【オンライン企画レポート】
9月19日(土)、オンライン企画を開催しました。今回、23名の方が参加し、「今、福祉職ができること、これから大切にしたいこと~今を生きる時代を分かち合おう~」をテーマに、様々な立場を越えて、コロナ禍の中、今、福祉職ができること、これから大切にしたいことについて語り合い、共有し合いました。
◎ オリエンテーション(司会進行:宮崎祐弥氏=オンライン企画実行委員)〈13:00~〉
ZOOMの操作説明があり、参加者全員でミュートの操作練習。
◎ 開会の言葉(松原賢氏=オンライン企画実行委員長)
◎ 開会の挨拶(伊藤文人氏=日本福祉大学 社会福祉学会運営委員長)
「学内学会の毎年の大会は中止となり、学会の活動が停滞する中でこのような企画を開催できたのは良いことです。現場の動きの中、課題や悩み、実践の日常を共有し合って、日本社会がどうなっていくか十分意見交換出来たらと思います。」
◎ 実践報告〈13:30~14:30〉
1. 丹内心悟氏(地域包括支援センター職員、元日本福祉大学講師)
『コロナ禍を乗り越えるために東日本大震災の被災地復興支援活動の実践から学ぶ~Try for Japanの活動を通じて』
「6月に入ってから包括の方で虐待相談(いわゆる8050問題等)が増え、難しい時代に入った。
私自身、トライアスロンをやってきた中で実家のある釜石市(岩手県)が東日本大震災により被災してから変わった。トライアスロンのスター選手にお願いしてTry for Japanの活動で世界の選手たちに支援を呼びかけた。
(大震災後の釜石市の様子やTry for Japanの活動をYouTubeで視聴)
今、振り返ると、大学で学んだ人のネットワークやアセスメントが自分の中で非常に役立った。エンパワメントなど大事な実践が出来たと思う。2025年から日本はどうなっていくのかという強い気持ちがある。イベントでの町おこしも大事だが、緩やかな環境での町おこしも大事。」
(愛知県知多郡美浜町に移住した丹内氏の自給自足生活をビデオで紹介)
「いかに楽しく充実して生きていけるかを模索しながら考えている。15年間トライアスロンをしてきた美浜町で、2026年にトライアスロン大会を開きたい。」
2. 山城俊一氏(坂城町議会議員、放課後児童支援員)
『放課後児童支援員の状況について~新型コロナウイルス感染症の状況から見えてきたもの~』
(自己紹介の後、ご自身の放課後児童クラブ運営団体NPO法人ワーカーズコープについて説明)「働く人や市民が皆で出資し経営に参加。民主的に事業を運営、責任を分かち合う協同組合である。事業は子ども関係が3分の2ほど。コロナの後で見直されていく産業にも以前より着手している。」
(学校の一斉休校について)
「そのプロセスが非常に気になるところで、その問題点として児童の祖父母へ子どもを預ける負担が長期化した。また、子どもへの心理的影響も大きかった。もっと丁寧な説明を子ども達にして欲しかった。さらに、放課後児童クラブの、子どもたちの保護者代わりの職員への影響はあまりクローズアップされていない。職員の休み時間が確保されない。新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校はやむを得なかったと思うが、それぞれの立場の人がそれぞれの立場で適切な時期に丁寧な説明を行って判断すべきことだと思う。国の決めた休校決定に対し限られた時間でも議論せず国の言いなりになった自治体がもしあったならば、どうかと思う。このコロナウイルス感染症が子ども達への『こころ』にどう影響していくか、注意深く見守る必要がある。」
3. 植松龍之介氏(一般社団法人アンビシャスネットワーク)
『学習支援の実施状況について~コロナ対策を踏まえたサービス実施方法の変化と課題』
(自身の所属する法人及び学習支援についての紹介後)
「貧困世帯の子どもたちの学習量からみると、学力の差は経済状態にも影響する。学ぶための十分な環境がない点にスポットをあてる。また、子どもの方から相談しやすいのは年齢の近いお兄さんお姉さんであることから大学生が支援者であることが望ましいと考えた。」
(大学生スタッフ作成の動画視聴)
