一般演題①

O-1

CF漏れテスト不合格が発生し原因究明に難渋した事例

長崎みなとメディカルセンター    

○高石  辰吾


【はじめに】

日機装個人用透析装置DBG-03を起動後、自己診断テストにおいてエンドトキシンカットフィルター(CF)漏れテスト不合格のアラームが発生し、調査を行ったが原因究明に難渋した事例を経験したため報告する。

【背景】

日機装個人用多用透析装置DBG-03で自己診断テストし液置換を行ったところ「TFD216 SV41 テスト不合格」というCF漏れテスト不合格アラームが出現した。操作マニュアルに従い再度自己診断テストを行い、CFを交換したが改善が見られなかったため、日機装のメンテナンス業者へ連絡した。連絡後、バイパスカプラーの短絡、SV41組み直しや加圧ポンプ入れ替えなどを行い透析施行することが出来たが原因は不明だった。改善したかと思われたが別の日には同様のアラームが発生した。また同機器にて手動プライミングを行っていた際、廃液配管へ繋がっている余液受けから生理食塩水が溢れるという事象が起きていたので廃液配管を調査すると黒色様の物体が配管を閉塞させていた。閉塞物を除去するとそれ以降「TFD216 SV41 テスト不合格」アラームは発生しなくなった。

【考察】

「TFD216  SV41 テスト不合格」はCF漏れテストにおいて、CF側回路を開き、バイパス側回路を閉じて配管内を減圧した後、SV41を開いた際、透析液圧力の変化量が100mmHg以上に達しなかった場合に発生する警報である。配管内を減圧する際ポンプで圧力を廃液側へと逃がしており、廃液配管が閉塞してしまうと減圧することが困難となり、その結果SV41を開いても圧力変化が100mmHgに達さなかったことが原因だと示唆される。

【結語】

CF漏れテスト不合格アラームが発生した際に、機械内部の電磁弁やポンプ、配管等に異常がない場合は廃液配管の閉塞を確認する必要性を再認識した。

O-2

ビタミンE固定化ヘモダイアフィルタの検討

医療法人社団兼愛会 前田医院

○鶴田  耕一郎


【はじめに】

透析患者の多くがMIA症候群を呈しているが、その一因として酸化ストレスも影響している。透析膜の素材・表面構造、含有親水化剤等により、炎症性サトカインが誘導され強い酸化ストレスをもたらすことも考えられる。広く使用されているポリスルフォン膜も親水化剤を含み、酸化ストレスを惹起させる可能性がある。

 【目的】

当院の6時間前希釈オンラインHDF透析患者を対象に、ビタミンE固定化血液透析濾過器ヴィエラ(V-RA)の溶質除去能、抗炎症作用および抗酸化作用などを評価した。比較対象血液透析濾過器としてABH-PAを用いた。

 【方法】

6時間前希釈オンラインHDF透析患者6名において、ABH-22PA及びV-22RA使用時の溶質除去能、抗炎症作用および抗酸化作用を比較した。採血項目はUN、Cr、β2MG、 α1MG、WBC、血小板、MDA-LDL、PAO、8-OHdG、IL-6とし、治療開始時、4時間目、6時間目(治療終了時)にそれぞれ採血を行なった。

 【結果】

V-RAはABH-PAと比較して血小板凝集を有意に抑制した。4時間目と比較して、6時間目は酸化ストレスの増強を認めなかった。血清IL-6値は両膜ともに6時間目において有意に低下し、さらにABH-PAと比較してV-RAにおいて有意に低下していた。【まとめ】

V-RAによる6時間前希釈オンラインHDFは酸化ストレスを増強させず、生体適合性、抗炎症作用の面で有用である可能性が示唆された。

O-3

透析導入患者においてHITⅡ型と診断された一例

長崎みなとメディカルセンター 臨床工学部

○山田  佳穂


【はじめに】

ヘパリン起因性血小板減少症(以下HIT)は、ヘパリンにより血小板が活性化され血小板減少とともに血栓塞栓性疾患を併発する病態である。今回、透析導入患者においてHITⅡ型と診断された1例を経験したので報告する。

【症例】

90歳代女性、膜性腎症により末期腎不全にて透析導入となった患者

【経過】

入院8日目で透析導入。導入時より、抗凝固剤は未分画ヘパリン初回1000U、持続1000U/hrを使用。入院31日、第8回目の透析前採血で著明な血小板の減少、D-dimerの上昇を認め播種性血管内凝固症候群(DIC)を疑い、ヘパリンを増量した。その際にHIT抗体も同時に提出した。入院35日目HIT抗体陽性と判明し、HITⅡ型と診断された。入院36日、第10回目の透析では抗凝固剤をメシル酸ナファモスタット50mg/hrに変更したが、静脈圧上昇と回路内凝血により返血不可能であった。そこで抗凝固剤をアルガトロバンに変更し、開始時10mg、持続25mg/hrで透析を行ったが、止血困難と皮下出血を認めたため持続を15mg/hrに減量し、透析完了40分前に投与を終了した。以降は回路内凝血、血小板減少を認めず、安定した透析が可能であった。

