多くの電子機器に使われているSi素子は、300℃以下でしか動作できません。最近、自動車の高速走行時における回生ブレーキや金星探査機、次世代地熱発電による深層掘削など、300℃を越える環境での半導体素子の需要が増えてきています。本プロジェクトの目的は、1000℃でも動作可能な高温半導体回路を実現することです。
高温・高耐圧デバイスの応用例
バンドギャップエネルギー(Eg)の大きい材料は、高温環境でも電子正孔対の生成が少なく、Off時の漏れ電流を低く抑えることができます。高温素子用材料として、Egが大きく、p型とn型の両方利用可能な材料である窒化アルミニウム(AlN)が非常に魅力的です。また、酸化膜を用いたり、ゲート電極下の空乏層幅制御にショットキー接合を用いたりすると、高温時に漏れ電流が大きくなることから、PN接合を使うのが好ましいです。PN接合を使ったAlN素子の中でも、接合型電界効果トランジスタ(JFET)は、p型とn型チャネルの利用が可能なことから回路としても使えます。これらのことから、AlN JFETは、高温耐性に最も優れた材料と素子の組み合わせと言えます。
私たちは、2018年にAlNをチャネルとした電界効果トランジスタ(MESFET)を世界に先駆けて動作させることに成功し、2023年に1100K (827℃)でのショットキ障壁ダイオード(SBD)の動作を確認しています。現在、AlN JFETを使って、超高温環境で動作可能な素子および相補型集積回路の作製に取り組んでいます。
2023/08/09 「800度でも動きます!半導体素子の耐熱性の限界に挑戦」筑波大学ポッドキャスト
2023/06/30 「800℃を超える高温環境で利用可能な半導体素子を開発」Tsukuba Journal
2023/06/26 "Temperature dependence of electrical characteristics of Si-implanted AlN layers", APEX 16, 064005 (2023).
2022/02/08 "Impurity diffusion in ion implanted AlN layers by thermal annealing", JJAP 61, 026501 (2022).
2018/03/06 "AlN MESFETs using Si implantation", JJAP 57, 04FR11 (2018).