本エッセー集は、外国語学部北米研究コースの石井紀子ゼミ(Seminar (North American History)1,2)の学生が2022年度から3年計画で進めている学生による「英語学科の歴史」のエッセー集である。英語学科には2001年1月に松尾一之教授(現在名誉教授)の指導の下、英作文の授業の一環として学生たちが上智と英語学科の歴史を英文で執筆し、「The Story of Us —— Of Creation and Development of Sophia U. And the Eng. Lang. Dept. 私たちの物語——上智と英語学科の歩み」というタイトルでまとめた冊子がある。本プロジェクトは、その続編として、21世紀の英語学科の歩みを学生たちが書く企画としてスタートした。
その構想を温めていたところ、2020年3月下旬よりコロナ禍という全世界の移動を止める世界的パンデミックが起こり、上智大学においても、それまでの授業形態、学生生活を急遽変更し、状況に応じて可能な授業運営、学生生活を模索する日々が始まった。石井もちょうどボストンでのサバティカルから帰国し、2020年4月から2年間学科長職に就き、学生さん、教職員のご協力の下、学科運営を担っていくこととなった。いつ終わるかわからない緊急事態だったが、上智大学では、結局、2020年度は入学式を2021年3月まで延期、授業開始も5月28日まで延期し、全面的なオンライン授業を開始し、学生たちの入構を禁止した。2021年度は3月末、4月と2020年度入学生、2021年度入学生の入学式を実施し、4月より念願の対面(ハイブリッド)授業を開始したが、5月の連休明けから再びオンライン授業へ転じ、対面(ハイブリッド)授業を再開できたのは、11月のソフィア祭が終わってからであった。卒業式も2020年度は、10号館講堂で四カ所に分かれて、教員が卒業生に学位記を手渡しするにとどまったが、2021年度の卒業式から6号館101室のホールでの卒業式が部分的に再開された。ほぼコロナ禍前の授業形態が復活したのは2022年度からであるが、入構制限が全面的に解除され、メンストでの全面的なフレマンが再開したのは、2023年度4月からである。
本エッセー集にあるように、英語学科の学生にとって重要な海外留学や夏休みに地方の中学生に英語を教えに行くSTP(Summer Teaching Program)の活動も大きな変更を余儀なくされた。また上智大学の長年の伝統であった一泊二日で箱根に行く新入生のオリエンテーション・キャンプも結果的に廃止となり、2022年度からはSOD(ソフィア・オリエンテーション・デー)と名称も変更され、キャンパスで学生ヘルパーと教員が新入生のオリエンテーションを行うプログラムへと変わった。ここで、当時の学科長として、特筆したいのは、中止となってしまった上智大学の交換留学を、外務省の安全渡航レベルが1であっても、何とかできるように、「特例措置」という制度を教職員とともに編み出し、突破口を作り出そうとイニシアチブをとって実現させたのが、英語学科の学生であったことである。その結果、全国の他大学に先駆けて、上智大学では「特例措置」を実施し、英語学科からは、2021年度秋学期に36名、交換留学に出かけていく学生たちを送り出すことができた。(表1)また石井は学科長として、留学先でコロナ禍による空港閉鎖等が起きる中、信用できる情報を収集し、冷静、的確な判断を行って無事帰国した学生たちの、確かな判断力と逞しさから多くの勇気をもらった。
