研究会の概要

安心信頼技術研究会」は科学技術における安心と信頼(trust)についての研究会です。

この研究会では科学技術において、


・信頼(trust)とは何か

・安心をどう規定しているのか

・なぜそれが問題になるのか


といった点について研究しています。信頼に関心を持つさまざまな分野の研究者が集まる研究会やワークショップを開催しています。


本研究会は以下のような研究助成を受けています。

○2019年-2020年:サントリー文化財団「学問の未来を拓く」「不信学の創成 ―― 『健全な不信』の実現を目指して」(研究代表者:稲岡大志)

研究の目的

現代社会では、医療不信、食料品への不信、年金不信、学校不信、政治不信など、さまざまな不信が生じている。社会制度や科学技術の複雑さに対応するかたちで、私たちが抱く不信も複雑かつ多様である。また、すべてのかたちの不信が克服されるべきものだと単純に言えるわけではなく、市民リテラシーとして持つことが望ましいタイプの「健全な不信」も存在する。さらに、信頼感の反対が不信感であるとも言い難い。個々の学問分野では、そういった不信現象を分析し、対応策を講じる試みが行われているが、そもそもすべての不信は同種の要因で起こるのか、あらゆる不信に同種の対応が適切なのかといった問題は、個別分野の知見を用いるだけでは解明が難しく、事実的探求や規範的探求といった、哲学的アプローチや学際的アプローチが必要である。「不信」という現象が多様であるのにあわせて、各分野で用いられる「不信」概念も多様である。それらを総合して、「不信学」を創成することは、現代のような高度情報化社会において、フェイクニュースやヘイトスピーチなどによって引き起こされるマイノリティへの不信など、市民社会にとって「不健全」かつ危険な不信が生じている現状を考えても、社会的急務である。そこで本研究では、本研究グループのメンバーが2014年に設立した安心信頼技術研究会において構築した学際研究のプラットフォームを発展的に活用し、分野ごとに多様な不信現象の分析を行い、多様な対象への不信とともに今後生じるかが不確実な対象への不信現象をも包括的に捉えることができる不信学の創成を目指す。


○2015年-2017年:サントリー文化財団「人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成」「信頼研究の学際化を目指したプラットフォームの構築 ─ 応用哲学的アプローチによる異分野間の方法論の総合 ─」(研究代表者:小山虎)

研究の目的

人と人との信頼関係(trust)は人間の社会生活、倫理の基盤であり、哲学・倫理学だけでなく、心理学や経済学といった多様な人文・社会科学分野でも研究されている。また、情報メディアや機械への信頼はメディアや機械の使用の条件であり、デジタル化が進む現代社会では重要となるため、情報科学やロボット工学などの理系分野でも研究が進んでいる。しかし、個々の研究で焦点が当てられているのは信頼が持つ多様な側面の一部に限られており、他分野の研究が参照されることも極めて少ないため、他分野で得られた知見を活用する体制を整えることが急務となっている。そこで本研究では、他分野との連携に意欲と実績を有する応用哲学者が核となり、信頼が関わる様々な分野の研究者を集めた研究交流を積極的に実施すると共に、異分野間の方法論の総合について哲学的観点から研究することにより、信頼研究を学際化するためのプラットフォームを構築する。