Prospective Student

中学校技術教員とは

多くの高校生の方(さらにいうと受験生の方)の記憶には乏しいかもしれませんが、皆さまは中学校の時に技術・家庭の「技術」という教科を履修されております。しかし、高校では「技術」という科目がありませんので、「技術」に興味を持つ方が難しいかもしれません。なお、近年では「情報」が必修になり、中学校で履修した「技術」の一部を勉強されていると思います。

中等教育における「技術」教育の主な目的は、身の回りの「技術」についての理解を深め、実際に技術に触れ、工夫や試行錯誤を通して、目的を果たすための「最適解を見出す力」あるいは技術を通して環境に「適応する力」の養成だと私は認識しています。このような力には絶対解が存在せず、生徒によって出力形態が異なるため、技術を指導する側としては最も面白いところであり、最も難しい点でもあります。生徒自身が最適解を模索し続け、思った以上の成果を挙げる場合もあれば、妥協して終わりを迎える場合もあります。最適解は正解不正解の2択で判断できないこともあるため、このような事態が発生します。

正解がないことを指導することは嫌だと思われるかもしれませんが、「技術」教育の中では生徒の個性を発見しやすいの特徴です。高校の数学や物理のように正解に行き着く過程を理解して、それに順応するというのとは個性の現れ方が異なります。そもそも実技系の科目においては、科目とは異なり、生徒はそれぞれ異なる表現方法手法、過程を経てゴールを目指すことがありますこのゴールを最も想像できるのは生徒自身ですので、このゴールへの思い入れや興味が強いと、自ずと他教科、他分野について学び必要となってきます。

したがって、技術教員の役割は、以下のような点が重要になります。

1.生徒に比較的自由に思考させ、生徒のアイデアを後押しする

2.生徒が目の前の技術に触れたい、その技術でもっと遊びたい(活用したい)という興味や関心を高める

3.技術室は面白い、心地よいと思ってもらえる環境作り、授業作り継続

1~3の実現に向け、例えば教員養成課程における技術教育では、学生に可能な限りの技術を提供し、理論と実践を経験させます。学生は技術に触れ、得た気づきや発見を教員という立場から生徒へフィードバックすることを考えます。生徒が積極的に授業に関わるための計画を考案し、教育実習や模擬授業を通して授業実践と省察を繰り返し、技術教員としての自分が不足に感じている識や指導法は自分でも調べながらスキルアップを図ります。

中学校の技術教員として、最低限学ぶ必要がある分野は大きく分けて4つあります。1. 材料と加工,2. 生物育成,3. エネルギー変換,4. 情報の技術です。この4つのテーマは昔から身の回りの生活に見られる身近な技術がテーマとなっており、農学、生物工学、機械工学、電気工学、情報工学の基礎が反映されています。技術教員を目指す学生は、これらの科目の基礎について浅く広く学ぶ機会があります。見た目は理系科目ですが、中身もやはり理系科目です。しかしながら、それぞれ、基礎のみの理解に留まるため、農学部や工学部のようにものづくりに必要な専門科目の習得に専念するのとは随分様子が異なります。中学校技術教員の使命は「技術」を通して「はじめて技術に触れる中学生に教育を行う」ということですので、「技術」の内容の理解も重要なのですが、「技術」を通して生徒を育成するということが最も求められます。したがって、生徒の育成に関わる以上、コミュニケーション力や集団をうまくコントロールする力などが必要不可欠になりますので、教員として人材を育成するための多様な力が求められます。多様な力は、教育実践の中で、教員を目指す学生自身が試行錯誤しながら、最適解を見つけていくことなります。

中学校技術教員に関して、大学での学びや私が考える理想の「技術」教育、中学校技術教員の資質などに関して言及させていただきました。教育学部には興味がある方は参考にしていただければ幸いです。