【考察】

透析患者における抗凝固管理は回路内凝固および透析後出血の予防が重要である。本症例では半減期が5分から8分と短いナファモスタットを始めに使用したが、回路凝固により透析が続行不能となったためその後アルガトロバンを使用した。アルガトロバンは半減期が15分から30分と長く、今回止血困難と皮下出血を認めたことから減量し対処した。

また、血液透析導入期のHIT発症頻度は1%以上と高く、HIT発症高リスクに分類される。血液透析患者のHITは繰り返し起きる回路内凝血や、血小板数減少等から容易に疑いを持つことができる。透析中の主対応にあたる臨床工学技士や看護師がいち早く疑いを持ち、主治医に報告することで早期診断に貢献できると思われる。

【結語】

今回、血液透析導入患者においてHITⅡ型と診断された1例を経験した。血液透析ではヘパリンが第一選択として多く使用されているが、HITのように逆効果の病態があることを認識していなければ不適切な処置から患者に重大な影響を及ぼすこともある。そのため各抗凝固剤の特性を理解し、患者の状態に合わせた適切な処置が必要である。

O-4

当院におけるリクセル使用の現況について

‐長期的治療評価を考える‐

新里クリニック浦上 透析治療科

○川口  謙四郎


【はじめに】

透析アミロイドーシスは長期透析による合併症でありβ2ミクログロブリン(以下β2MG)の上昇がマーカーの1つとされている。Β2MGを除去する手段には、ハイパフォーマンス膜を用いた血液透析、種々HDF、HFなどがある。それ以外にβ2MG吸着カラム(以下リクセル®️)を用いた吸着療法がある。リクセルの使用には透析歴10年以上、手根管開放術の既往があることなどの保険適応条件が設けられている。条件達成の難しさから全ての患者に適応は無いものの、当院では2000年頃からリクセルを用いた治療を継続し、現在も14名の患者が治療中である。治療効果についてβ2MGの低下や関節痛をはじめとする疼痛の軽減、IL6・TNF-α等の炎症性サイトカインの減少等の短期的な研究はあるものの、十数年の長期的な効果を示した研究は少ない。そこで今回、当院で治療中の使用から最長で15年の患者14名において、β2MGに注目した治療効果の後ろ向き調査を実施した。

 【方法】

リクセル使用患者 14名

採血データ(β2MG値)を後ろ向きに評価した

 【結果】

短期使用症例・長期症例共に有意差のあるβ2MG値の減少はみられなかったものの、特に長期使用症例の患者3名については緩やかな低下傾向であった。

 【考察】

透析膜の進歩や、様々な外的要因により透析のみでも除去が可能になった点、水質管理の向上によりβ2MGの産生自体が低下したとも考えられるが、長期使用にて吸着除去され、緩やかな低下に繋がった可能性がある

O-5

当院での透析患者の急変時における臨床工学技士の対応について

地方独立行政法人佐世保市総合医療センター 医療技術部 臨床工学室

 ○田中  太一朗


        【はじめに】

当院は長崎県北地区医療圏における基幹施設であり、透析患者の治療を実施している血液浄化センター(通称:HD室)での受け入れ患者は「手術目的で入院となった周術期血液浄化」や「血液透析導入」を中心とした構成である。その背景から、循環動態が不安定な患者が多く、血液浄化実施時の急変リスクが高いことから、業務に従事するスタッフには急変時対応のスキルも求められる。当院、臨床工学室には急変時の対応としての緊急返血マニュアルなどは確立しているが、急変の程度やその発生時間帯によっては対応方法が異なる場面が存在した。今回、HD室での急変症例を振り返り、現行の急変時対応マニュアルに追記すべき課題がないかを検討したので報告する。

【方法】

対象期間を2019年1月~2023年12月までとし、HD室内で急変対応を行った症例のうち、全館放送でのEmergency-callを行った5症例を検討症例とした。また、HD室の緊急対応マニュアルに沿った内容で対応終了となった症例と、他部門の協力が必要であった症例について検討した。

【結果】

今回、検討した症例の5症例はすべて平日日勤帯の急変症例であり、夜間・休日の血液浄化療法中の症例はなかった。全5症例のうち緊急返血とCPR実施までの対応で病棟帰室となった症例は3例であった。他部門スタッフ協力要請にて対応した症例は、経口挿管から人工呼吸器装着後に搬送まで対応を行った症例は2例、緊急体外式膜型人工肺(ECMO)挿入までを行った症例は1例であった。また、他部門スタッフの協力要請では、当日のHD室勤務臨床工学技士(CE):2名を含め最大6名のCEが急変時対応に当たっていた。

【考察】

今回、急変時対応で最大6名のCEが対応に当たることにより、緊急ECMO導入までを実施することが出来たが、平日日勤帯であったことが早期対応に繋がった要因であると推測された。また、血液浄化部門CEの緊急対応マニュアルには記載されていない内容の対応が多々含まれており、CEのみならず、治療に携わるすべての職種で連携が取れるようなマニュアルを作成することが必要であると考えられた。

【結語】

今回、対象期間内で発生した全5症例の急変症例を振り返ることにより、現行の急変時対応マニュアルを改訂すべき事項が抽出された。本検討を元に、HD室内での情報共有を行い、より実践に即した対応ができるよう努めたい。