「コロナ前には子どもたちと直接対面支援を行っていたが、コロナ下においてはサービス提供方法を見直し、ZOOMによる支援を実施することとなった。不登校の子どもにはオンラインの方が良い場合があると思う。支援の実施方法も、子どもたちや保護者、スタッフの声を聴き、改善させている。対面には対面、リモートにはリモートの良さがある。今後は届けることのできなかった人への支援や人材の確保、対象者や支援者の声を聴き表面的な事に流されず真に必要なサービスを提供できるかを見極められるか等、これらのことを大切にしていきたい。」
◎ 質疑応答・中間まとめ(コーディネーター:伊藤文人氏)〈14:30~14:50〉
(実践報告を受けて)
「所得補償がないのに生産活動をするな、というのは出来ない。少なくともヨーロッパは所得補償があるが日本にはほとんどない。民間レベルに丸投げだけの国や行政の役割は何なのか。我々は末端の現場でどうすればよいのか。国はどういう基準で民に責任を持つのか。」
「丹内さんの実践は生き方そのものを変えていく実践。これは素晴らしい。緩やかな方法で実践されている。」
◎ グループディスカッション
〈15:20~16:00〉
A~Dグループによる。
(各グループにつき4~5名ずつ振り分け、ZOOM上の各ミーティングルームへ移動し議論)
◎ メインミーティングルームへ移動、各ディスカッショングループの発表〈16:00~16:30〉
【発表内容】
A) ・医療関係では二次感染を怖れて受診を控える動きが目立った。
・障害者施設では受注がうまくいかない。
・成年後見をやっていても本人と直接会えない。
・いろいろな手段での「人との繋がり」が大きな問題。
B) (「自己責任」をテーマに)
・コロナ下で世の中は互いへの「監視」になってしまっている。こういう急なことで助け合う仕組みが日本にはない。狭い地域の中で循環していく仕事作りや地域で支える仕組み作りが必要。
C) ・コロナによって日常活動が出来ない。
・障がいの方でステイホームが理解できない。
・大学では停学や退学が多い。
・現場は疲弊している。にもかかわらず「余っているからマスク配って!」と言われる。
D) (現場に近い人達から)
・利用者さんの不穏が見られた。
・病院では面会できない。
・社会的排除がコロナによって今の形になったのではないか。
◎ 質疑応答および全体のまとめ(コーディネーター:伊藤文人氏)〈16:30~〉
参加者より、「ハローワークは税金でやっていても人材を確保できない。世の中と共通の言語を持っていない人が多い。」、また、人材育成については「現場で少ない人員でやっている、コロナに関係なく『苦しい』」との声が寄せられました。それに対し伊藤文人氏は、「今までの実践拠点になっていた施設では対応できない制度の狭間でいろいろな問題が起こった。(実践拠点に)社会福祉系大学でソーシャルワークを学んできた専門職を置いていかねばならない。」と強調しました。
また、木戸利秋氏(日本福祉大学社会福祉学会 副運営委員長、日本福祉大学)からは、社会福祉士実習施設の要件の緩和や実習に対する柔軟な対応が今後の課題であるとの意見をいただきました。別の参加者からも同様に、「『世の中の共通言語を持っている人をつくる』ことに賛成する。1から教えていくのはなかなか続かない。」と声があがり、それに対し「どうやって人材を育てていくか、コロナを機に考える必要がある。」「共通言語というより、給料は安いのにずっと働きづめ。職員の自分の生活を、守ることがリンク出来ていない。」という意見が出ました。
また、参加者自身、「自分がコロナで倒れたら、が最大の不安。いざとなったら家族やぱあとなあの仲間の助けがいる」と訴える場面もみられました。
さらに、「各家庭の状況は違う。一人一人が主人公なのだから今の実践でその人の持ち味をどう大切にしているのか、きちんと整理していく必要がある。基準に当てはめるというのはよくない。」という意見も上がりました。それに対し伊藤文人氏からは、「今の、そこに入るか入らないかという基準ありきの『介護認定』や『障害認定』でワーカー自身が柔軟性を失っている。(基準を)なくすための実践が、制度が入り込んで規制されてしまっている。若い世代の実践者は、介護認定や障害認定で仕事をやった気になってしまう。そもそも日本の教育が基準ありきで創造性を育まない」とまとめ上げました。
