私の研究分野は超弦理論です。
この世界のカタチ「時空構造」を知りたくて探究しています。
我々が認識する時間と空間の数(時空次元)は「4」です。そして通常、物理理論(モノゴトの設計図)を考える時にこの時空次元はインプットとして最初から設定されます。
超弦理論では時空次元はインプットではなく、「10」とアウトプットとして定まってしまいます。このような時空次元の制限が超弦理論の威力の1つとなっていますが、我々の認識とはズレてしまっています。
ここですぐに超弦理論は間違いだと言って捨てるのではなく、「余った6次元はどうなってるのか?」のように、我々の認識とのズレを肯定的に問い詰めると、「我々の住む4次元時空にある電子や光などあらゆる物質はこの余った6次元空間が決めているのでは?」という考えに到達します。この世界を形作っている物質や力も「時空構造」から決まってしまうという、とても壮大なシナリオが立てられます。このシナリオを特に「時空のコンパクト化」と言います。例えば、1980年代半ばに代数幾何学・微分幾何学の分野からCalabi-Yau空間が導入され、超弦理論が導く時空の真空構造に対して知見が深まりました。
超弦理論において時空をコンパクト化すると、弦はそのコンパクト化された時空を伝搬するだけでなく、時空そのものに巻き付くこともあります。そして、「ある状況における弦の伝搬」が「別の状況における弦の巻き付き」と物理的に等価であることが理論的に示されます。これを「T-双対性」と呼びます。
さらに、超弦理論には様々な時空次元に広がったブレーン(brane)と呼ばれる基礎的物体が内蔵されています。コンパクト化された時空におけるT-双対性とブレーンの力学を組み合わせると、一般相対論が示す時空よりもはるかに豊かな構造(例えばT-fold)が見出されます。これにより、従来の素粒子論では予言されない相互作用が新たに見出されます。また、ブラックホールによる情報喪失問題など量子重力理論が持つ難題に挑戦することが可能になります。これらは、我々が未だ理解が出来ていないこの宇宙・世界の成り立ちを解き明かす重要な手掛かりになるはずです。
私はこのシナリオに魅了され、理論物理学を用いて知的好奇心を膨らませています。 近年では、所属する情報科学部に触発されて量子情報理論も視野に入れ、改めて「世界のカタチ」の在り方を見つめ直しているところです。
時空のコンパクト化
超弦理論・超重力理論のT-双対性
余次元2のブレーン
ブラックホール
微分幾何学
量子情報理論(勉強中)
etc.
Calabi-Yau空間
弦の伝搬と巻き付きの双対性
NS5-ブレーンのT-双対性によって
発現するT-fold