酒マンジュウの皮は、こむぎ粉にすこし砂糖を加えて酒粕と水を加えてこねて作ります。コメを蒸してから冷ましてコウジカビなどを加えて醸造して、酵母によるアルコール発酵をさせた液体を漉して「清酒」をつくるときの搾りかすが酒粕です。酒粕のなかに含まれるのは 発酵したときに分解されなかった食物繊維や アルコール発酵の主役であった酵母(イースト:カビの仲間で単細胞)です。ドライ・イーストとはちがって、酒粕のなかのイーストは活動状態のままです。ドライ・イーストになっているイーストとは「系統」が異なって、つくりだす匂い分子が異なるかもしれません。日本酒の香り(エステルなど)は醸造に使われる酵母の系統によってかわります。
マンジュウの皮になる捏ねたドウのなかの砂糖を酵母はからだのなかにとりこんで 二酸化炭素(気体)とエチルアルコールを生成します。マンジュウを蒸すと、こむぎ粉が捏ねられた時にできるネバネバのグルテンが気体の二酸化炭素を逃さず、ちいさなアブクが温度が上がることによって膨らみ、ふっくらしたマンジュウの皮になります。
アルコールは皮から外に逃げてしまうといわれています。もしアルコールが逃げないのであれば、マンジュウやパンを食べると酔っぱらってしまうことになります。それが心配であれば、炭酸水素ナトリウムかカリウムが主成分の「ベーキングパウダー」を使うとよいのです。
手打ちウドンで食べごこちがグルテンの量でどのように変わるかを実験しました。おなじことを酒マンジュウでも 薄力粉と強力粉をつかって実験してみましょう。
酒まんじゅうのためのドブロク作りで活躍するコウジカビの顕微鏡写真。いくつかの分生子、まわりに胞子が散っている。(対物レンズx40、微分干渉法による。左の写真をクリックすると 拡大表示できるファイルが出てきます。)
コウジカビの詳しいことはこのページで説明している。
伝統的な日本酒の醸造プロセスについて 日本生物学オリンピック(高校生がおもな対象)の2017年予選に出題された問題とその解説を次に示します。
問4)伝統的な清酒造りの工程では,開放系の桶に麹菌を生育させた蒸し米と水を加え,5℃程度の低温からゆっくりとかき混ぜながら少しずつ温度を上げていく。麹菌は水を加えた時点で死滅するが,麹菌が分泌したアミラーゼにより蒸し米のデンプンが徐々に糖分に分解されていく。発酵桶は深く,どろどろしているので,開放系であっても酸素はすぐに使い切られてしまう。1か月ほどの間にさまざまな微生物が変遷していくが,以下に示す4種類の微生物はどのような順番で優占するだろうか。正しい順を示しているものをA~Lから選べ。(5点)
A.②→①→④→③ B.②→③→④→① C.②→④→①→③ D.②→④→③→①
E.③→①→④→② F.③→②→④→① G.③→④→①→② H.③→④→②→①
I. ④→①→②→③ J.④→②→①→③ K.④→②→③→① L.④→③→②→①
正解・解説
問4)【正解】D 【部分点】B
【解説】日本酒の醸造工程では,イキのよい清酒酵母を確保する必要がある。現代では,ほとんどの酒造メーカーでは醸造協会などから頒布される純粋培養された清酒酵母を桶に投入している。伝統的な生酛(きもと)造りを行っている数少ないメーカーでは,麹菌を繁殖させた蒸し米に水を加え,開放系の容器で温度管理と撹拌操作だけで清酒酵母が生育してくるのを待つ。
開放系の桶には蔵に居着いている微生物が入り込んで,蒸し米から生じたグルコースなどの糖分を分解しながら繁殖し,変遷する。温度が高いと腐敗菌や乳酸菌が猛烈に繁殖して腐ってしまうので,5℃程度の低温でスタートする。伝統的な日本酒の製造が厳冬期に行われる理由である。最初に枯草菌などの生育の早い好気性の細菌が生育するが,シュードモナス属細菌が生育すると酸素を使い切った時点で代わりに硝酸を酸素受容体とする硝酸呼吸を始める。この過程で生じる亜硝酸は抗菌作用を有し,枯草菌などの雑菌が死滅する。酸素が枯渇すると乳酸菌が乳酸発酵を開始して生育し,pHが低下するためシュードモナス属細菌は死滅する。乳酸菌もやがて自身が生成した乳酸により衰えていく。清酒酵母は生育が遅いが,乳酸による酸性環境に強いので最後にゆっくりと生育し,アルコール発酵により生成したアルコールで乳酸菌を死滅させる。最終的に,ほとんど純粋な清酒酵母が大量に存在することになる。
ドブロク つくり
http://www.osk.3web.ne.jp/~jetplan/takejun/doburoku.htm
用意するもの
1:炊飯器で米3合を2合の目盛の水加減で炊きます。この際、おチョコ一杯くらいの日本酒を入れておくと米が芯まで炊けます。
2:米が炊きあがったら広口の容器に移し、これに冷やしたミネラルウォーター1.2リットルをそそぎ入れる。これで水温が40℃から35℃くらいになる。
次に米コウジ200g、ヨーグルト大さじ一杯、ドライイースト6gを入れて混ぜます。
3:フタをして部屋の中に置いておく。フタをする前に、容器にサランラップを張っておくと衛生的です。アルコール度を高くしたい時は小さじ1~3杯程度の砂糖を混ぜます。
早ければ半日ほどでプツプツと発酵が始まり、イイ匂いがし始めます。発酵して米粒が上に浮いてきますので、1日1回程度、軽く混ぜます。
冬場なら3日、夏場なら2日でできます。冬場は居間などの暖房のきいた部屋に置いておきます。
4:3日~4日目、容器からお玉を使ってザルへ少しずつ移し、米粒と液体に分けます。米粒がけっこう形を保っているので、ごく普通のザルで漉せます。
ザルに残った酒カスは、オタマをギュッと押しつけて絞り込みます。 絞った液をペットボトルへ入れ、しっかりフタを閉めます。1.5リットルのペットボトルなら八分目くらいの量になってるはずです。満タンにはしないでください。
ペットボトルに残った空間は、発生する二酸化炭素を貯めておくスペースです。この状態で半日~1日、常温で置き、二次発酵させると、発生した二酸化炭素でペットボトルがキンキンになります。そのままフタを開けず、冷蔵庫で冷やします。
保存について
できたてが一番オイシイのですが、冷蔵庫に保管しておくと、この後一週間ほどは充分に風味が保たれます。日にちとともに徐々に発酵が進むので、アルコール度が少し高くなりやや辛口になります。
注意:いきなりフタを開けると、びっくりするくらいの二酸化炭素が出て、中身があふれ出ることがあるので注意してください。中身の泡立つ様子を見ながら、フタを少しずつひねったり閉じたり徐々に開栓していくのがコツです。
材料 12個分
道具