットを考えて、実現に向けて考えていると思える発表でした。ただ、廃用症候群などの説明が、初めて聞く参加者もいるという考えのもと、もう少しわかりやすい説明だったらよかったのではと感じました。
▶︎ 審査委員
加藤 優(元自動車会社デザイナー)
近畿大学のテーマとも重なりますが、車椅子のリクライニングにおける人体と座面・背もたれとのズレを解消するリンク機構の解析が提案の主軸だったかと思います。 寝たきりや座りきりでの苦痛はなかなか健常者には想像が難しいのですが、ズレの数値化や、被験者10名によるアンケートなどを踏まえて、このような機構のリクライニング車椅子が目的とする廃用症候群の予防に役立つであろうことが良く理解できました。 さらに被介護者の心に寄り添うという観点から真珠貝をデザインモチーフとしたとあり、感情に対する考慮も大変良くなされていると思いました。 リンク機構を無駄なカバーなどせずに上手くデザインするのは大変に難しいと思いますが、競技用車椅子などを見るとパイプフレームだけでも格好良いものがあります。 またモダンデザインの椅子(マルセル・ブロイヤーのワシリーチェアなど)も参考になるので見てみて下さい。最優秀賞、おめでとうございます。
▶︎ 審査委員
永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)
・背景からテーマ設定までの流れが分かりやすい
・廃用症候群という用語を知り、勉強になった
・動き方の理論的な解析なども実施され素晴らしいし、実機検証までやっていて素晴らしい
・ダブルミーニングなネーミングも良い
▶︎ 審査委員
田名部 徹朗(株式会社 三松 代表取締役)
今回接戦を制し見事に最優秀賞を受賞されおめでとうございます。 三松社賞も同時にダブル受賞された今回一押しの研究であったと思います。まず、日常生活が不活性になりやすく、また病気などにより寝たきりとなる高齢者が様々な心身機能低下を起こすことを廃用症候群なる病気ということは全く知りませんでした。 動かないと1日3~5%筋力が低下するほど急激な心身の衰えが精神的にもダメージを与えるという深刻さは自分自身の近未来な課題(笑)として興味をひきました。 しかも、車椅子に乗っていても床ずれになってしまうとは気の毒の一言です。 一般的には、使用時間の長いベッドをどうしようかとなるところを、介護現場でも実は使用頻度の高い車椅子に焦点を当てたことが何といっても一番のヒットと思いました。 また、その解決策を最先端の動力学計算理論であるマルチボディダイナミクスを使って解析し、高度な新機構を必要としない形で実装されようとしたことは実現可能性の高さを示すとともに開発コストの低減にもつながる画期的なアプローチであると思いました。 分析そのものも精緻で考え抜かれた実験より得たデータをもとに明快に行われており大変納得性の高い説明を受けることができました。 ぜひ実用化につなげていただきたいですし、その他さまざまな課題解決に適用できる分析・実用化手法を習得された立派な研究であったと思います。