多くの電子機器に使われているSi素子は、300℃以下でしか動作できません。最近、金星探査機、次世代地熱発電による深層掘削、消防用ドローン、スペースシャトルやジェットエンジン周辺部品など、300℃を越える環境での半導体素子の需要が増えてきています。本プロジェクトの目的は、1000℃でも動作可能な高温半導体回路を実現することです。
高温・高耐圧デバイスの応用例
バンドギャップエネルギー(Eg)の大きい材料は、高温環境でもキャリアの励起が少なく、Off時の漏れ電流を低く抑えることができます。高温素子用材料として、Egが大きく、p型とn型の両方利用可能な材料である窒化アルミニウム(AlN)が非常に魅力的です。また、酸化膜を用いたり、ゲート電極によるチャネル幅制御にショットキー接合を用いたりすると、高温時に漏れ電流が大きくなることから、PN接合を使うのが好ましいです。PN接合を使ったAlN素子の中でも、接合型電界効果トランジスタ(JFET)は、p型とn型チャネルの利用が可能なことから回路としても使えます。これらのことから、AlN JFETは、高温耐性に最も優れた材料と素子の組み合わせと言えます。
私たちは、2023年に1100K (827℃)の世界最高温度でのショットキ障壁ダイオード(SBD)の動作を実現しています。現在、AlNを使って、超高温環境で動作可能なJFETおよび相補型集積回路の作製に取り組んでいます。
高効率AlN回路を使うことによって、600℃以上の高温環境においても、電子機器のエネルギー損失を半減できると期待できます。これは電力損失としては3%程度の低減になります。冷却システムも不要になることから、総じて10%以上のCO2排出量を低減することが見込まれます。
2025/01/29 ARIM秀でた利用成果優秀賞「窒化アルミニウムを用いた高温デバイスの作製」
2023/08/09 「800度でも動きます!半導体素子の耐熱性の限界に挑戦」筑波大学ポッドキャスト
2023/06/30 「800℃を超える高温環境で利用可能な半導体素子を開発」Tsukuba Journal
2023/06/26 "Temperature dependence of electrical characteristics of Si-implanted AlN layers", APEX 16, 064005 (2023).
2022/02/08 "Impurity diffusion in ion implanted AlN layers by thermal annealing", JJAP 61, 026501 (2022).
2018/03/06 "AlN MESFETs using Si implantation", JJAP 57, 04FR11 (2018).