女子高生のさくらは、ある日、SNSで猫の写真を見つけました。
友だちのいないさくらは、家でSNSに流れてくる写真を眺めているのを日課にしていたのです。
その日、SNSで見つけた猫は首にリボンがついていて、とてもかわいらしかったのです。さくらはその写真に「いいね」を押しました。すると、すぐにその写真を投稿した人からメッセージが届きました。
「『いいね』を押してくれてありがとう。私はあなたが『いいね』を押してくれた猫です。私は人間に変身できる特別な猫なんです。あなたが『いいね』を押してくれてとても嬉しかったです。私はあなたにお礼をしたいと思っています。あなたの願いを一つだけ叶えてあげましょう。何でも言ってください」
さくらはクスッと笑い、これが冗談だと思って、適当に答えました。
「じゃあ、友だちが欲しいです」
すると、猫は返事をしました。
「わかりました。明日からあなたは友だちがたくさんできますよ。でも、私が猫だということは誰にも言わないでくださいね。それが私とあなたの秘密です」
そして、猫はオンラインでさくらにキスの絵文字を送りました。
次の日、さくらが学校に行くと、驚いたことに、今まで無視していたクラスメートたちが声をかけてきたのです。彼女らはさくらに優しく接し、一緒に遊んだり勉強したりしました。さくらは初めて友だちの楽しさを知りました。
その後も、さくらは毎日学校で楽しく過ごしました。しかし、家に帰ると、相変わらず猫とオンラインで話すのを続けていました。
猫はさくらに甘えてきて、一緒にゲームをしたり動画を見たりしました。さくらは猫も大好きになりました。
しかし、ある日、さくらのクラスメートたちがさくらがスマホを見ているときに、さくらのスマホを覗き込んできたのです。
「あれ?さくらSNSもやってるんだー!うちらにもアカウント教えてよ!」
友だちは、さくらとSNSアカウントを交換すると、さくらが繋がっている猫のアカウントにも気づきました。
「えー!このアカウントの名前、猫だってー。ちょっとメッセージ送ってみても良い?」
さくらは困ってしまい、つい、
「だ、だめだよ。それ、本当の猫だから…」
と言ってしまったのです。
しかし、クラスメートは好奇心から猫にメッセージを送ってしまいました。
すると、そのクラスメートではなく、猫はさくらに人間の姿に変わった写真を送ってきました。
写真には
「私はあなたが『いいね』を押してくれた猫です。私はあなたにお礼をしたかっただけです。でも、あなたは私の秘密を守ってくれませんでした。私はもうあなたの願いを叶えることはできません。さようなら」
というメッセージが添えられていました。
そして、猫はアカウントを削除しました。
さくらはそのメッセージを見てポロポロと涙を流し、その場に座り込んでしまいました。
クラスメートたちは、さくらを変な目で見て
「何か、ごめんね。じゃーね」
と言って立ち去りました。
彼女らは次の日から、さくらを避けるようになり、もう以前のような友だちではなくなりました。さくらは猫を探しましたが、どこにも見つかりませんでした。さくらは猫との思い出に涙しました。
しばらくして、さくらは猫の気持ちを理解しました。彼女は友だちを得るために猫の力を借りたけれど、それが友情の本質ではないと気づいたのです。猫はさくらが本当の友情を見つけるためのきっかけを作ってくれた存在でした。
「ごめんなさい、猫さん。私はあなたが大切な友達だったと気付きました。もう一度あなたに会いたいですが、それよりも大切なのは、本当の友情を築くこと。ありがとう、猫さん」とさくらは心の中でつぶやきました。
さくらはこれから、本当の友情を大切にし、自分自身を大切にすることを決意しました。
ある日…
一人のクラスメートが、また、さくらに声をかけてきました。
「ねえ、もし良かったら一緒にお弁当食べない?」
さくらは新しい友だちを見つけ、より豊かな日々を送ることができるようになりました。
(了)