雑記3: 研究室名
2024年4月。
長年の目標であった、自らの研究室を持つ機会に恵まれた。
夢だったはずなのに、いざ始まってみると、何をどうすればよいのか分からないことだらけだった。
これまで私は、研究室のセットアップが大変だと言ってどこか嬉しくなさそうな表情をしているPIを見ては、「イキってはりますな(京都弁)」と思っていた。しかし、いざ自分がその立場になると、気づけば同じようなことを口にしている自分がいた。
もっとも、私は基本的にいつもヘラヘラして大声で話しているので、周囲からはむしろ嬉しそうに見えていたと思うが。
その「やること」の1つが、研究室名を決めることだった。
赴任前、「研究室名は決めておいた方がよい」とコース長から助言を受け、理研のM君(通称: とうだい)に色々と相談に乗ってもらってあれこれ考えたものの、これといった案は浮かばなかった。これまで所属してきた研究室 (吉里研究室(広島大学)、矢尾板研究室(広島大学両生類研究施設)、YunBo研究室(NIH)、Yoo研究室(理研))も正式名称ではなくPIの名前で呼ぶことがほとんどで、正直なところ、あまり記憶に残っていない。いざ自分が名付ける立場になると、その難しさを痛感することになった。
まず、前ボスである理研の「動的恒常性研究室」とは被らないように気をつけつつ、同じコース内の研究室名も見てみた。
八木先生の「分子機械学研究室」はシンプルで格好良く、こういう名前にしたいと思った。
他にも調べたら、過去に広島大学時代の同級生が在籍しいていた、心生物学研究室(八木研究室、大阪大学)や細胞建築研究室(木村研究室、遺伝研)のネーミングがかっこいい。だが、いざ自分で考えるとなると、なかなか良い案が思いつかない。
そこで、キーワードから考えることにした。
私の現在の主な研究テーマは「ショウジョウバエ」「ストレス」「がん悪液質」である。
また、これまでカエルの変態に着目した研究を長く続けてきたこともあり、将来的には再び取り組みたいと考えている。
そこで、「カエル」と「変態」というキーワードも加えてみた。
ただ、私が考えてもまとまらないため、困った末にAIに「上のキーワードから連想される研究室名を考えてください」と依頼した。
出てきた回答は「変態生態系制御研究室」「変態がん予防研究室」といった、なかなかに尖った案が提示された。
どうやらAIは「変態」というパワーワードに強く惹かれるらしい(そもそも、変態生態系とはなんなのか。)
カッコ悪いから、さらに「おしゃれに」とお願いすると「リラックス・リユース・リヴァイブ 研究室」という、方向性が迷子な提案にたどり着いた。日本語にしたら「癒し・再利用・復活研究室」である。
これはいかん、と我に返り、3日くらいかけてようやく現在の「生体ストレス解析研究室」に落ち着いた。
正直に言えば、今でも満足していないが、命名から2年経った今でもこれより良い研究室名が思いつかない。
最近AIに改めて聞いてみたところ、「変わりゆく身体の研究室」という、やけに洗練された名前を提示され、少しだけ心が揺れている。
これから研究室を主宰しようとする方には、ぜひ早い段階から考えておくことをおすすめしたい。
雑記2: 論文執筆のスタイル
最近、論文にまとめなければならない案件があり、少しづつ書き始めている。
「論文は書けば書くほど速くなる」―そんな言葉をどこかで聞いた気がするのだが、最近めっきり書いていなかったせいか、どうにも筆が重い。いや重いどころか、ほぼ静止している。
「これではいかん」というわけで、「できる人はどう書いているのか」を調べることにした。
すると、偶然にも良さそうな記事を発見した。
東京大学医科学研究所の佐藤佳教授による連載「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常の中の一編、私の論文執筆スタイルが生まれるまでである。私は佐藤教授とは面識はないが、「とにかく速筆で論文数が半端ない」という噂はかねがね聞いていたので、これは参考になるに違いないと思った。
(余談であるが、佐藤研究室に在籍されていた山岨博士(面白いキャリアパスを歩まれ、神戸大学医学部の学部生にも関わらず、CellやNatureを連発されていた超人)とは1回飲みでご一緒して楽しかった記憶があるので、岡田は佐藤博士には勝手に親近感がある。この記事を書くにあたって山岨博士はどうされているのかなと思って調べると、文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞されていた、おめでとうございます。)
さて、本題の執筆スタイルだが、具体的な執筆方法は記事を参照していただきたい。
私は典型的な「型から入るタイプ」である(趣味の卓球でも、当時の最強プレイヤーのスウェーデンのワルドナー(Jan-Ove Waldner)と同じJOワルドナーというラバーを使って満足していた過去がある)ため、惹かれた佐藤博士の執筆の型は以下のようなやり方だ。
1. まず夜に自宅で、酒(発泡酒)を飲みながら、そしてチェーンスモーキングをしながら、文法などは度外視してとにかく筆を進める。
2. 酒に酔いつつ、音楽をがんがんかけながら無心に筆を進める。
3. 酩酊して筆が止まるか、タバコがなくなるか、睡魔が襲ってくるまでとにかく書き続ける。ある程度酒が回っていると、細かなところがどうでもよくなり、筆の滑りもよくなる。
