多くの高校生・受験生の皆さんにとっては、少し記憶が薄れているかもしれませんが、皆さんは中学校で「技術・家庭科」の中の 「技術」 という教科を学んできました。
木材や金属を加工したり、植物を育てたり、エネルギーを使った装置を作ったり、プログラミングに触れたりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
高校では「技術」という教科がなくなるため、意識する機会は少なくなりますが、近年必修となった「情報」は、中学校技術科の一部を発展させた内容でもあります。つまり、「技術」は決して特別な教科ではなく、皆さんの身近な生活や社会と深くつながっている分野なのです。
中学校における「技術」教育の大きな目的は、
身の回りにある技術を理解し、実際に触れ、試行錯誤しながら、目的を達成するための「最適解を見つけ出す力」 を育てることにあります。
それは同時に、変化する環境に対して技術を使って 自ら適応していく力 を養うことでもあります。
ここで扱う「最適解」には、数学や物理のような唯一の正解はありません。
生徒一人ひとりの考え方や工夫によって、まったく異なる答えが生まれます。
この点こそが、技術教育の 最も面白いところであり、最も難しいところ です。
生徒が粘り強く考え続け、予想以上の成果を生み出すこともあれば、途中で妥協してしまうこともあります。
正解・不正解の二択では判断できないからこそ、生徒の思考や個性がはっきりと表れるのです。
「正解がない授業」を指導することに不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、技術教育は 生徒の個性を発見しやすい教科 でもあります。
高校の数学や物理では、正解に至る過程を理解し、それに沿って考える力が求められます。一方、技術科のような実技系の教科では、生徒はそれぞれ異なる方法や表現、試行錯誤の過程を経てゴールを目指します。
そのゴールを最も強く思い描いているのは、生徒自身です。
「こうしたい」「これを作りたい」という思いが強くなるほど、生徒は自然と他教科や他分野の知識にも関心を持つようになります。
技術教育は、学びを広げる“入口”になり得る教科なのです。
技術教員には、特に次のような役割が求められます。
生徒に比較的自由に考えさせ、そのアイデアを後押しすること
技術に「触れたい」「もっと使ってみたい」「もっと試したい」という興味・関心を引き出すこと
技術室が「面白い」「居心地が良い」と感じられる環境と授業を継続的につくること
教員養成課程における技術教育では、学生自身が できるだけ多くの技術に触れ、理論と実践の両方を経験 します。
そして、「この技術を、どのようにすれば中学生に伝えられるか」「どうすれば主体的に学んでもらえるか」を、教員の立場から考えます。
教育実習や模擬授業を通して授業実践と省察を繰り返し、自分に足りない知識や指導法は自ら調べ、試行錯誤しながらスキルアップしていきます。
中学校技術科では、主に次の4分野を扱います。
材料と加工
生物育成
エネルギー変換
情報の技術
これらは、農学・生物工学・機械工学・電気工学・情報工学などの基礎と深く関わっています。
理系的な内容が多く、学ぶことは幅広いですが、専門分野を深く掘り下げる農学部や工学部とは異なり、「技術を通して人を育てる」ことが中心 となります。
そのため、技術の理解だけでなく、コミュニケーション力や集団をまとめる力など、教員として人を育成するための多様な力が求められます。
これらの力もまた、大学での学びや実践の中で、学生自身が試行錯誤しながら身につけていくものです。
ここでは、中学校技術教員の学びや、私が考える理想の「技術」教育について紹介しました。
ものづくりが好きな人、考えることが好きな人、誰かの成長に関わる仕事がしたい人にとって、技術教育はとてもやりがいのある分野 です。
教育学部・技術教育講座に興味のある方は、ぜひ進路選択の参考にしてください。