締め切り間近になっても仕事が終わらず、やむを得ず徹夜で仕事をし、なんとかやり遂げた後、今度こそ早めに仕事を始めるんだと誓ったが、次も同じ失敗の繰り返しになってしまう。こんな経験がある人は少なくないだろう。実は私も昔よく仕事を先延ばしにしてしまい、同じ失敗を繰り返していた。こんな私が最近ある本との出会いで人生を変えることができた気がする。
先延ばし癖があると自覚していた私はたくさんの先延ばし対策や、時間管理術などの方法を探していた。仕事を小さいステップに分けることや、毎日のやることをリスト化するなど、よくある対策をいろいろ試したことがあった。それでもあまり改善できず、毎回期限間近になった時に徹夜をしてしまうことが続いていた。そこで、先輩のおすすめで「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」という本を読んで、ずっと何かに追いかけられていた人生の過ごし方が変わったと感じた。
「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」はマイクロソフトでWindows95の開発をしていた中島聡さんが書いた本である。彼は自分自身の経験から⽣み出した「ロケットスタート時間術」を紹介していた。「ロケットスタート時間術」のやり方を一言で表すなら、「期限まで最初の二割の時間で全体像を把握できるように八割の仕事を終わらせてみる」ということである。最初二割の時間は見積もりの時間でもある。もしその二割の時間で六割の仕事すらできなかったら、スケジュールを見直す必要があると考えられる。
一見すると、単なる「とにかく早く仕事やれ」というごく普通な方法だと思われるかもしれない。実はこの方法の実践によってできることは「仕事が早くなる」ことではなく、「心の余裕を生み出す」ことなのだ。自分の考えだが、「最初二割の時間で八割の仕事を終わらせる」を逆に言えば、「頑張って二日でできることを十日でやる」や、「一日のやるべきことは集中して二時間でできることだけにする」とも言える。こんな言い方をすると「サボってるじゃないか」と思われるかもしれない。しかし、実際には残り八割の時間はサボる時間ではなく、仕事の完成度を高めることや、予想外に発生したことの対応、次の仕事の準備、急ぎではないが本当にやりたかったことなどをする時間である。それで、やりたいこととやるべきことの両方を効率よく行うことができ、さらには締め切りを守って終わらせることができるようになる。
この本を読んだ後によく考えれば、昔の自分はよく「よし、頑張るぞ」と心を入れ替え、たくさんのやることをスケジュールに入れ込んでいた。しかし、完璧を求めてしまい、細かいことに気になりがちな自分はそもそも仕事が遅い。結局毎日やることが終わらないまま、もやもやとした気持ちで床に就いていた。その翌日も終わらなかったことをやるか、もともとスケジュールに入れたことをやるかを決められず、効率が悪くなり、さらに仕事が終わらない悪循環になっていた。そのあげく、「やることは永遠に終わらないんだ」という気持ちになったり、やる気や自信をなくしたりして、つらい経験をしていた。そこで、「ロケットスタート時間術」の実践によって「仕事は必ず完成できる」という心の余裕を持つようになった。それだけで、毎朝目を覚ました時に気持ち良く一日を始められ、日々の過ごし方が全く違うものになったと感じた。
「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」にはほかにもさまざまな「ロケットスタート時間術」を実践するためのコツや心がけが書いてある。今回は紙幅の都合上、全部を紹介することはできないが、今人生の過ごし方を変えたい方はぜひこの本を読んでみてほしい。