以下が学生たちの体験記である。学生たち自ら、授業、STP、留学という三本柱を立て、三つのグループに分かれて記述している。コロナ禍をたくましく生き抜いた英語学科の歴史としてここにまとめる。また本プロジェクトの完成年度となった2024年度は、ポスト・コロナの学生生活を送っているゼミ生が授業、入試制度や英語学科および全学レベルの課外活動について加筆した。英語学科の卒業生でもある石井が2024年度末で定年を迎えるにあたり、自らの体験談も踏まえて男女別クラスのあった英語学科の歴史をジェンダー・バランスの変遷の視点からまとめたエッセーも加筆した。外国語学部の研究コース制度が2014年度に発足して以来、学科横断の北米研究コースで学んだ学生たちからみたコロナ前、コロナ下、ポスト・コロナで経験した本学における学生生活の記録である。最終年はゼミには英語学科の学生の他、イスパニア語学科からも2名の学生が参加した。トランプ2期目再選の大統領選のあった年にスペイン語と英語の資料を読むことのできるゼミ生と、英語文献を中心に研究するゼミ生が学科の壁を越えて、議論できることは双方にとって極めて刺激的な相乗効果をもたらした。まさに外国語学部における学科横断型の研究コース制度の成果である。最終年にイスパニア語学科の学生も加わり、課外活動や入試制度の歴史等、全学レベルの歴史の記述も増えたことから、本プロジェクト・エッセー集のタイトルは、『コロナ禍と英語学科~学生たちの語りより~』から『コロナ禍と上智大学の歴史~学生たちの語りより~』へと変更した。
こうした学生たちによる記録が後世の何らかの参考になれば幸いである。
石井紀子 2025年3月12日
目次 (本文は上智大学アメリカ・カナダ研究所にて所蔵)
松尾一之名誉教授のインタビュー「英語学科の歴史・成り立ち」
序文 石井紀子 4
2024年度 学生から見た英語学科の歴史発表会 7
Ⅰ. 英語学科の授業
(1)英語学科の歴史〈授業〉その1(2022年度ゼミ生) 8
(2)英語学科の歴史〈授業〉その2(2023年度ゼミ生) 14
(3)コロナ禍におけるオリエンテーションについて(SOD)(2023年度ゼミ生)
2021年度入学 17
(4)〈必修科目〉
2021年度入学 20
(5)〈研究コース〉 2021年度入学 23
(6)〈教職〉 2020年度入学 26
(7)〈英語学科の入試制度:TEAPスコア利用方式〉
2021年度入学 2022年度入学 27
(8)〈英語学科の歴史―授業・研究コース〉
授業の歴史 2021年度入学 30
研究コースの歴史 2021年度入学 32
(9)〈ゼミ論文コラボレーションプロジェクト〉
2021年度入学 大河内結愛 34
(10)〈男女別クラスの成り立ちと廃止の経緯〉 石井 紀子 35
*参考資料<英語演劇の伝統> 英語学科公式ウェブサイトより 41
II. 英語学科の課外活動
―STP(Summer Teaching Program)とAngles(英語学科学生英文ジャーナル)
(1)〈STPの体験記〉(2022年度ゼミ生) 2019年度入学 2020年度入学 (STP小野田)、
2020年度入学 (STP下関) 46
(2)〈歩み続けるSTP―2023年度コロナ明けの活動記録―〉
2021年度入学 (STP小野田) 53
(3)〈半世紀を超えて:STP誕生の歴史
―創設者吉田研作名誉教授のインタビューを踏まえて〉
2021年度入学(STP小野田) 58
(4)〈英語学科のライティング・ジャーナル『Angles』の歴史〉
2022年度入学 62
Ⅲ. 課外活動
(1) 〈体育会系の歴史〉
空手道部の歴史 2021年度入学 67
上智大学体育会の歴史 2022年度入学 69
(2) 〈音楽系課外活動の歴史〉
2022年度入学 71
IV. 留学と進学
(1)コロナ禍と英語学科について【留学グループ】 2022年度ゼミ生、2020年度入学
2019年度入学 仲詩織 79
(2)英語学科の歴史【留学】 2023年度ゼミ生、2020年度入学 86
(3)大学院進学について
2023年度ゼミ生、2020年度入学 89
2025.04.07# 英語学科 # 教員BLOG
学生たちの「コロナ禍と上智大学の歴史」プロジェクトの製本版の寄贈について 石井紀子