田舎の小さな村で、おじいさんと孫のタロウが一緒に暮らしていました。
二人にとって冬の雪だるま作りは楽しみで、大切な絆となっていました。
でも、おじいさんも歳を重ねてきて体調は年々悪くなる一方。
ある冬、もう外に出て雪だるまを作ることができなくなってしまいました。
次の年の夏。その年は例年になく暑い夏でした。
そんな夏のある日、タロウは村の老舗のお菓子屋さんの主人から、氷と塩を使えば雪だるまが作れるという話を聞きました。
それを聞いたタロウは思いつきました。
「おじいさんに雪だるまを見せれば、きっと喜んでくれるし、元気になってくれるはずだよ!」
タロウは何日もかけて、村のお菓子屋さんから雪だるまの作り方を詳しく教えてもらいました。
タロウはおじいさんには気づかれないようにこっそりと、教えてもらった方法で雪だるまを作り始めました。
大量の氷と塩を用意して、細かく砕いた氷に塩を混ぜて作業を進めます。
タロウの手は冷たさで赤く、痛くなりましたが、おじいさんの笑顔を思い浮かべて、彼は頑張り続けました。
遂に、タロウは小さな雪だるまを完成させ、慎重におじいさんの部屋に運びました。
おじいさんは、真夏の中の雪だるまに驚き、大笑いしました。
「タロウ!これはいったいどういうことだい!こんな暑い日に雪だるまだなんて!」
そして、タロウの愛情と努力に深く感動し、思わず涙を流しました。
けれども、その雪だるまはゆっくりと溶け始め、やがて完全に消えてしまいました。そして、その夜、おじいさんも静かに眠るようにこの世を去りました。
タロウは深く悲しみましたが、おじいさんが最後に見せてくれた笑顔と、共に過ごした時間の価値を心に刻みました。
その後、タロウは毎年真夏になると雪だるまを作り、おじいさんのことを思い出します。
そして大人になった彼は自分の子供たちにこの物語を語り、命の尊さ、愛情の深さ、そして思い出の価値を教えているのです。