4. シラフの昼間に校正、昼夜でひとり二役、である。
なぜか分からないが、できる気しかしない。というわけで実践してみた。
開始10分後 書き始めが早い、やる気に満ち溢れている。驚くほど順調。
開始20分後 書く時間より、飲んだり食べてる時間の方が多い気がしてきた。
開始30分後 眠い。ある程度酒が回っていると、細かなところがどうでもよくなるが、論文執筆自体もどうでもよくなってきた。
開始40分後 執筆終了。
翌日 全然進んでいないことに愕然。
敗因はいくつか考えられる。
敗因の可能性その1: 酒に強くはないので、そもそもこのスタイルは合っていない。
敗因の可能性その2: その日、疲れて喉が渇いていたので、飲むペースを完全にミスった。
敗因の可能性その3: 佐藤博士の「チェーンスモーキングをしながら」というフレーズに過剰に反応してしまった。スモーキングをしない私は、大人の雰囲気を醸し出すために普段飲み慣れているルービー(ビール)ではなく、背伸びして、気持ち的におしゃれなサントリー の角ハイボール<濃いめ>に手を出した(これが致命傷の可能性が高い)
今後は、対照実験として、岡田の主飲のビールを試す必要があるだろう。
また、つまみや音楽といった条件設定も曖昧だったため、実はこのあたりの最適化が成功の鍵を握っている可能性も否定できない。
ひとまずは煩悩を断ち、アルコールを控え、地道に執筆する、という、最も再現性の高そうな方法に立ち返ることにする。
雑記1: HP開設の想い
井川博士(広島大学)の「雑記」が私の研究室内で好評だったため、それに触発されて、「自分も少し書いてみようかな」と思い、筆を取ることにした。
このたび、HPを開設することにした。
振り返ると、これまでいろんな研究室のHPを見てきた。
学生の頃には、中山敬一先生のHPを見て、「研究者ってこんなに厳しい世界なのか」と衝撃を受けて、気を引き締めた記憶がある (東京科学大学に異動されてからも情熱がすごい)。大学院進学を考える際には、さまざまな研究室のHPを見て進路を模索しましたし、研究室を立ち上げる際にも、何か参考になる情報はないかとあちこちのHPを探した。
ちなみに、完全に余談であるが、一時期「世界で一番大きい研究室はどこか?」を調べるために、いろんな研究室HPを巡っては人数を数える、というあまり生産的でないことをしていた。現時点では「たぶんここだろう」という候補はあるが、別の研究室の追い上げも激しく、真相は不明である。
そんな経験もあり、「いつかは自分もHPを作らなければ」と思っていた。実は、県立広島大学に赴任した当初からその必要性は感じていたのだが、研究室の立ち上げと授業対応に追われ、「2025年からやろう」と先送りに。ところが2025年になると今度は雑務が増え、「やはり2026年からにしよう」とさらに先送り。そして2026年には卒論指導に追われ、「もう2027年からでいいか」と、半ば恒例のように延期し続けていた。そんな中、同じキャンパスの先生方(八木先生、齋藤先生、菅先生、金岡先生、山下先生、米村先生、馬渕先生)が、それぞれ独自の研究室HPを持ち、しかも定期的に更新されていることを知った。「偉い先生方がやっているなら、言い訳はできないな」と思い直し、ようやく重い腰を上げて、まずは素材集めから始めた次第である。
HPを作るにあたって、いくつか悩んだ点がある。
まず1つ目は、「誰に向けて発信するのか?」ということである。
所属している生命科学コースでは、日常の様子はInstagramで定期的に発信していく方針がある。
そこで、研究室のHPは「Instagramを見ない人」にも届く場として位置づけることにした。
内容としては重なる部分もあると思うが、HPではより研究に軸足を置いた発信をしていこうと考えている。
2つ目は、「学生の個人情報をどこまで掲載するか?」という問題である。
コンプライアンスが厳しくなる中で、顔写真を掲載すべきかどうかは正直かなり悩んだ。
「研究室HPマニア」のように(もちろん研究もしているが)、さまざまな研究室のHPを見て回ったが、体感としては掲載しているところとそうでないところがほぼ半々という印象であった。
そして興味深いことに、有名な研究室ほど顔写真をしっかり掲載している傾向も見られた。
ただ、何より、写真がある方が見ていてHPとして圧倒的に面白い。
そのため、弱小研究室ではありますが、無理のない範囲で学生に写真掲載をお願いすることにした。
実際に集まった写真を見ていると、それぞれに個性が出ていて、なかなか楽しい。
3つ目は、「そもそもどうやってHPを作るのか?」という問題である。
個人的には、佐藤研究室(東京科学大学)、谷内江研究室(UBC/大阪大学)、倉谷研究室(旧理研)のような、洗練されたおしゃれなHPに憧れがあった。しかし、いざ自分で作るとなるとハードルは高く、なかなか手が出せずにいた。
そんな中、共同研究者の西村隆史博士(群馬大学)からGoogle Sitesを勧めていただき、一気に悩みが解消し、形にするところまではいった。そのため、現在の研究室HPは西村研の影響を大いに受けている。
とはいえ、これはあくまでスタート地点、これから少しずつ手を加えながら、自分らしい色を出していければと思っている。