How to search Latin Inscriptions?

ここでは、ラテン語碑文の検索の仕方について簡単に説明します。


ラテン語碑文のデータベースは数多くありますが、多くの人はCILと呼ばれるCorpus Inscriptionum Latinarumという碑文集を用いることが多いのではないかと思います(専門家になると、SEGAEZPEなどの雑誌も使うようになります)。このCILは、1巻から17巻まである碑文集成で、現在も補遺などの出版が行われています。碑文が発掘された地域ごとに集成されており、たとえば、ポンペイやヘルクラネウムは第4巻、ローマは第6巻という風になっています(このあたりのことはWikipediaなどでも詳しく説明されていますので、割愛します)。

日本国内の大きな大学の歴史学研究室には紙媒体のCILが所蔵されていますが、もしかすると所蔵されていない大学もあるかもしれません。その場合には、データベースを使うことをお勧めします(研究室に紙媒体のCILがあっても、データベースを使うと色々なことが早くわかるようになります)。


さて今回は、Gnaeaという女性の名前が碑文でどれくらい登場するのかを知りたいとしましょう。その場合、検索サイトとして私はEpigraphische Datenbank Clauss - Slaby (manfredclauss.de) をおすすめしています。このサイトに行くと下記のような画面が出てきます。

(ドイツ語で書かれていますが、英語にも対応しています。英語の方が良い場合には英国国旗をクリックしましょう)

Gnaeaを検索するには、まず一番左側のコラムにあるDatenbank-Rechercheをクリックしてください。すると、以下のような画面が出てきます。

このSearch text 1のところにGnaeaと入力し、goで検索をします。すると、以下のような検索結果が出てきます。

全部の検索結果が見えるように少し表示を小さめにしていますが、データベースではGnaeaという単語が出てくる碑文が6つあるとわかります。

最初のpublicationはこの碑文の情報がどこに見られるのかを示し、その後年代、地域、都市(わかっている場合)が書かれています。その次に出てきている文章が、碑文の原文・読みの補いです。そして最後に碑文に登場する人物の身分や出自などについて書かれています。

さて、これだけでも色々とわかるわけですが、Clauss-Slabyの良さは、他のデータベースに連れて行ってくれる点にあります。どうやって行くのかというと、publicationの一番右側にある「壺の絵」の部分(上の図だと黒い四角にみえる部分)をクリックしてください。今回は便宜的に、5つ目の検索結果、CIL VI, 40683 の絵の部分をクリックしましょう。すると、次のようなページが出てきます。

このページでは、この碑文がほかのどのデータベースに入っているかを示しています。この碑文はローマで出土していますので、Epigraphic Database Romaに収録されていますし、そのほかのデータベース(なぜかBariのものにも)にも入っているようです。

Clauss-Slabyでは、碑文の写真が入っていないことが多いですが、他のデータベースによっては写真情報や、より新しい研究書の言及などもあります。ためしにEDRをクリックすると、以下のようにEAGLEのサイトに飛びます。ここでは、より詳しい碑文の内容や(たとえば素材など)、CILの該当箇所がスキャンされたものも出てきます。

これらのデータベースの使い方は、誰かに説明されるというよりは、自分で色々クリックしてみて学ぶ方が発見が多いので、今回説明した以上のこともデータベースを使っていくうちに段々わかってくると思います。他方、ラテン語碑文に初めて接する人にとっては、このClauss-Slabyのデータベースはかなり便利なものですので、是非使ってみてください。