◎ 閉会の言葉(木戸利秋氏、日本福祉大学社会福祉学会副運営委員長)〈16:50~〉
「熱い議論、感謝しています。利用者・住民の目線に立ってグループディスカッションをしていただき、ミクロの話にとどまらず社会福祉教育についてもコロナのことを考えつつ語られたと思います。学内学会の歴史を鑑み、時間も経過しコロナの状況もあって6月の大会は断念し、オンライン企画をやりました。また、こういう機会を皆さんの感想を踏まえた上で持てたらと思います。」
最後に参加者全員でZOOMのミュートを解除して一斉に拍手をしました。伊藤文人氏の「ぜひ、お近くの方々にお声がけいただけたら。皆さんの実践で培った知恵を集めましょう!」との言葉で、日本福祉大学社会福祉学会オンライン企画は幕を下ろしました。
コロナウイルス感染拡大により一変した私達の生活。
その中で福祉の現場の実践者の方々の日々の思いや声を参加者の皆様と共有し、諸問題について議論できたのは大変有意義なことでした。
オンライン企画の報告をこのような形でお届けすることで、読者の皆様の今後の実践や生活に少しでもお役に立てることができましたら、幸いです。
最後までご一読いただき、ありがとうございました。
2020年9月19日(土)、日本福祉大学社会福祉学会オンライン企画「今、福祉職ができること、これから大切にしたいこと~今を生きる時代を分かち合おう~」を開催しました。
学内学会として初めての試みであるこの企画。
今回、23名の方が参加しました。
新型コロナウィルス感染が拡大し、様々な社会活動において制限を余儀なくされ、私たちの生活にかつて経験のないほどの影響が大きく及んでいる中、今、福祉職ができることとは何か、これから大切にしたいことは何かについて、様々な立場から意見を出し合い、共有し合い、考えました。
内容の詳細は後日、掲載させていただきます。
【企画プログラム】
司会・進行:宮崎祐弥氏(オンライン企画実行委員、社会福祉法人さふらん会)
①オリエンテーション
・ZOOMの操作の説明: 宮崎優弥氏(オンライン企画実行委員、社会福祉法人さふらん会)
・開会の挨拶:松原賢氏(オンライン企画実行委員長、NPO法人ポレポレ)
・運営委員長挨拶:伊藤文人氏(日本福祉大学)
②実践報告
丹内心吾氏(地域包括支援センター職員、元日本福祉大学講師)
「コロナ渦を乗り越えるために東日本大震災の被災地復興支援活動の実践から学ぶ~Try for Japanの活動を通じて~」
山城峻一氏(長野県坂城町議会議員、放課後児童クラブ職員)
「放課後児童支援員の状況について
~新型コロナウィルス感染症の状況から見えてきたもの~」
植松龍之介氏(一般社団法人アンビシャスネットワーク職員)
「学習支援の状況について~コロナ対策を踏まえたサービス実施方法の変化と課題」
③質疑応答・中間まとめ
コーディネーター:伊藤文人氏(日本福祉大学)
④グループディスカッション
・Aグループ
ファシリテーター:松原賢氏(オンライン企画実行委員長、NPO法人ポレポレ)
・Bグループ
ファシリテーター:杉山あゆみ氏(オンライン企画実行委員、熱田区身体障害者福祉協会)
・Cグループ
ファシリテーター:伴野慶氏(オンライン企画実行委員、社会福祉法人かりがね福祉会)
・Dグループ
ファシリテーター:宮崎祐弥氏(オンライン企画実行委員、社会福祉法人さふらん会)
⑤各グループの発表
⑥参加者意見交換会
コーディネーター:伊藤文人氏(日本福祉大学)
⑦閉会の挨拶
副運営委員長:木戸利秋氏(日本福祉大学)
コロナ禍の中、現場で奮闘する福祉職の方たちをはじめ、全ての方たちにエールを込めて拍手で終了
【2019年 日本福祉大学社会福祉学会(通称:学内学会) 慈昭館賞・学術奨励賞について】
6/15(土)、日本福祉大学社会福祉学会(通称:学内学会) 第51回大会 において慈照館賞並びに学術奨励賞の授賞式が行われました。
学内学会では、毎年、社会福祉の現場の実践と研究の一層の発展を図るため、会誌「福祉研究」に優秀な実践記録や研究論文を投稿した会員に対し、それぞれ慈昭館賞と学術奨励賞の2つの賞を授与しています。
今年は、
●慈昭館賞
・荒井和樹氏
「子どもの貧困対策事業におけるアウトリーチ普及への課題と展望」
・辻和美氏
「教育権保障としての教育年限延長の意義と課題」
