補助事業番号 2025MC1202-010
補助事業名 2025年度 海外で開催される国際会議等で研究発表を行う大学院生の研究交流活動
補助事業
補助事業者名 金沢大学 自然科学研究科 高分子材料物性研究室 比江嶋 祐介
1 海外渡航者
金沢大学 大学院自然科学研究科 フロンティア工学専攻 森山 遼馬
2 会議内容
(1)会議名
2nd JSME International Conference on Materials & Processing, ICM&P2025
(2)開催地(国名/都市名)
アメリカ合衆国/グアム
(3)開催時期
2025年11月03日 ~ 2025年11月06日
(4)概要
本研究集会は、日本機械学会が主催する、非常に権威のある国際的な学術会議であり、先進材料および加工技術に関する工学分野を中心に、幅広い研究領域を対象としている。また、研究者・技術者・学生間の国際的な交流を促進するとともに、共同研究の推進および技術移転の活性化を目的として開催されており、その敷居の高さと人気の高さから、国内外の多くの専門家が参加する。本会議の特徴の一つは、衝撃工学や材料力学に精通した専門家が多数集結することであり、近年では特に高分子材料の衝撃応答や高速変形挙動といったテーマに関しても活発な議論が行われている点が挙げられる。これは、従来の機械材料・加工技術の枠を超えて、化学、物理、材料、といった異分野融合が強く求められる現代のものづくりに対応するものである。そもそも本会議は、機械材料や材料加工分野に限らず、より広義の機械工学・製造工学の研究者が交流・連携を図ることを目的として設立された経緯を持っており、分野横断的な申請者の研究発表を行うのに最適な学術会議である
(5)発表形式 ポスター
(6)研究テーマと発表内容
私の研究テーマは、結晶性高分子の力学応答におけるひずみ速度依存性である。結晶性高分子は軽量かつ高強度であるという特性からインフラ素材や自動車部材に多く用いられているが、その力学応答は変形速度であるひずみ速度に強く依存することが知られている。そこで本研究では、代表的な結晶性高分子である高密度ポリエチレンを用い、日常利用に相当する低ひずみ速度から衝撃に相当する高ひずみ速度まで、8桁に及ぶ幅広いひずみ速度域で圧縮試験を行い、圧縮変形における変形機構の違いについて考察した。本学会では高分子材料を専門に扱う参加者が少なかったことから、まず「高分子材料にも金属のような降伏点が存在するのか」という基礎的な質問を受けた。これに対して、結晶性高分子では変形初期に球晶の破砕が生じ、その後塑性変形へ移行するため、金属同様に降伏挙動が存在することを説明した。また、衝撃試験で用いたスプリットホプキンソン棒法について、「金属材料の試験法を高分子材料ではどのように適用しているのか」という質問があり、高分子材料では金属よりも大変形して波形が長時間化するため、ひずみゲージの貼り方や打撃棒の長さを調整して対応していることを伝えた。さらに「引張試験と圧縮試験では何が異なるのか」という問いに対しては、引張ではラメラの再配列やボイド形成が生じるのに対し、圧縮ではそれらが生じないことを説明した。また、非晶性高分子複合材料を扱っている学生からは非晶の特性について質問があり、水分を吸収しやすいことや、明確な分子量依存性が見えにくいことを回答した。
(7)参加した成果
私が普段参加している学会では、複合材料や金属材料を主対象とした研究に触れる機会はこれまで多くなかった。しかし、本学会では航空機や自動車、スポーツ用品などに広く利用されているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)に関する研究が数多く発表されており、非常に印象的であった。中でも、実際の使用環境を想定した研究が多く、航空機において想定される落雷を人工的に再現し、雷撃を受けた際の力学応答や損傷挙動を評価する研究や、噴石衝突から人や構造物を守ることを目的とした屋根構造の研究など、自分たちの生活や安全に直結するテーマが多く扱われていた点が特に印象に残った。また、低温や高温といった極限環境下での材料試験に関する発表も多く、温度条件が力学特性や破壊挙動に及ぼす影響を詳細に考察している点は、高分子材料を扱う自分の研究とも強く関連していると感じた。高分子材料においても、温度やひずみ速度は力学応答を大きく左右する重要な因子であり、これらの研究から得られる考え方や解析手法は、自身の研究分野にも応用可能であると考えられる。さらに、力学試験に対するシミュレーション手法、特に有限要素法(FEM)を用いた解析に関する研究は、局所的な応力やひずみの集中、損傷の進展過程を可視化できる点で非常に有効であり、衝撃試験や高速変形を扱っている自分にとって極めて重要な手法であると感じた。実験のみでは捉えきれない内部応力状態や変形挙動を、シミュレーションと組み合わせて理解することの重要性を改めて認識した。現在、FEMをはじめとした力学シミュレーションについては自主的に学習を進めており、今後は実験結果と数値解析を結び付けることで、より深い変形メカニズムの理解につなげたいと考えている。本学会で得られた知見は、自身の研究を多角的に発展させるうえで非常に有益であり、今後の研究活動に積極的に取り入れていきたい。