研修旅行の感想にプラスした課題のための参考資料
只見線と米坂線はどちらも豪雨災害で長期不通を経験しましたが、地域における役割や住民の意識にはいくつかの違いがあります。以下に整理します。
1. 地域における位置づけの違い
項目 只見線(福島〜新潟) 米坂線(山形〜新潟)
海山麓・飯豊連峰の自然はあるが、観光路線としての
全国的知名度は限定的
観光資源との ・会津の只見川沿い景観、秘境駅、紅葉
結びつき ・雪景色など全国的に有名。観光列車
・鉄道ファン需要が強い。
。
生活交通の重要度 代替道路が冬季に通行困難になる 並行道路(国道113号)がほぼ全区間で通年通行可
区間あり鉄道が「命綱」となる 並行道路(国道113号)がほぼ全区間で通年通行
地域もある。 災害時の代替性は限定的だが、通学輸送など一定
需要はある。
地域アイデンティティ「只見線=奥会津の象徴」として 日常利用や物流の歴史的役割はあるが
強い愛着が形成されており、復旧 沿線全体での統一したブランド形成は弱い。
復旧方式 運動が 観光振興と直結。
国・県・市町村が線路施設を保有し、 上下分離や第三セクター化が議論段階。
JRが運行する上下分離方式で2022年 運営形態は未定
全線復旧。
2. 沿線地域振興に関する意識の差
只見線沿線
「観光鉄道化」による経済波及効果のイメージが住民・自治体に共有されやすい。
復旧運動が「観光+地域存続」の両輪として進み、福島県全体の支援を得やすかった。
米坂線沿線
一部自治体では強い復旧要望があるが、沿線全体での目的共有が十分ではない。
「観光鉄道」としてのビジョンよりも「生活交通」としての必要性を訴える傾向が強く、観光振興と
連動性が弱い。
新潟側と山形側で、費用負担や運営形態に対する考え方に温度差がある。
3. 差を克服する方法
(1) 共通の将来ビジョンを設定
「米坂線を観光・防災・通学を兼ねる地域資産」と位置づけ、両県・全沿線自治体で同じ目標を文書化。
只見線の「観光+住民利用の両立」モデルを参考に、米坂線版の**「観光ルート化構想」**を策定。
(2) 観光ブランド化による魅力共有
飯豊連峰・鳥海山麓・最上川水系を結ぶテーマ観光列車やイベント列車を企画。
鉄道ファンや旅行会社との連携で全国にPR。
沿線駅での地元物産販売・地域体験プログラムを組み込み、「鉄道利用=地域消費」に直結させる。
(3) 広域防災ネットワークとしての価値訴求
国道113号の代替輸送路としての重要性を数値化(災害時シミュレーション)。
自衛隊・防災機関とも連携し、鉄道が災害時の物資輸送路になる実例を示す。
(4) 住民参画型の復旧・運営体制
上下分離方式や第三セクター化を検討する際、沿線住民が参加する「米坂線未来会議」を設置。
只見線の復旧基金のような地域クラウドファンディングを活用し、全国から支援を集める。
(5) 両県間の温度差解消
山形・新潟の両県庁レベルでの「米坂線広域連携協議会」を常設化。
観光キャンペーンや防災演習を共同で実施し、両県がメリットを共有できる形に。
検討の方向は
只見線が成功した背景には「観光・防災・生活」を一体化した価値共有と、それを実現する運営モデルの合意がありました。
米坂線も、沿線自治体間の目的共有と観光ブランド化、防災価値の明確化を進めれば、意識差を克服し復活の可能性を高められます。