2026年1月3日、上智大学名誉教授・石井紀子先生がご逝去されました。先生は、戦間期から近現代にかけての日米関係史、アメリカ社会史、そしてアメリカ女性史を中心に研究を重ねてこられた歴史学者でした。とりわけ、アメリカ人女性宣教師と日本人女性キリスト教徒、さらに女子教育機関を舞台とする日米間の文化交流を歴史的に分析し、日米関係史と女性史の双方に重要な貢献を残されました。先生の培われた知識と思索は、多くの学生や研究者に影響を与え続けています。
上智大学外国語学部教授としての長年の研究において、先生はアメリカ史・女性史・キリスト教を基盤とする文化的ネットワークに注目し、アメリカ人女性宣教師と日本人女性との相互関係を豊富な史料に基づいて解明されました。そこでは、宣教師活動を単なる文化的影響の一方向的な伝達としてではなく、地域社会の人々との相互作用のなかで形成された歴史的過程として捉え直す視点が示されています。また近年は、宣教機関をめぐる「コスモポリタニズム(世界市民主義)」という概念を手がかりに、国際主義、帝国主義、ジェンダーが交錯する近代東アジアの歴史を新たな視角から問い直す研究にも取り組まれていました。
さらに先生は、20世紀アメリカを中心とした「法―文化圏」の形成と変容をめぐる研究プロジェクトを科研費研究代表者として主導するなど、比較文化史の分野にも独自の貢献を残されました。
こうした研究成果は専門書や論文にとどまらず、教育の現場においても大きな意味を持っていました。先生が指導されたゼミでは、学生自身の視点から大学の歴史や社会の変化を読み解く試みが数多く生まれ、卒業論文発表会や共同プロジェクトを通して、歴史を主体的に考える学びの場が築かれてきました。
石井先生の研究や授業、講演、執筆活動に触れた多くの人々が、「先生の問いかけや思考はこれからも語り継がれるべきものだ」と感じています。そこで本サイトでは、先生の残された資料や研究成果、学生へのメッセージや講義ノートなどを、日本におけるアメリカ研究史の一部として一つの場所にまとめ、将来へと伝えていくことを目的としています。
石井紀子先生のご逝去はあまりに突然であり、本サイトは、残された資料および研究実績をもとに、専門外の者が手探りでまとめたものです。不備や至らぬ点があることをご寛恕ください。今後、本分野の専門家の方々によって研究が継承され、さらに発展していくことを心より願っています。