現在、半導体と絶縁体の境界は明確化されていません。本プロジェクトでは、最大のバンドギャップエネルギー(Eg)を持つ半導体の結晶成長を行い、その光・電気的特性を評価しています。最大のEgを持つ 半導体材料を見出すことは、半導体デバイス動作が可能な厳環境 (高電圧・高温・高放射線 )の限界を知ることに繋がります 。
ワイドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)結晶は、高温高圧下で作製するため高価格です。一方、サファイアと呼ばれる酸化アルミニウム(α-Al2O3)結晶は、溶液成長可能で、青色LED用基板としても使われており、既に大面積かつ低価格化が進んでいます。しかし、サファイアは絶縁体として知られており、室温で電気を流した報告はありませんでした。私たちは、2022年に世界で初めてAl2O3単結晶に室温でmA台の電流(166 Ωcm)を流すことに成功しています。
また、Al2O3や酸化ガリウム(Ga2O3)をベースとした(AlGa)2O3の結晶成長を、分子線エピタキシ(MBE)装置と有機金属気相成長(MOCVD)装置の両方を用いて行っています。(AlGa)2O3結晶は、α, β, γ, κなどの様々な結晶構造を持ち、それぞれ特性が異なります。準安定構造を意図的に作り、新たな物性探索も行っています。
2025/4/24 "Strain relaxation of α-(AlGa)2O3 on sapphire", Adv. Mater. Interfaces 2025, 2500136.
2024/7/23 "MOCVD growth of Si-doped α-(AlGa)2O3", JJAP 63, 075502(2024). spotlight. Highlight of 2024.
2024/6 NEDO「β型酸化ガリウムの結晶成長」
2024/4/12 "Si doped α-(AlGa)2O3 growth on a-, m- and r-plane α-Al2O3 by MBE", JJAP 63, 055502(2024).
2023/9/11 「サファイア半導体を実現か!?酸化アルミニウムの電気伝導に世界で初めて成功」応用物理学会注目講演
2023/6/20 "Pseudomorphic growth of Si-doped α-(AlGa)2O3 by MBE", JJAP 62, 065504 (2023). notebookLMによる本論文の日本語解説はコチラ
2022/11/29 "Sn and Si doping of α-Al2O3 (10-10) layers grown by PAMBE", JJAP 61, 125505(2022).
2021/10/14 特開2023-058917『半導体、トランジスタおよび半導体の製造方法 』
2021/8/29 "Optical and electrical properties of Si-implanted α-Al2O3", JJAP 60, 106502 (2021).
2019/9 NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050「酸化アルミニウムを用いた低価格パワーデバイス」