●学術奨励賞
・長崎龍樹氏
「中途資格障害者の早期発見に関する研究--イギリスにおける先駆的支援モデルに着目して」
以上の3名の方が授賞されました。
授賞者の皆様おめでとうございます。
現場から見た社会福祉労働の理想と現実
~教えて下さい あなたの仕事の原風景~
●日時:2019年6月15日(土)~16日(日)
●会場:日本福祉大学 美浜キャンパス
日本福祉大学社会福祉学会(通称:学内学会)では、設立当初より「社会福祉労働」にも関心を持ち続けてきました。特に2000年以降の労働力流動化政策は、社会福祉や教育の分野にも浸透し、福祉労働者の不安定就労化に拍車が掛かっています。愛知県社会福祉協議会の調査によれば、県下の福祉労働者の3大離職要因は、①(職場内の)人間関係、②労働条件の悪さ、③所属している組織のミッション(理念)が理解できないこと、にあると言われています。こうした事実は、少なからず将来の福祉労働者たる若者(学生)たちにも負の影響をもたらしており、福祉を学んだ学生たちが実質的に福祉の現場に就職することを躊躇する要因になっています。そこで本大会は、こうした状況を多角的に検証し、現場の職員、学生、研究者がお互いの立場からこの要因の理解と解決策について考えていきます。また、本大会を通じて、社会福祉の仕事のやりがい、悩みなどを共有しあい、明日につなげていけるような機会にしたいと考えております。多くの皆様のご参加をお待ちしております。
【6月15日(土) 13:00~17:00】(受付開始 12:30)
(1)基調講演
講師:堀場純矢 氏(日本福祉大学)「社会福祉労働と職員の確保・育成:社会的養護の視点から」
(2)シンポジウム
○シンポジスト
・辻和美 氏(特別支援学校 聖母の家学園 教員)
・池谷鉄兵 氏(山陰労災病院MSW)
・楢府憲太 氏(埼玉県ふじみ市障害福祉課、前生活保護担当ケースワーカー)
【6月16日(日) 10:00~15:00】(受付開始9:30)
●分科会
①貧困・低所得
○共同研究者
・角崎洋平 氏(日本福祉大学)
○報告者
・石坂誠 氏(上田生協訪問看護ステーション)
・西川宣秀 氏(学内学会 会員)
・赤星俊一 氏(学内学会 会員)
②児童
○共同研究者
・山﨑康一郎 氏(日本福祉大学)
○報告者:
・池戸裕子 氏(児童心理治療施設桜学館)
・加藤潤 氏(和進館児童ホーム)
・荒井和樹 氏(全国こども福祉センター)
③障害
○共同研究者
・佐々木正芳 氏(静岡県立大学)
○報告者
・藤田紀子 氏(さくらんぼ作業所)
・北村栄章 氏(四葉の家 施設長・副理事長)
・伴野慶 氏(社会福祉法人 かりがね福祉会 支援員)
・南寿樹 氏(特別支援学校 教員)
④高齢
○共同研究者
・村上武敏氏 (聖隷クリストファー大学)
○報告者
・杉戸順子氏(名古屋市医師会中区在宅サポーター)
・林宏二(秋田看護福祉大学)
⑤教育・実習
○共同研究者
・武田誠一氏(三重短期大学)
○報告者
・白石輝 氏(児童養護施設経験者・日本財団夢の奨学金奨学生、日本福祉大学3年)
・藤田哲也 氏(松本短期大学)
・現役学生と先輩SWが語る
(長谷麻衣子氏、宮崎祐弥氏)
⑥優生思想と社会福祉
○共同研究者
・小林洋司 氏(日本福祉大学)
○報告者
・谷川伸秀 氏(劇団名古屋 代表)
・小野田那月 氏(静岡大学教育学部4年)
・磯野博 氏(静岡福祉専門学校 教員)
【参加費】
◆一般
2日間参加:会員 2,000円(非会員 4,000円) 1日のみ:会員 1,000円(非会員 2,500円) 懇親会:3000円 宿泊交流会:7000円 2日目 弁当代:600円
◆学生
2日間参加:会員 500円(非会員 1,000円) 1日のみ:会員 300円(非会員 500円) 懇親会:3000円 宿泊交流会:7000円 2日目 弁当代:600円
※初日のプログラム終了後、懇親会を行います(会費:3000円)。また、懇親会終了後、美浜キャンパス付近の民宿「海浜館」にて宿泊交流会を行います(参加費:7000円)。
参加を希望される方は、学会事務局までお申し込み下さい。※2日目、昼食のとき、弁当を用意します(弁当代:600円)。希望される方は学会事務局までお申し込み下さい。
●主催・問い合わせ先
日本福祉大学社会福祉学会 事務局