パワーデバイス
目的
低炭素社会実現に不可欠な技術がパワーデバイスです。ハイブリッド自動車の直流交流変換や、家電や太陽光発電の電圧変換にパワーデバイスが用いられており、機器動作時にどうしても電力損失が発生します。現在使われている多くのパワーデバイスには、シリコン(Si)が使われていますが、ワイドギャップ半導体を使うことで、損失の低減(省エネ化)が可能となります。炭化ケイ素(SiC)を用いたパワーデバイスが、数k Vの中耐圧における高効率素子として実用化が進められていますが、10 kV程度の高耐圧デバイスは未確立です。
本プロジェクトの目的は、10 kVでの実用的な高耐圧デバイスを作製し、モジュール化まで実現することです。
パワー半導体の応用例
研究計画
一般的に、バンドギャップエネルギー(Eg)が大きい材料程、絶縁破壊電界強度が大きくなり、大きな電圧をかけても壊れ難くなる傾向にあります。ベータ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)は、Eg(=~4.7 eV)が大きく、溶液成長により低価格で大面積試料が入手可能な半導体材料です。また、窒化アルミニウム(AlN)は、現在、最もEg(= 6.1 eV)の大きい半導体の一つです。
私たちは、2018年にAlNをチャネルとしたトランジスタを、2019年にN面AlNをベースとした分極トランジスタを世界に先駆けて動作させることに成功しています。 更なる高耐圧化を目指して、現在、縦型AlN JBSダイオードの作製に取り組んでいます。
また、2019年に400 V耐圧で0.9 mΩcm2のオン抵抗を持つGa2O3ダイオードを作製しました。現在は、Ga2O3 FinFETやGa2O3パワーモジュールの作製を進めています。
縦型AlN JBSダイオードとPNダイオード
成果・予算
2024/03/04 "High-temperature and high-power devices using AlN", ISPlasma2024, Mar. 2024. (招待講演)
2023/10/05 "Electrical properties of vertical Cu2O/β-Ga2O3 (001) p–n diodes", AIP Advances 13, 105306 (2023).
2023/4 日本学術振興会/基盤研究(B) 「縦型窒化アルミニウム素子の作製技術の確立」
2023/02/02 "Mg implantation into AlN layers grown on sapphire substrates", JJAP 62, 020901 (2023).
2021/4 日本学術振興会/基盤研究(B) (分担)「III族窒化物半導体のイオン注入不純物活性化機構の解明と点欠陥制御」
2019/12/14 "AlN結晶へのイオン注入", 第162委員会 第116回研究会 (招待講演)
2019/07/19 "窒化アルミニウムおよび酸化ガリウムの結晶成長からトランジスタ作製まで", 第3回エネルギーマネージメント・材料デバイス技術分科会 (招待講演)
2019/10/21 "Dry and wet etching for β-Ga2O3 Schottky barrier diodes with mesa termination", JJAP 58, 120902 (2019).
2019/06/19 "N-polar polarization-doped FET based on AlGaN/AlN", IEEE EDL 40, 1245 (2019).
2019/4 日本学術振興会/基盤研究(B) 「超高耐圧素子実現に向けた窒化アルミニウム素子作製の技術基盤の構築 」
2018/03/06 "AlN metal–semiconductor field-effect transistors using Si-ion implantation", JJAP 57, 04FR11 (2018).
2017/4 日本学術振興会/若手研究(B) 「窒素極性面AlNの接触抵抗低減と分極効果トランジスタの実現」